六月のテーマが「レトロ」な私は、番組の見出しで「新SPはショパン」とだけ見て、
え?もしかして1983年にヒットしたGAZEBOの「雨音はショパンの調べ」?
こんな連想した自分が愚かしい。(しかもこの上の写真、何気にショパンの石膏像がダブらされているところがすんごい寒い)
ごめんね結弦君。
80年代のビッグヘア・肩パッド・厚化粧のイメージじゃなく、清楚な(本物の)ショパンのピアノ曲だったのね。
と、謝ったところでリクエストをいただいていた2012年スケートアメリカのSPの聞き取りです。
なお一箇所、どうしてもまたよく聞き取れないところがありました。分かる方、教えてください!
この時は解説にブレンダとカートさんしかいませんが、ブレンダが絶妙な間を心得ていて、演技に関するコメントは全くせず、カートさんに任せているところにもご注目。
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ユヅル・ハニュウ、我らがブライアン・オーサーと一緒にいます
Don’t forget Winnie the Pooh
He’s always there too
ウィニー・ザ・プーもお忘れなく
こちらもいつも一緒にいます
Hey that rhymed
あ、(Pooh とtooって)韻踏んでる
Yea it did
はいはい
(ブレンダ、軽くいなす)
In his second season of senior competition Yuzuru won his first Grand Prix event, won a medal at the Grand Prix Final, won a bronze medal at the World Championships, not too shabby for a 17 year-old
シニアレベルでの二シーズン目でユヅルは初のGP大会を制し、GPFではメダルを獲り、世界選手権では銅メダル。17才の子にしては悪くないわよね?
(注:結弦君、ケベックGPFでは4位でした。”Not too shabby” の直訳は「そんなにみすぼらしくない」ですが、当然ここは「大したもんよね」という意味が込められています)
He’s only in the second year of competition, but he is SO FUN TO WATCH. In practice or anything, he is completely unusual.
このレベルでの競技経験はまだ二年目、だけど彼は見てて本ッ当に楽しくなっちゃう奴なんだ。練習だろうが何だろうが、全くユニークだから。
初めて会った時、まだ14か15だったと思うんだけど、ぼくら、キャッチボールをちょっとやったんだ
Really?
へーそうなの
He’s got an arm!! His father was a baseball player
すごい強肩でさ!お父さんが野球の選手だったんだって
Really?
へーそうなの
Who knew that, huh?
びっくりでしょ?
(カートさん、何度このキャッチボールのエピソードを持ち出すんだろ。ブレンダもそう思ってるっぽい)
How did he get into figure skating? But he’s been flying across the ice in practice this week at Skate America,
(つぶやくように)それでどうやってフィギュアの選手になったんだろ。まあそれはさておき、今週、スケートアメリカの練習では氷上を飛ばして絶好調だったわね。
(演技が始まり、ドヤ顔になる結弦君)
Aaah YESSSS! Right into character, right away,
あー、良いねえ、すぐにキャラになり切ってる、のっけから。
I did an exhibition number, choreographed an exhibition number for him this year. He was SOOOO much fun to work with.
今年、彼のためにエキジビションのナンバーを振り付けたんだけど、一緒に仕事してて本当に楽しかった。
It really takes him just two cross-overs to take him to the other side of the rink.
マジで彼はたった二回、クロスオーバーをやっただけどリンクの向こう側まで行っちゃうの。
He’s small, thin, light, svelte, call him what you want, but he takes advantage of that thinness, and FLIES through the air.
小さい、細い、軽い、スラッとしてる、言い方は色々あるけど、とにかくその細さを利用して空中をまさに飛ぶって感じ
4Tは?
