2024年秋の様子(その2):さえルカの快挙、スケート・オークビル | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

前記事からの続きです。

 

 

 

 

 

 

2024年JGPアンカラ大会ではブルーノ・マルコットコーチの教え子チームが金メダルと銅メダルに輝きました。

 

 

 

Skate Oakville フェイスブックより

 

 

 

これはどう考えても快挙です。

 

 

優勝したカナダのデロシェ&スラッシャー組は昨年度のJGPファイナルに出場していますが、残念ながらワールドジュニア選手権でカナダに与えられていた2つの枠に入れず、出場を逃しました。それだけに今季は巻き返しに闘志を燃やしています。

 

ジャズミンはペアに専念し始めたのが昨年。短期間、別のパートナーと組んでいた時期もありましたが、キーランと組み始めてすぐに意気投合して、メキメキ上達しました。

 

このペアを見る多くの人たちが「ものすごく綺麗にマッチしている」という感想を口にします。だからどう、というわけではないのですが、本当に間近で見ても、スクリーンを通しても、彼らは「良く合っている」

 

キーランはその前の2022-2023年シーズンまでクロエ・パネッタと組んでいて、カナダのジュニア・チャンピオンにもなった実績の持ち主。ワールドジュニアでも7位・8位と二年連続で入賞しています。男性の方が経験豊富、ということはきっとこの新しいチームにおいて功を奏したでしょう。

 

もっとも彼自身、2020年まで(つまり16歳あたりまで)はけっこう高レベルのリーグでホッケー選手として活躍していたので、ペアに専念したのはパンデミック以降だったんですよね。

 

数年前までオークビルのリンクで滑っている彼は、確かにホッケー選手の滑り方が残っていて、粗削り、という印象でしたが、今では何となく木原選手の動きをそこかしこに彷彿とさせるほどになっています。

 

ブルーノコーチがいつも言うのは、「キーランの、いかにも静かで落ち着いた雰囲気のおかげで、ジャズミンが安心して伸び伸びと滑れている」ということです。

 

実際、この二人を見ると、他のどのジュニアレベルのペアよりもしっとりとした大人の雰囲気を携えています。

 

今シーズンのフリーはレッド・ツェッペリンの「Since I've Been Loving You」というなかなか濃密な曲で、これを(照れずに)演じきれるのは彼らしかいないでしょう。

 

 

 

ISUウェブサイトより

 

 

今大会、初日を首位で折り返し、フリーで崩れることがないようにブルーノさんが彼らに掛けた言葉は何だったのか?

 

優勝インタビューでのキーランのコメントからヒントが得られると思います。

 

 

 

 

 

"We're just focusing on ourselves, not really worrying about the result.  Obviously it feels amazing to win, but we'd rather have a good skate and maybe not win. Luckily we did both here"

 

「結果にこだわるよりも、僕らは焦点を自分たちに当ててる。当然、勝てば気持ちは良いけど、良い滑りが出来たのかどうか、の方が勝ち負けよりも大事だと思う。まあラッキーにも今大会では両方(良い演技と勝利)できたけど」

 

これはブルーノコーチがりくりゅうに言っていることと似ていると思います。他のチームの動向に惑わされるのではなく、まず自分たちの練習でも本番でもやるべきことに集中する。

 

また、ジャズミン選手はウオーミングアップで苦戦していたけれど、本番ではしっかりとエレメンツをこなすことが出来ていた、という点をインタビュアーのテッド・バートンさんに褒められていましたが、彼女は6分間練習やウオーミングアップはただ身体を温めるためのものであって、本番に反映されるとは限らない、と割り切っていると。(ミスがあると)逆に本番の集中力を高めるのに役立つこともある、という勝負強さも見せていました。

 

「Trust your training = 積み上げてきた練習を信じること」もカギとなったと言っていますが、これもりくりゅう先輩たちのお手本によることなのかも知れません。「良い練習が積めた」とは重要な点として三浦選手も木原選手もよく言及することですが、練習で出来ていないことが本番で出来るわけはない。

 

逆にランスルーを嫌というほど重ねて、プログラムを身体に叩き込んだという自信があれば、それを信じて本番で出せる。

 

いやほんと、ジャズとキーラン、良くやりました!

 

 

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そして3位に入った「さえルカ」組。昨年春に結成され、二人ともペアに関してはゼロからのスタートでしたが、ようやくコツコツと積んできた練習が実を結んだ、という感じでした。

 

チェコでの前大会ですでに良い予兆はありましたよね?あのフリーの演技を見て感動を覚えた人はものすごく多かった。何とも言えない優雅さ、清水選手の気品ある佇まいと本田選手の力強くも優しい物腰が独特の雰囲気を醸し出していました。
 
あの演技がまぐれではなかったことが、今大会で証明された、という気がします。
 
二人はシングル選手としての実績があり、ペアに転向・専念するという決断は容易ではなかったと思います。キャリアを持続させる上での選択だったとしても、これまで培ってきたフィギュアスケートに関する技術や知識、感覚が必ずしも生かされないのはどれだけもどかしいでしょうか。
 
昨夏はオークビルでブルーノ・マルコット、ブライアン・シェールズたちコーチ陣にペアの基礎を学び、本当に地味なトレーニングを来る日も来る日も重ねていた二人を見ました。
 
