2024年ISU世界選手権(モントリオール大会):3月21日「ドラマチックを通り越している」 | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

笑顔いっぱいで終わった水曜日のペアSP記者会見についてはすでに書いたとおりですが、21日の木曜日はまず男子のSPから始まって、夜の部がペアのFSでした。

 

ご存知の通り、三浦&木原ペアは最終滑走。直前に首位のステラートデュデク&デシャン組が演技をします。

 

SPと違ってやはり長いフリーともなるとノーミスの演技は減りますよね。その分、やはりGPFで優勝したドイツのハーゼ&ヴォロディン組が上がって来て、同じドイツチームのホッケ&クンケル組も良いスコアを出しました。

 

逆にイタリアのコンティ&マチ―組がちょっと乱調気味で順位を落としてしまいましたね。ジョージアのメテルキナ&ベルラヴァ組もジュニアワールドに続いてフリーが大崩れ。これはどうしたことでしょうか。

 

さてさて、そんな感じで迎えた最後の2組。

 

ディアナさんとマックス君たちは自国、しかも地元での開催ワールドとあって、掛かっているプレッシャーはとてつもなかったでしょう。しかもシーズン序盤から優勝を目標に堂々と掲げていたわけですから、なんとしてでも勝ちたい。SPでのリードもありますしね。

 

最初のSBSコンビネーションで乱れはあったものの、その後は本当にしっかりと振り付けを守り、表現の面でも「これでもか」というほどのアピールをしていました。練習のたまもの、演技のコーチを雇って何カ月もの積み重ねをして練ったプログラムがこの大舞台で二人を支えました。

 

キスクラでスコアを待つ二人。ディアナ選手は自分のジャンプミスを悔いているのか、そして来たるべき結果を予測してなのか、もう涙目でした。「144...」というビッグスコアが表示されてコーチたちも選手たちも叫ぶ。ベルセンターの観客の大歓声で舞台裏までが揺れていました。

 

そんなエネルギー爆発の最中、滑走に備えるりくりゅうでした。

 

ようやく名前が呼ばれ、スタートポジションにつく。見慣れた「WOMAN」のポーズです。

 

この曲のを大会本番の現場で聴くのは実は初めてなのですが、最初の部分はほとんど声だけ、伴奏はミニマル。それだけに会場全体に不思議な雰囲気が漂います。

 

二人のブレードの音が響き、「シュッ」という氷が巻き起こるサウンドに続き、歓声が沸き起こる。ツイストが決まった瞬間です。

 

そこからはただただ、りくりゅうの世界が広がり、我々はそれを傍らから覗かせてもらう、ということになります。二人が自然と醸し出す絆、三浦選手の思いつめたような瞳を龍一選手が受け止め、優しく包み込む。

 

時には笑顔になり、時には陶酔したような表情になり、それを見ている私たちも胸がいっぱいになる。

 

次々とエレメンツが決まっていき、SBSのサルコウだけが三浦選手、ダブルになってしまいましたが、さんざん苦戦したスローループは見事に決まり、怒涛のフィニッシュへ。

 

この時の龍一選手の表情が鬼気迫るものであったのは後に写真で知りました。きっとすでにかなり苦しい状態だったのかも知れません。

 

 

 

 

 

終わると彼は笑顔、彼女はちょっと呆然とした表情でした。きっと自分のミスしたジャンプを悔やんでのことでしょう。それ以外は素晴らしい演技でした。

 

このオリンピックシーズンのプログラムに戻すとなった時、リスクもなかったわけではありません。北京でのあの演技を超えるものが出来るのか、同じ衣装であるだけにイメージを大事にするのであればそういった懸念もあったでしょう。

 

それがどうでしょう。怪我明けのシーズン、四大陸からの最後の6週間の練習では彼らを奮い立たせ、本番での土壇場で救ってくれました。

 

ブルーノコーチの判断の元、絶対的に信頼を寄せて突き進んだ彼らは間違っていなかった。

 

もちろん、自国の選手に勝ってほしいと思う人々は会場に多かったでしょうが、カップル競技に対する目が肥えているケベックのお客さんは自分たちが目の当たりにしたものへの称賛を惜しまなかった。大喝采の中、キスクラでスコアを待つことになります。

 

この時、私は何となくビッグスコアを予想していましたが、まさかパーソナルベストが出るとまでは思っていませんでした。

 

いや、どうですか。

 

半年前、木原選手は氷にさえ乗れていなかったのに。

 

大会前の6週間の練習がどれほど死に物狂いの追い込みであったのか。

 

少しの迷いもなく、お互いを信じ合って限界を探った結果、確固たる自信を得てこの日の本番に挑めた。

 

フリーで僅差で首位、そしてトータルでの順位が決まると、直後に開催される表彰式に備えてキスクラ脇に戻って来た二人でした。

 

ここでブルーノコーチと改めて言葉を交わし、ようやく自分の演技に納得をした三浦選手に笑顔が戻ります。しかしその間、椅子に座って待機していた木原選手に異変が起こっていたのです。

 

この会場はその後、アイスダンスの選手たちも言っていたように異様に乾燥しているようで、せき込んで息苦しくなる選手が多数いたことは確かです。

 

しばらくするとちょっと騒がしくなり、メディカルを呼ぶようにとの指令が出されました。

 

 

と、ここまで書いてすみません。スモールメダルの会場に行くことになっているのでいったん、アップしますね。

 

続きはまた後ほど。