アラビアンからキャメルスピンを引き寄せて、超・柔軟なのを上手く生かしてスピンで点を稼ぐ
ここで二つスピンを続けさまにやっているのは新しいルールのせい:今年からSPでは後半のジャンプに10%の加点が付くから、今後は冒頭からジャンプ・ジャンプ・ジャンプ、って感じじゃないプログラムが(より多く)見られると思う
(ここからしばらく沈黙。ステップに入るまで静観)
ジェフリー・バトル、カナダ人のスケーターで元世界チャンピオンがこのプログラムを振り付けたんだけど、彼の持ち味はたった一つの音符をも無駄にしないっていうこと
今のかっこ良かったね。でも見てるだけでこっちの股関節痛くなったけど
We’re seeing something special here.
ぼくらが今見てるの、これ、どうもただ事じゃないね。
さあ男子スケート選手の皆さん、これは大変ですよ。ユヅル・ハニュウ、エリート男子スケート界の若手の「顔」、ここスケートアメリカですごい演技を見せてくれました。
たまに演技が終わってから、ここで点を取りこぼした、ここでも点を取りこぼした、って言うことがあるけど、この演技の場合は(その反対で)ここでも加点、ここでも加点っていう感じだった。技術的な達成度とパフォーマンスのレベルが一致して…
先日は飛行機に乗り遅れたっていうのにね
Yes that’s right. He arrived late, went from the plane to practice and basically did a clean run-through.
そうそう、遅れて来て、飛行機から降りてその足で練習にやって来て、通しで滑ってそれがミスなしだったっていう
(ここからはスロー再生を見ながらの解説)
4T―横への飛距離だけじゃなくて、高さもある。
Look at that upper body, no stress on the landing what-so-ever.
この上半身を見てよ、着地の時にまあーったく何の力みもない。
ブライアン・オーサーが教え子の分も力んでるからね。はい、跳んで、よしよし、嬉しそうだね。
Brian’s got another good one here, that’s for sure.
これは間違いなくブライアン、また一人優秀な弟子ができたわね
I hope this is the...
(ここが分かりませんでした!よろしく)
Watch this footwork, into the triple axel off of one foot, he doesn’t even put the other one down. And then choreography on the landing.
このフットワークを見て。片足でトリプルアクセルに入って、もう片方の足を着くことはない。おまけに着地も振りが付いてて。
これさ、トリプルはさておき、シングル・アクセルでも、皆、できるもんならやってみろって言いたいわ。とんでもなく難しい入り方だよ。これは天井知らずの加点が付いてもおかしくないでしょ。
Takahiko Kozuka has the lead, 85 points
タカヒコ・コヅカが85点で首位に立っています.
OH MY WORD!! 95.07, Kurt, that is a NEW WORLD SCORING RECORD for the short program.
まああ、どうしましょう!!95.07点。カート、これってショート・プログラムの世界新記録スコアよ。
He’s seventeen, what are you going to do?
彼、(まだ)17才だよ。これからどうすんの?
Hard to go up from that
この上を行くのは難しいわよね
もっと上手くなるの?
うわあああ…
ここでブレンダが順位の説明している間もまだカートさんが驚愕を隠せず、もう一度
WWWWOOWWW
うっわあああああ~。
と、しつこく言う。
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ツボその1:
冒頭にも書いたように、ブレンダが演技中は黙ってカートに任せているところ。しっかりと分業できてて気持ちが良い。
ツボその2:
「ヘ」ランジを見たカートさんが「こっちの股関節が痛くなった」と言ったこと。
ツボその3:
カートさんが演技が終わろうとしているところで、静かに言った:
We're seeing something special here
これは「ただ事じゃない」と訳しましたが、「ぼくら、今すごいものを見ちゃってるよね」というカートさんの気持ちが込められています。この予感は的中するわけですが。
ツボその4:
スコアが出て、世界新記録であると判明したあと、カートさんが「まだ17歳でこれやっちゃたら、この後、どうすんの?」と言い、そのあとすぐ「もしかして、これ以上、上手くなるとか?」と続けています。その合間にブレンダが「この上を行くのは難しいわよね」と言ってるわけですが、この時から二年も経たないうちにソチで結弦くんがこの同じプログラムをさらに進化させ、また世界記録を塗り替えるとは、さすがに予測できなかったでしょう。
こうしてみると、本当に感慨深いですね。