いやー、来ましたね、公開練習。
いきなり、唐突に、ドラマチックに。
今週の水曜日、カナダ代表の強化合宿のメディアデーの日まではトロント近辺の天候がやたら蒸し暑く、「ここは日本か?」(いや、そこまでじゃないのは分かってますが)と思いたくなるほどの不快指数でした。
気温こそ29℃でしたが湿気を考慮すると「体感温度は36℃」とラジオの天気予報担当が深刻な声でアナウンス。
合宿会場は当然、リンクなので上着を持参、靴もスエードの編み上げのものを履いて、ユニクロのダウンベストまで用意してたんですが、一歩外に出ると「我慢大会」みたいな不釣り合いないで立ちでした。
ところがクリケット・クラブでの羽生選手の公開練習が行われた昨日は、うって変わって涼しい気温22℃、湿気もどっかに消え去って日陰は肌寒いほどの快適さ。
なんですか、羽生結弦選手は天気(しかも海外の)をも操れるようになったんですか。(クリケットで練習中のジョゼフ・ファン君が「キング・ユヅル」と崇めるのも当然)
そして聞くところによると、新プロの演目はそれぞれジョニー・ウィアー様inspiredの「秋に寄せて」のSPと、プルシェンコ皇帝inspiredの「ニジンスキーに捧ぐ」のFSだとか。フリーの方が「ORIGIN」と名付けられていることからも分かるように、初心・起源に戻るという今シーズンのコンセプトが伺えます。
「コンティニューズ」シリーズのアイスショーの頃から夏にかけて、着々と二人の大先輩に報告し、承諾を得てからのオマージュであるとは、なんとしっかりとケジメを付け、筋を通した物語でしょうか。
先だって、「結果を出した彼はヒーロー=英雄」と言いましたが、今日のタイトルは別の意味での使い方をしています。
そう、彼は「ヒーロー=主人公」でもあるのです。
時には自身でもコントロールしがたいほどの紆余曲折があり、翻弄されているかのような、スケーターとしての、人間としての羽生結弦物語ですが、何と魅力的な大河ドラマでしょうか。
さて、
自分のために滑る、これからのスケート人生、と彼は言い、その笑顔は何やら達観したような清々しさがあるけれど、
新しい採点システムの中で、年下の後輩たちの戦いぶりを見ておきたい、と彼は言い、穏やかな目元を見せているけれど
私はその内、彼の中のマグマの様なアスリート魂が
ズンズン、ズンズン、ズンズン、と頭をもたげ
いやいや、ここは抑えて、抑えて、としながらも、
いつの日か
「ぬおおおおおおお~~~っ」
と再び炸裂するのではないかと、いや、炸裂してくれるんじゃないかと、
期待しているところもあります。
もちろん、健康第一、怪我だけはしないように、ということが大前提ですが。
こうして物語はまた新しい章を迎えるのですね。
三週間後、どのような展開を見せてくれるのか、羽生コースターの乗車券を握り締めて待ちましょう。