2019年カナディアン・ナショナルズ(セントジョン大会):アレインとナムのカムバック | 覚え書きあれこれ

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記憶力が低下する今日この頃、覚え書きみたいなものを綴っておかないと...

 

2019年度のカナディアン・ナショナルズが終了しました。

 

シングル女子・男子はかつてのチャンピオンが感動のカムバックを見せてくれて、ペアは波乱なし、アイスダンスは多少の不服あり、というのが私の感想です。

 

まずは女子フリー、初日のショートからは順位が大幅に入れ替わりました。

 

 

 

SPでは5位だったアレイン・シャートランが力強いフリーを演じて3年ぶりにチャンピオンのタイトルを奪還。ここ数年、低迷していただけに彼女の復活はとても喜ばしいです。ジャンプが安定すると持ち味であるスピードとパワーが際立つ選手です。2位にはオローラ・コトップがサプライズで上がってきました。二年前のカナダのジュニア・チャンピオン、国際試合ではまだジュニアとして参戦しています。順位が変わらなかったのはヴェロニック・マレだけで、怪我明けに表彰台に昇れて嬉しそうでした。

 

一方、SPで首位だったデールマン選手はフリーでミスが続出して一気に5位に転落。キスクラではバーケル・オーサー両コーチに慰められていましたが、ショックを隠せない様子が痛々しかった。昨年の女王であっても「容赦ないジャッジングだった」というのがMさんの分析です。しかしシーズン前半は色々な健康問題に悩まされて、それを乗り越えて出場した大会だったので、どうかあまり気落ちしませんように。そして二位から四位に落ちたオーストマン選手もキスクラでは涙を流していました。昨年の五輪出場後にこの結果はやはり辛いと思います。

 

テレビ中継ではケイトリン・オズモンド選手がインタビューを受け、自分も何度かアップダウンを経験して、キスクラで喜びの涙を流したり、悲しみの涙を流したことがある、と話していました。

 

 

ケイトリンちゃま、いつもはコンタクトしてるのかしら?

スッピンで眼鏡かけててもカワユイ。

 

 

ペアは昨日も書いた通り、本当にごく順当にムアー・タワーズ&マリナロ組が貫録の優勝。ここは全く危なげなく、チャンピオンの座を獲得しました。面白いネタとしては、クリステンが2011年には元パートナーだったモスコヴィッチさんと一度はカナダチャンピオンになっていたこと。このように異なるパートナーと組んで、チャンピオンになるのは非常に稀なケースだそうです。

 

 

 

 

さて、今日、三番目に行われたのがアイスダンスの競技。

 

私はすでに書いた通り、今年は断然パイパー・ギレス&ポール・ポワリエ組を応援しているので絶対に優勝してほしいと思っていたのですが、残念ながら僅差で銀メダルに甘んじました。フリーダンスでは首位でしたよ!

 

優勝はウィーヴァー&ポジェ組でしたが、正直、フリーダンスでは幾つかミスが見え、出たスコアは2,3点ほど私の予想したものよりも高かった気がします。まあこれも、私の欲目かも知れませんが。

 

なお一応、言っておきますが、私はケイトリンとアンドルーは大好きです(このブログをずっと読んでくださっている方はご存じだと思いますが)。でもとにかく今シーズンこそはパイパーたちの年、と思っていたのでちょっと不服、ということです。

 

 

 

 

三位に入ったボードリー・フルニエ&ソーレンセン組は今大会一の良いサプライズでした。このチーム、今までどうして視野になかったんだろう、と思わされるほど素晴らしい滑りをします。どこかのチームに似ているな、と思っていると、今日も一緒に観戦してくれていたYちゃんと

 

「分かった、アメリカのハベル&ドナヒューによく似てるよね!!」

 

と意見が一致。男女ともに背が高く、パワフルで安定感がある。まあ同じクラブで同じコーチについている、ということもあるかも知れませんが。

 

ボードリー・フルニエたちのFDはものすごく振り付けが凝っていて一見の価値があります。今シーズンのRDがタンゴであるところにもってきて、彼らはFDにフラメンコを選んで使っているところを見ると、ああいう情熱的な演目が得意なのかな、と思いました。ぜひ、どこかに動画が上がっていたらご覧になってみてください。

 

さあ、最後は男子フリーです。

 

テレビ中継は最終グループだけでしたが、ライストでは先の2グループもちゃんと見せてくれました。昨日のSPで失敗してがっくり来ていた昨年のジュニア・チャンピオン、マシュー・マーケル君が見事に挽回して、まずは第一グループ終了時に暫定トップに。すると同じくSPでミスを重ねた二コラ・ナドー君も調子を取り戻し、第二グループ終了時に首位という結果。

 

最終グループの6分間練習を待つ選手たちの様子がテレビの画面に映し出されるとこんな光景が:

 

 

 

 

このグループのカナダ男子は6人中、3人が長身で180センチほどあります:ナム君、ローマン、コンラッド。ジョゼフは170センチくらいかな?その隣でガックーンと一人だけ、小柄なゴゴレフ少年。

 

「でもキーガンも同じくらいかも」

 

と鋭い突っ込みを入れたのはFちゃん。

 

まあとにかくすごい戦いが繰り広げられるだろうとワクワクしながら三人で観戦したことでした。

 

ところで興味深いことに、最終グループでクリケット・クラブに所属しているか、かつて所属したことのある選手は6人中5人。キーガンだけが全く別の練習環境でずっとやって来ている、ということに気付きました。そんなこともあって、トレイシーさんの解説は選手たちの特色をよくよく、理解しているのが伝わってきます。

 

