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これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『恋恋豆花』=れんれんどうふぁ(2020)

企画・監督・脚本 今関あきよし

 

モトーラ世理奈、大島葉子、利重剛、椎名鯛造、間宮葉月、芋生悠、洸美-hiromi-、シー・チーティエン、ビッキー・パン・ズーミン、山田知弘、友咲まどか、龍羽ワタナベ、落合真彩、桐生桜来、藤原希、梶健太、劉高志、他。

 

日常に漠然とした閉塞感を持つ大学生の森下奈央(モトーラ世理奈)の父親博一(利重剛)が3度目の結婚をすることになった。本来なら三人で出かけようとしていた旅行だが、博一の仕事の都合がどうしてもつかず、新しくママになる塚田綾(大島葉子)と二人で台湾旅行へ出ることになる。ママになると言っても、いきなりな話で、奈央は綾のことをよく知らないし、今さら新しいママもない、そんな気乗りのしない感じで二人の1週間の台湾旅行が始まる。

ぐいぐい来る積極的な綾に対して奈央は最初はそっけない態度だったが、美味しいスイーツやご飯を食べ観光名所を回るにつれうちとけていく。特に「豆花」というお気に入りのスイーツに出会ってからは距離が縮まった。また、バックパッカー中山清太郎(椎名鯛造)との出会いが奈央の心を開く。その他、台湾で活躍するアーティストたちとの出会い、博一の事故の連絡を受け綾が一時帰国し一人旅になったり、綾の実の娘と会うなどの刺激が奈央に変化を与える。

 

これ見て台湾行きたいなと思わせられたら成功ではないかな、と思うくらいには台湾の観光案内Vだった。

この手の作品はいくつか見たけど(『tourist』とか『恋する香港』とか、国内観光地ものなど)、話は重要ではなく、その土地と登場人物の感情をどう合わせていくかがキモなんだろうなと思う。そういう意味ではこの作品もそれなりにハマっていると思う。

面白いかと言ったら、興味のあるもの(例えば役者、名所など)が出てなければ、つまらない。

 

台詞が棒状なのは味だろうな。リアリティの追求かもしれない。

綾が実は元女優という設定で、役者たる信条を語るところは、大島葉子さん自身の言葉なのかなと興味深かった(未確認)。

また、奈央が台湾の俳優シー・チーティエンとフォトセッションするシーンがあるのだけど、「モデル・モトーラ世理奈」が出てて、気の毒だが相手が霞んでしまってた。

 

★★(★)

 

 

 

 

 

ああ、『恋する香港』配信もう一度して欲しい、Blu-rayにして欲しい。

 

 

『バレリーナ』(2023)

Netflix presents 映画

韓国映画

 

監督・脚本 イ・チュンヒョン

 

腕の立つ警護員のオクジュ(チョン・ジョンソ)が唯一心を許して仲良くなれたバレリーナの友達ミニ(パク・ユリム)が自殺した。オクジュに復讐を託して。

復讐相手は裏社会組織の一員で、薬物販売や女性を監禁した上での凌辱動画でシノギを稼ぐチョイ(キム・ジフン)。ミニは彼らに食い物にされたのだった。オクジュにしたらチョイの仲間たち、組織全体も同罪だ。

拉致されていた女子高生(シン・セフィ)の協力を得ながらオクジュの復讐が始まる…。

 

なんだかんだバイオレンスアクションでキレが良くて(たぶんこのスピード感は日本にはない)かっこいいしスカッとするし面白かった。組織のトップをあっという間に退場させてしまう容赦のない展開は韓国映画ならではではないかな。トップなんて日本映画なら重要人物なわけで、特にこの流れであればそう簡単に退場させず、むしろトップとの死闘になるのがデフォルト。でもタイミング的にはあそこで討ってこそだ。視聴者側の感情としては。

 

言葉がわからないので役者が上手いのか下手なのか判断も効かず、でも表情と訳詞に違和感がなかった。

 

タイトルはミニのことなわけだけど、これ、続編も作れる。次のタイトルも依頼人の職業にすればいいのだから。それに、今作で女子高生が仲間になり得る。シリーズ化してもいいんじゃないかな。ドラマでも良かったかも。

 

★★★★

 

 

 

 

劇場版『アンダードッグ』前後編(2020)

 

監督 武正晴(『百円の恋』『ホテルローヤル』、『全裸監督』他)

原作・脚本 足立紳(『百円の恋』『お盆の弟』『14の夜』『デメキン』『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』他)

 

森山未來、北村匠海、勝地涼、柄本明、高内久美、熊谷真実、水川あさみ、萩原みのり、風間杜夫、冨手麻妙(とみてあみ)、二ノ宮隆太郎、佐藤修、竹原慎二、山本博、友近、バッファロー吾郎A、好井まさお、じゅんいちダビッドソン、ツムラフェスティバル、ジャッキーちゃん、他。

 

あと少しのところで日本チャンピオンを逃したことがずっと心にくすぶっているプロボクサーの末永晃(森山未來)。夢を諦めきれず、だからといって真剣に取り組むこともできず、今は「咬ませ犬」と言われ、所属する簑島ジムのオーナーも手を焼いている。息子太郎(市川陽夏)を連れてそんな末永のもとを去った妻佳子(水川あさみ)には、離婚をつきつけられている。日がな一日酒と競艇に明け暮れ金をせびる父親作郎(柄本明)とゴミだらけの長屋に暮らし、サウナの清掃員とデリヘルの運転手で収入を得ている。

