ひとつ前の記事に本当にたくさんのコメントを頂きました。ありがとうございます。
個別にお返事を書く余裕がなく、その代わり、少しでも何かご参考になることが書けないかとしばらく模索しました。
私がこのブログを始めてすでに7年半が経ちますが、近年は夫に「良く知らない分野に関して知ったかぶりして物を書いたり、他人の意見を勝手に代弁するのは極力避けるように」と注意されています。なるべくその路線でこの記事も書こうと思っているので、あくまでも私の目線からの描写・考察であるとご理解ください。
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2019年オータムクラシック、9月14日、男子フリー終了後の様子。
最終滑走者であった羽生選手の演技が終わった後、舞台裏ではすでに表彰式の準備が始まっていました。メダルの授与に携わる少女たちやその指導に当たるベテランボランティアの女性、メダルが確定している選手たちとそのコーチやチームリーダーたちで通路はごった返しています。
メディア関連の業務を担当する私たちのチームは、テレビのインタビューとミックスゾーンでの取材の兼ね合いを考えなければなりません。この時点で私はすでに裏に引っ込んでいるので、羽生選手のスコアが伝わって来た時も「あ、首位よね、もちろん」としか認識していませんでした。
ここで一つ言っておきたいのはオータムクラシックでは、グランプリ大会と違って競技のライストを流すモニターはほとんど無く(リンク裏全体で一つだけだったと思います)、プロトコルの詳細を映し出すモニターに至っては皆無だった、ということです。私の場合、試合中の情報源は、スマホで公式ウェブサイトに載っているトータルスコアをチェックするくらいに留まっていました。選手やコーチたちもほぼ、同じ条件だったと思います。
そこに羽生選手がキスクラから戻って来て、速攻でテレビの取材に応じます。
最終グループに有力選手たちが固まっていたけれど、当然ながら羽生選手の演技を観終えるまでメディアは誰もミックスゾーンに現れません。なので表彰式が始まるまでのわずかな時間の間に羽生選手以外の選手をペン記者たちの元へと連れて行くことになります。
また、フォトグラファーさんたちは大会中ずっと例のショートサイドのみで写真を撮ることしか出来なかったので、せめて表彰式は、とジャッジが退出した後の正面の席に案内する作業もあります。ショートサイドに残る人、ジャッジ席へと移動する人、皆さんが望みのポジションに付いたことを確認して、また裏へと戻ります。
そして表彰式が始まります。これも選手三人がちゃんと集まっているのを確認して、ジャッジ席前とショートサイド前でメダリストたちがちゃんとフォトグラファーさんたちのために止まってくれるようお願いして、あとは式の担当者に任せます。
式自体は選手出入り口からちょこっと覗いて、また裏に戻ったので、私自身は話題となったキーガン選手と羽生選手の微笑ましいエピソードを観ることはありませんでした。なお、この間もミックスゾーンで取材を受ける選手たちがチラホラいたと思います。
ずいぶんと長い間、表彰式が続いた気がしましたが、それが終わり、選手たちが戻ってきます。着替えを済ませてもらい(これがけっこう長くかかりました)、今か今かと首を長くして待ち受けているフォトグラファーさんたちや、ペン記者さんたちの元へと羽生選手をミックスゾーン担当のボランティアが連れて行くよう、準備を整えます。
囲み取材中、アリーナを往来する一般の利用者(ホッケー少年とその保護者など)でいっそう、ミックスゾーンの周辺には大混雑が起こっていました。
そしてここから全く引っ切り無しにペン記者やテレビの「ユヅ取材攻勢」が続いて行きました。その取材の模様はすでに日本でも報道されていると思います。
そんなこんなで、とにかく私の中では
最終グループが滑り終わる頃の舞台裏は、
ただただ皆がバタバタと走り回って、
その内、騒ぎが静まり、いつの間にか選手もコーチも連盟関係者もボランティアも全員帰っていた、
という感じです。
一番遅くまで残っていたのはメディアの方々ですが、一刻も早く記事をまとめて送信したいと思っていらっしゃるところ、メディアセンターを閉めるから、と退室していただいたのが私にとっての最後の大会の印象です。
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以上が私の憶えている当日の様子です。おそらく会場やライストで試合を観戦していらした多くの皆様と、全く違った気持ちで大会を終えたのはそのせいかと思います。要するにずいぶんと後になってやっとジャッジングのことが議論されているのに気づいた、というのが正直なところです。
手伝っている全ての大会に言えることですが、このオータムでは特に、選手のプライバシーや安全を確保し、メディアの方々の仕事環境を整えることが私の担当分野なので、それらに関する問題の方が私の頭を悩ませます。
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羽生選手が2015年に初めて出場して、その頃はバリー市で行われていた小規模なオータムクラシックという大会が一気に注目されるようになりました。その後、ピエールフォン2度、オークビルで2度、開催されているのは大きな空港(それぞれモントリオールとトロント)の近くにあるという立地条件が整っているためだと聞きます。年々、海外からの出場選手のリストも豪華になり、今やオータムクラシックはチャレンジャー・シリーズの中でもハイライト的な大会となっている感があります。
今年は恒例のクリケットクラブでの夏の公開練習がなかったこともあり、よりいっそう、オータムクラシックに対する注目度が跳ね上がりました。ただ本来、CS大会は、少なくとも選手やコーチからすると「足慣らし」の位置づけであることも確かだと思います。ミックスゾーンで取材されている選手たちも口々に「シーズンのこの時点で、ジャッジたちから受けたフィードバックがすごく役に立つ。今シーズンのプログラムに対して誰がどんな評価をするのか、知ることがCS大会に出る意義」と言っているのを聞きました。
でも羽生選手の場合はそうとは捉えられない。彼の一挙手一投足が世界中で取り上げられ、分析される。たかがCS大会でもその結果はフィギュア界の地勢図を占うベースとなる。それが改めて証明された週末でした。