昨日の朝、玄関をノックする音がして、開けるとEMS便の宅配でした。
中身は5冊の『フィギュアスケートLife VOL.33』。カナダのスケート大会でよく顔を合わせるダニエル・アールさんの躍動感あふれる坂本花織選手の写真が表紙です。
以前もお知らせしましたように、この号では三つの記事を担当させていただきました。
りくりゅうのコーチ、ブルーノ・マルコットさん、そして彼らのリハビリにおいて大きな役割を果たした理学療法士のパトリック・ラヴォワさん。またさえルカ(とゆなすみ)のコーチをブルーノさんと務めるブライアン・シェールズさん。
当然のことながら皆さん、記事に書かれていることよりも多くのことを話してくれたのですが、字数・ページ数の関係で全てを載せるることは出来ていません。
それでもブルーノさんの場合はけっこう内容の濃い記事になっていると思いますのでぜひ、読んでいただきたいと思います。
またブライアンコーチも今後、再登場する可能性大ですので、ご期待ください。
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パトリック・ラヴォワさんにお話を聞いたのは、ワールド直前のオークビルでの練習中でした。
前の週に突然、パトリックさんが「リクとリュウイチ達の練習を見学に行ってみたいんだけど、良いかな?」と遠慮気味に聞いて来たので、木原選手達に打診したところ即、快諾のお返事がきました。
大会が近づくと、当然のことながらたいていの選手は自分たちの集中が邪魔されたくない。シーズン最大のイベントである世界選手権の直前などはよりいっそう、練習現場がピリピリした空気に包まれます。
しかしリンクに現れたパトリックを見つけたりくりゅうの表情は本当に嬉しそうで、練習中もとても良い雰囲気でした。
パトリックはモントリオール出身ということで、ブルーノとフランス語(当然、ケベック訛りの)で歓談しながら、しばらくリンクのすぐそばのベンチで見学していました。
「こんなに間近でエリート・レベルの選手が滑っているのを観るのは初めて」
と、ちょっと興奮気味なパトリックさん。特にペアの技は目の前で繰り広げられるとものすごい迫力ですもんね。
バレエと通ずるところがあるけれど、スピードが断然違う、と言い、かなり長い間、二人の姿を目で追っていました。いつもはクリニックでの施術やトレーニングでしか見たことのない彼らが、このように風を切るように伸び伸びと滑っているのを見るのは新鮮であり、感慨深いことだったに違いありません。
それからリンク際を離れて客席でインタビューに応じてくれたのでした。
記事にも書いていますが、パトリックの話を聞いていて、彼自身が National Ballet of Canada の元・プリンシパルダンサーであったこと、そして木原選手と同じような深刻な怪我から復帰した経験を持っていたこと、などがこの度のリハビリ過程に大きな影響を及ぼしたことは明らかでした。
現役時代のパトリック・ラヴォワ氏
自分が心から愛し、生業ともしている活動が怪我のせいで出来なくなることがどれほど辛いのか、焦りや絶望の感情を自分で経験したことのない人にはなかなか分かってもらえない、と言っていました。
リンクの三浦選手と木原選手を指さして、「ここは彼らにとってsafe place (安心できる場所)でしょう?練習は生活に規則正しい枠組み、みたいなものを与えてくれる。怪我をすると身体的なことばかりではなく、その枠組みをも失ってしまうのでメンタル的に辛い」のだと説明してくれました。それはスポーツ選手にとっても、自分のようなバレエダンサーにとってもアイデンティティに関わる問題なのだ、と。
この点についてはブルーノコーチも似たようなことを言っていました。身体的な苦痛もさることながら、ルーティーンを奪われるのも打撃なので、気長にリハビリに専念するのは本当に難しいのです。
印象的だったのは、パトリックが氷上の二人を見て「They are SO good. They are so strong」と何度も感嘆していたことでした。日常的に国立バレエ団のダンサーたちを見慣れている彼からしても、三浦選手と木原選手の身体の動きは優れているのだという証拠に思えました。
練習後、二人との記念撮影も和やかに行われました。
詳しくは雑誌の方でどうぞ!
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