初めて彼らに会った時のことをブライアンさんは「ルーカスはトリプル・アクセルを跳んだり、サエは3-3のコンビネーションを跳んでいて」、それだけにペアとしてどう育てたら良いのかに頭を悩ませたと言っていました。
 
 
(フィギュアスケートLIFE33号より)
 
 
なかなか試合の機会もなく、国際試合にやっと出られたのが今年の2月のバヴァリアン・オープンでした。ジュニアワールドのミニマムを見事に獲得して、自信を付けたのもこの頃です。
 
 
 
しかしここからまた日本に帰り、4月の「Bloom On Ice」などのショー出演はあったものの、自分たち以外のペアはゆなすみだけ、という状況は厳しかったに違いありません。
 
それだけに6月の末にオークビルに再び戻って来ることが出来たのは彼らにとって大きな励みだったでしょう。
 
毎日、多くのペアチームに囲まれて滑っていると、絶対的に上達は速くなる。同じジュニアの大会に出るジャズミン&キーランと一緒に練習をしていると、おのずと自分たちのやるべきことも見えてきます。
 
また、デス・スパイラルなどでアメリカのエリー・カム&ダニー・オシェイ組が技の伝授をするような場面も見られました。お互い相手を変えて、感覚を確認させてもらう、という貴重な経験はオークビルのようなレベルの高いチームがひしめき合っているリンクだからこそできることです。
 
そしてもちろん、毎日りくりゅう先輩たちの滑りを目の当たりにできるのも大きな特典です。オフの日には璃来選手が若手女子二人と一緒に遊んでくれたり、龍一選手が男子を連れてご飯に行ったり、と良い関係も築かれていました。
 
結成した当初からブルーノさんは「僕の(ペアチームを)見る目を信じてくれ」と言っていました。さえルカはきっと世界で戦えるチームになる、と彼は確信していたわけですが、選手にしてみればなかなか結果に結びつかない時期が長引くと不安になって来ます。
 
そんな中、コーチの教えに従い、リンクメイトと励まし合い、先輩チームのお手本を吸収し、いつか努力が報われる時が来ると信じてひたすら練習に励んださえルカでした。
 
表彰台に乗った本田選手の表情が本当に晴れ晴れしく、見ていて涙が出ましたよ。清水選手の微笑みも身体の中からこみ上げて来る喜びを映し出していましたね。
 
 
 
 
 
リンクメイトのジャズミンとキーランの優勝も伴って、最高の気分だったでしょう。本当におめでとう!
 
これからあとペア競技のあるJGP大会は一試合だけなので、ファイナルへの出場も見えてきました。これはものすごいことですよね。ま、でもとりあえずは静観しましょう。
 
 
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そうそう、さえルカたちの衣装について:
 
ショートの衣装はプログラム同様、昨年の持ち越しですが、フリーは新調する必要がありました。そこでお願いしたのは、ジャズミンたちの衣装を創っている Charlene Bailey さんという、トロントのデザイナーさんです。
 

 

 

 

まだ若い女性デザイナーさんですが、オークビルのリンクで滑っているペアチームの多くのコスチュームを手掛けています。

 

例えば昨シーズンではジャズミンたちの「アメリ」の衣装が記憶に残っています。(彼らは今年もこれを着ていますが)

 

 

 

 
 
今年のフリーの衣装はジャズミンのボディスーツがインパクトあり。全体的な色合いと、キーランの肩の辺りの金色の装飾が、りくりゅうの「ユルネバ」の衣装を彷彿とさせます。
 
 
 
 
 
というわけで、さえルカの振付師であるキャシー・リード先生からのデザインと色合いの指示を得て、シャーリーンさんに衣装をお願いしたのが7月でした。
 
わざわざオークビルのリンクまで出向いてくれて、早速採寸と聞き取りの作業が行われました。
 
 
とっても美人なシャーリーンさんですが、ひょうきんな一面も。
 
 
 
 
 
 
 
そして衣装のフィッティングが数回、8月に行われ
 
 
 
 
出来上がったのがとても素敵なローズ系の衣装でした。
 
 
 
 
 
ちなみに髪飾りもシャーリーンさんのお手製です。
 
 
 
 
まあ、このシャーリーンさんに関してはまた取り上げることもあるかと思いますので、お楽しみに。
 
 
 
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なんだかすっかり長くなってしまいましたが、最後にスケート・オークビルの最新情報について。
 
今週の月曜日に用事があってリンクに出向いたのですが、皆様ご心配されていた木原選手は元気に練習していました!
 
ロンバルディア杯が終わってトロントに戻る道中、乗り継ぎ時間がタイトだったため、空港内を爆走までしたとのことだったので、どうやら本当に打撲だけだったようです。
 
 
また、大会での副賞はフィレンツェに本店のあるサンタ・マリア・ノヴェッラ社のスキンケア製品だったと聞きました。
 
 
 

公式ホームページより

 

 

 
 
蝋で出来たタブレット形のホーム・フレグランスも添えられていて、えらくオシャレなギフトですよね。
 
さすがイタリア。
 
なお、イタリア在住のブログ仲間のNympheaさん情報によると、このお店の製品は日本でも人気だとか!機会があれば皆さんもぜひチェックしてみてください。
 
 
 
 
以上、2024年晩秋のオークビルの様子でしたが、q_taroさんから、とっても可愛いイラストが届いているので、載せておきましょう!
 
 
いつもありがとうございます!
 
(三浦選手も、木原選手も、直近で一番のお気に入りのイラストだそうです。)