第一滑走のジョゼフ君がそれはそれは素晴らしい演技で、良い緊張感を創り上げます。4T-3Tのコンビネーション、その他にももう一本、4Tを単独で決めて、その他は色々とアンダーローテーションを取られたみたいですが、とにかく17才の若手らしく元気いっぱいで最後まで滑り切りました。最終順位は四位と立派でした。

 

次はローマン選手の登場です。トレイシーさんはさすが、アイスダンス出身というのも影響しているでしょうが、彼のスケーティングスキルに惚れ込んでいます。大柄な体格のおかげでものすごくパワフルなストロークができること、スピードを出してリンクを端から端まで使いこなせているところが非常に良い、ということのようです。ただ、いかんせん3アクセルが試合では決まらない。四回転は果敢に三本、入れて来ているのですが、一つ目の3Aがパンク、二本目は転倒。他にも幾つかジャンプの着氷が乱れてちょっとしんどい演技になり、最終順位は7位に落ちてしまいました。

 

クリケット若手二人目のコンラッド・オーゼル選手。ロミオとジュリエットの演目です。彼の持ち味はジャンプの高さとローテンションの速度。クリケットに移籍してからコレオも丁寧にこなすようになりましたが、今日はちょっと雑さが出たかな、という印象でした。クワッドはトウとサルコウを跳べるようですが、今日は冒頭のサルコウがパンクしてしまいました。スピンがもうちょっとスピード落ちないようになったらなあ、といつも思うのですが、まだこれから十分、伸びしろはあるということですよね。最終順位は5位と、これも健闘しました。

 

で、残ったのがナム君、キーガン、そしてゴゴレフ少年。

 

まずはナム登場ですが、今シーズン、スケート・カナダでこのプログラムを演じた時もとても良い滑りをして、観客から大きな拍手を受けていたのですよね。あの大会では意外にスコアが伸びずにキスクラでは微妙な雰囲気が流れましたが、調子が上向きになってきていることだけは確かに感じられました。

 

そして今日のフリー、最初から最後まで落ち着いて全てのエレメンツをこなし、そして昨日のSPと同様、彼の持ち味であるパフォーマンスの力が発揮された滑りでした。会場もどんどん盛り上がり、あ、これはスタンディング・オベーションになるな、というのがこちらにも分かりました。

 

ようやく思い通りのスコアが出て、暫定一位に。

 

 

それを見ていたキーガン選手は、大興奮して手を叩き、ナム君を笑顔で迎えていました。本当にスポーツマンシップのある選手です。

 

しかしちょっとアドレナリンが噴出しすぎたか、肝心の演技が最初から安定せず、ミスが続きます。長年、アンダードッグとしてトップ選手を追いかけていた彼が、追われる側に回るのはやはりプレッシャーだったのかも知れません。スコアが出て、暫定二位に。この時点でナム君は最低でも銀メダルが確定します。

 

 

とうとう、最終滑走でゴゴレフ選手登場。スタートポジションに向かう彼は緊張している、というよりもものすごい闘争心と集中力に満ちた表情でした。しかしやはり彼も重圧があったのでしょう。冒頭の4ルッツ(挑むのもすごいけど)がダブルになってしまいます。

 

ただそこからは後にプロトコルを見てもマイナスのGOEが付いたのは一つだけで、後は全て、しっかりとエレメンツをこなして行っていました。まだ14歳になったばかりですよ。最終滑走ですよ。すごいわ、ゴゴレフ君。

 

「シャーロック」のサウンドトラックを使ったプログラムは最後、どんどんテンポが速くなって行って、しんどそうでしたが、トレイシーさんも言っていた様に観客が一生懸命、後押しをしているような感じでした。終わった途端、頭をサッと抱えて髪をかき上げ、悔しそうなゴゴレフ選手。それから何かをつぶやいて、考えに耽っているような素振りを見せます。「Brilliant performance, (but) he wants that first jump back... (He's) thinking through it...(=素晴らしい演技でした。でも最初のジャンプがやり直せたら、って思っているでしょうね。今の自分の演技を振り返っています。)」と解説するのは彼の練習を毎日見ているトレイシー母さん。昨日のSPの後もそうでしたが、演技が終わるや否や、速攻で脳が分析モードに入ってしまう様です。末恐ろしい。

 

そんなわけで最終結果は:

 

 

 

 

いやー、ナム君、良かったわ。アレインの優勝に関しても同じようなことを感じましたが、二人とも若くしてナショナル・チャンピオンのタイトルを獲得して、その後、何度も奈落に突き落とされています。特に昨年は五輪代表の切符を獲り損ねている点も共通しています。

 

もうスケートをしていても面白くない、止めた方が良いかも、と思ったこともあったでしょう。

 

でも奇しくも今年からナムとアレインは大学生になり、バイトをしたり、自立することがスケートへの情熱を取り戻すきっかけになったようです。

 

挫折を味わっても諦めず、這い上がって来た二人が見事に表彰台のトップに立てたことは本当に見ている側にとっても気持ちの良い結果でした。

 

最後におまけで、今日のテレビ観戦で画面から撮っておきたいと思ったものを幾つかご紹介して、カナディアン・ナショナルズのレポートを終えたいと思います。

 

 

キスクラでユニコーンの被り物を披露するローマン:

 

 

 

 

未だに眼光の鋭さが衰えないストイコさん:

 

 

 

テレビ放送でお付き合いが公表されたケヴィン・レイノルズ君とアレイン・シャートラン選手:

 

 

 

 

優勝が決まり、かつての恩師であったブライアン・オーサーと談笑するナム君:

 

 

 

 

そしてキーガンから祝福を受けるナム君:

 

 

 

 

以上でした。

 

 

あ、そうそう、セントジョンはものすごい吹雪に見舞われていて、明日、日曜日のフライトが多数、欠航になっているようです。オーサーさん、そろそろヨーロッパ選手権に向かわないといけないんじゃなかったっけ?