さきほど、CBCのフェイスブックに掲載されたクオンさん司会のポッドキャストを見てきました。
お馴染みのトリオ、クオンさん、カートブラウニングとキャロル・レーンでヘルシンキの金曜・土曜の演技振り返りの回でした。
https://www.facebook.com/CBCOlympics/videos/1962798463840613/
冒頭、キャロルさんがCBCのスタジオからポッドキャスト収録の場まで来るのに時間がかかり、カートさんとクオンさんだけで男子について言ったのが、この記事のタイトルにもなっている言葉です。
"YUZURU HANYU: He's in it to win it"
これはピッタリはまる訳がなかなか見つからないのですが、ただ楽しむためとか、自分へのご褒美、とかでスケートをやっているのではなく、「勝ちに来ている」というニュアンスを強調したいのだと思います。
前回、ご紹介したポッドキャストでもカートさんは言ってたように、ユヅルと話をする機会があって、現役で競技を続けるのはクワッド・アクセルを成功させるためと言ってくれた、と。4Aはとても手に入れにくい( "elusive") 文字通り危険な( "literally dangerous")な技で、負傷にくれぐれも気を付けてほしいけれど、それを聞いた僕はまるでクリスマス時の子供みたいに("I was like a kid at Christmas!")ワクワクした、と語っていました。
そこにキャロルさん、到着。彼女の印象に残ったシーンは、練習の映像で羽生選手が4T-3Aをしているところだったそうです。なんとかやってる、というのではなく、完璧に、質の高いジャンプであったことに驚愕した、と彼女が言うと、カートさんの羽生選手のアクセルに関する解説が相変わらず鋭い:
"His ability to put his body weight in the RIGHT place, so he can throw it (= his body weight), he can throw his arm, he can throw his body and he doesn't throw himself off. Because he leaves the ice and THEN he pulls himself in. So he doesn't slur the two together. So it keeps him straight."
彼のすごいところは自分の体重を完璧に正しい場所にかけることが出来る能力。だからこそ、その体の重みを、腕を、体自体を空中に投げ出すことができて、全く軸がぶれることがない。彼は氷を離れて、それから初めて、ぐっと(腕などを)引き寄せて締めるから。決してその二つをあいまいにしてしまわない。それで真っ直ぐなままに保てるわけ。
その後、平昌オリンピックでの思い出話として、関係者が五人集まっていた時の話題になり、「四回転アクセルを成功されられるスケーターがいるとしたらハニュウだよね」と、5人中4人が言った、とカートさん。でも
5人目はそこにいたウェイターに夢中になってたからノーカウント、と訳の分からんカート流のジョークを飛ばしていました。
さて、話は女子の部に移り、ザギトワ選手に関してカートさんがバック・クロスオーバーをもうちょっと改善させてほしい、と希望を述べる。アイスダンスの指導者、たとえばキャロルやトレイシー・ウィルソンなどにアドバイスをもらったらどうかな、と提案すると、当のキャロルさんは「そう難しくないことだ思われがちだけど("It sounds like it's not hard")」実はスケータにはそれぞれ「滑りの指紋(Skating Fingerprint)」みたいなものがある、というのが持論だと言います。一番最初に、氷の上に立って滑り出したその日から各自に備わっている「滑りの癖」、というのは
「洗練させることはできる、改善させることはできる、でも変えることはできないもの」だと彼女は思っているそうです。
クオンさんが「It's like your gait(歩き方みたいなものかしら)」と言うと、カートさんがまた茶々を入れて、「日本でこのポッドキャストを聞いてる皆さん、「ゲイト」っていうのは歩き方、のことですよ」と説明する。(GAITとGATEが同じ発音なので紛らわしい、という配慮かな?)
キャロルさんが女子で特に良かったと思ったのは坂本選手の演技だったということでした。最終グループで滑ることが出来なかったため、残念ながらPCSが伸びなかったけれど、スピードとパワーのある素晴らしい滑りであった、と。その後、PCSに関するディスカッションがちょっとありましたが、滑走順がPCSに影響を及ぼすべきではないけれど、実際は誰が何と言おうと、そうなっている、のをキャロルさんは問題にしていました。また、滑りはさておき、プログラム自体がさほど良くない場合、PCSにも反映されるべきかも知れない、という説にクオンさんも同意。
ペアの話になった時、ここでもキャロルさんが面白い事を言っていました。プログラム曲の選び方に関して、残念だと思うのはそれが「MUSICAL WALLPAPER」、つまり「壁紙」のように背景でしかない(しかもあまり面白くない、目立たない)ものになってしまっている時。「自分がその曲に感情移入できてないと、人にも訴えかけて感動してもらることは出来ない("If you're not invested in it, you can't sell it")」というコメントはとても説得力がありました。カートさんはそれを言い換えて、「自分が面白いと思ってないジョークで人を笑わせてみてごらん、すごく難しいから」と言ってました。
視聴者からの「男子やペアのフリーが30秒短縮されたことをどう思うか」という質問に対して、カートさんは観ている分にはあまり気が付かない、と答えていました。ただ選手はしんどそうだけど、と。振付師もその違いには影響を受けているだろうとクオンさんとキャロルさんは言ってます。プログラムの中でエレメンツのレイアウトを考える時、30秒の短縮によってどうしても今までとは違った所に設定しなければならない部分が出て来る。そのため、スケーターは本来、どのジャンプをどこで跳ぶ、ということを決めて癖になっているのだけれど、昨シーズンと比べて少なくとも一回は、本来自分が苦手と思う場所でエレメンツを演じなければならない羽目に遭う("you're going to have to do at least one thing in a place where you don't want to go")、という話は興味深ったです。
カートさんはそれに加えてトランジションを素早くできて、足さばきの良い選手はさほど影響を受けていないだろうとも言ってました。その例として挙げていたのがユヅ、彼は(短縮されても)問題ないに違いない、と。
以上、ざっとポッドキャストの概要でした。