MLB(メジャーリーグ)コラム「Gotta be Clutch」 -4ページ目

開花した次代の”ドクターK”

今シーズン野茂英雄がロイヤルズを戦力外になり、
トルネード投法が球界を圧巻した1つの時代が終わりを告げた。
しかしそれと同時にナリーグに新しい”竜巻”が誕生し、リーグを圧巻している。

その竜巻を起こす男の名はティム・リンスカム(ジャイアンツ)。
野茂のトルネード投法によく似たフォームのメジャー2年目の23歳だ。
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リンスカムは2006年ドラフト全米10位指名の超有望株。
2007年にマイナーで13試合投げただけで、その年の5月にメジャーデビュー。
そして今年からはジャイアンツのローテーションの一角を務めている。
日本のファンには昨年オフ、ヤンキース松井秀喜のトレード相手として
名前が挙がった選手として知られているかもしれない。
過去5年間で100打点を4度マークしている松井との交換相手として
ヤンキースが求めた人材なのだから、潜在能力は間違いないだろう。

リンスカムの体格は身長180センチ、体重77キロと、
メジャーリーガーとしてはかなり小柄な部類に入る。
その身長の低さと線の細さから、ケガなどを恐れた各球団が上位指名を回避、
結局ジャイアンツが全米10位(球団1位)で指名したが、
もし身長があと数センチ高ければ、全米1位指名だったかもしれないと言われている。
しかしその体をフルに使った躍動感のあるフォームが持ち味。
その面で言えば、「小さな大エース」ロイ・オズワルト(アストロズ)に似ている。

リンスカムの持ち球はツーシーム(ストレート)、カーブ、チェンジアップ。
上体を大きく捻る”トルネード”投法から繰り出されるツーシームは160キロに達し、威力抜群。
日本プロ野球で言う藤川球児(阪神)のような打者の手前で伸びるストレートだ。
そしてカーブは縦に大きく割れるタイプで、その球質は
チームメイトであり、2003年のサイヤング賞投手であるバリー・ジートの全盛期を思い浮かべさせる。
これに打者のタイミングをずらすチェンジアップを加え、リンスカムは三振の山を築く。
昨年も規定投球回数には達しなかったものの、
リーグ1位のジェイク・ピービー(パドレス)を超える奪三振率(9.67)を残した。
その若さと三振数から「ドクターK」のニックネームで呼ばれることもしばしばだ。

そんなリンスカムは今シーズン絶好調。現時点(13日)でリーグ2位の53奪三振に加え、
リーグ3位タイの5勝、同2位の防御率1.61を記録している。
まだメジャー2年目であり、チーム力もないため、勝利数や防御率は落ちてくるかもしれない。
しかし奪三振をコンスタントに奪う実力はあるだけに、
ケガなくローテーションを1年間守り続けることが出来れば、
ヨハン・サンタナ(メッツ)やジェイク・ピービーの名投手に加え、
他にも沢山候補がいるナリーグで奪三振王となり、その名を全米に轟かす可能性は十分にある。

野茂のトルネードが全米に衝撃を与えてから早13年、
勢いのある新しい”竜巻”が全米に上陸する日はもうそこまで来ている。