つまりパトリックにとってオリンピックの「魔物」の克服の仕方は
「それが存在しないかのように振る舞う」
ことのようです。
しかしこれもまた以前、ご紹介したことですが、ブライアン・オーサーは(スケートカナダの直前に)パトリックへのアドバイスを求められてこう言ってます:
Orser believes Chan should just embrace the pressure because if you pretend it's not there, the pressure will become overwhelming when the Olympics do roll around.
"Look at it, face it. Be inspired by it. Get jazzed about it," said Orser.
オーサーはチャンが逆にプレッシャーを歓迎するべきだと言う。(プレッシャーが)存在しないかのように振る舞っていたらオリンピックが始まったとたん、その真っただ中で圧倒されてしまうからだ。
「目をそらさず、真っ向から立ち向かうこと。そこからインスピレーションを得て、テンションを上げて行った方がいい」と、オーサーはアドバイスした。
なるほど。
オーサーはプレッシャーが敵だと言っているようですね。
パトリックは、自分が何を避けて「安全な場所に行く」と言ってるのかは明言していませんが、とにかくに自分の精神状態に悪いものであることは間違いないでしょう。
そして内村選手は「プレッシャー」と「魔物」は違うものだと考えているようですね。ロンドン五輪の最中、テレビ番組で何度もしつこく(確か明石家さんまだったと思いますが)「魔物ってプレッシャーのことやろ?」と聞かれて「違います」って言ってたのを憶えています。では何なのか、と言うと幾つかの雑誌記事を総合したところ、「欲を出したり」、とにかく自分らしさを失わせるもの、のようです。
まあいずれにしても、演技本番の日に至るまで、周囲からかけられた言葉、自分で自分にかけてしまう言葉、そして当日の会場内に渦巻くプラス・マイナス両方の巨大なエネルギー。
意識している物もしていない物も一気にとにかくのしかかって来るのではないかと想像します。
それを克服するには、逃避するのは間違っているかも知れませんが、なにも玉砕覚悟で力任せにぶち当たることばかりが能ではないと思います。
うまく自分の味方につけ、逆にそれを利用して、
こういう時、例えばフィギュアスケートにおいては「神演技」などという表現を使いますが、英語の
という言葉も言い得て妙だと思います。
会場中のエネルギーを一身に集め、それを我が物にして、さらに演技に乗せて爆発的に増大・再放出してしまう。(←これ、日本語か?)
私はそのようなワザは
「試合が「外科手術みたいに苦痛、あまり人の見てない所での方が良い演技ができたりする」と言うパトリックにではなく
「練習の時でも見られてないとイヤ」と言う結弦くんにこそ出来るはずだと思っています。
ずっと前から私は、結弦くんには妖精などではなく、
敵が誰であろうと、何であろうと、したたかに交渉して最後は巻き込んでしまう(「悪魔の美しさ」で絶世の美男俳優ジェラール・フィリップ扮する)ファウストのようになってほしい、と思ってました。