昔の末永に触発されプロボクサーを目指す大村龍太(北村匠海)。引っ越し業者で働き、休みには児童養護施設にボクシングを教えに行く。大村と同じ養護施設だった加奈(萩原みのり)と恋仲になり一緒に暮らし、お腹には新し命が宿っている。今でこそ充実した日々を送っているが、ボクシングに出会う前は荒れていて、無差別に他人に暴行を働いていた。

有名俳優の宮木幸三郎(風間杜夫)を父親に持ち、生活全般を援助してもらってる売れないお笑い芸人の宮木瞬(勝地涼)。金でつながる友人しかおらず、自身の才能に悩み崖っぷちに立たされている。

前編ではこの三人の男の再出発、新しい門出がボクシングの試合を通して描かれる。

 

幼い娘美紅(新津ちせ)を抱え、DV男と荒んだ生活を送る明美(瀧内久美)はデリヘルで働いている。一風変わった客田淵(上杉柊平)につくことになる。

田淵は昔、突然暴行を受け下半身不随となってしまった。そうさせた犯人を恨んで生きている。

末永の働くデリヘルのオーナー木田(二ノ宮隆太郎)は吃音症の上、少し頭が足りなく要領が悪い。そんなだから店の女の子の引き抜きにあい、ケツモチのヤクザにシノギを収めることが難しくなる。昔からいる年増の兼子(熊谷真実)はそんな木田を放っておけず、情で結ばれている。

後編は大村のその後(宮木の選んだ道についても)含め、末永の奮起につながる周りの人間模様が描かれる。ここがこの先の人生の分岐点といった末永と大村のボクシングの試合で締められる。

 

良かった。ただただ良かった。

ボクシングの試合場面は臨場感もある。

末永のダメっぷり、大村の大胆さ、宮木のジレンマ、どの登場人物にも空気のよどみが感じられ苦しい。それが人間なのだといわんばかりの展開には胸がズキズキする。

木田のキャラクターがただでさえ切ないのに、兼子の情愛が加わりより切なくなる。その関係性が一番人間臭かった。

 

★★★★★

 

 

 

 

 

『ベイビーわるきゅーれ』(2021)

監督・脚本・編集 坂本裕吾

 

髙石あかり、伊澤彩織、本宮泰風、秋谷百音、うえきやサトシ、伊能昌幸、三元雅芸(みもとまさのり)、水石亜飛夢、飛永翼、辻凪子、大水洋介、仁科貴、福島雪菜、他。

 

女子高生の殺し屋杉本ちさと(髙石あかり)深川まひろ(伊澤彩織)は卒業と同時に、組織の方針で働きながら共同生活をすることになる。

委託された仕事は完璧にこなす二人だが、まひろはコミュ障なうえ陰キャ、ちさとはどちらかと言えば陽キャだが我が強くズボラ、そして二人とも沸点が低く生活力、社会性がない。裏稼業の秘密性を保つためにも社会に順応する能力が必要とされての共同生活だった。

そんなわけで二人はバイトを始めることになる。ところがまひろはなかなか続かない。そんな時、ヤクザのトラブルに巻き込まれて…。

 

殺し屋の仕事と殺し屋の生活をたんたんと描いた作品。面白かった。

二人の日常会話はもちろん、組織の人間で二人の担当須佐野(飛永翼)や清掃係の田坂(水石亜飛夢)とのやりとりにも笑える。

また、ヤクザの浜岡親子(本宮泰風、うえきやサトシ、秋谷百音)もおかしい。

と、コメディ要素もあるが、ベースは容赦ないバイオレンスアクション。特にまひろとのアクションが見応えある。また、重要と思う人物をあっけなくご臨終させる、全体から見たその比率が変で、よりおかしさが増す(無情感)。

そして鶯谷に住んでるのがジワる。

 

あれ?と思ったら『ある用務員』で同じく女子高生殺し屋を演じた伊澤彩織と髙石あかりだった。名前は違うけど、その作品から生まれたようだ。「2」もあるとこのと。納得できる。

 

★★★★(★)

 

 

 

 

制作 シャイカー

配給 渋谷プロダクション

 

 

『運命じゃない人』(2005)

第14回PFFスカラシップ作品。

監督・脚本 内田けんじ(『アフタースクール』他)

 

中村靖日、霧島れいか、山中聡、山下規介、板谷由夏、眞島秀和、近松仁、杉内貴、北野恒安、法福法彦(ほうふくのりひこ)、他。

 

婚約者に浮気され別れを決意した桑田真紀(霧島れいか)と、交際中の彼女あゆみ(板谷由夏)との将来を考えマンションを購入したとたんフラれた真面目で優しすぎる冴えない宮田武(中村靖日)は、居合わせたレストランで、宮田の友人で探偵の神田勇介(中山聰)の手立てで食事を共にすることになる。なんだかんだ話をし、宮田は行く宛のない真紀をマンションに泊めるべく連れ帰ると、あゆみが荷物を取りに来たと訪ねてくる。

その数時間前に、フラれて落ち込んでた宮田のためにあゆみについて調査をしていた勇介のもとに、ヤクザの事務所から大金を持ち逃げしたあゆみが突然現れていた。

そのヤクザの組長浅井志信(山下規介)には組運営の危機に瀕していた。実はあゆみは浅井の女だった…。

宮田、真紀、あゆみ、勇介、浅井が微妙に絡み接触し、事が思わぬ方へ転がっていく。

 

コメディ。

 

どこまでも純粋な宮田。友人の宮田だけは信頼し友情第一に動く勇介。金が全ての詐欺師のあゆみ。一人で生きていくことに不安を抱えながらもそうするしかないと自分に言い聞かせる真紀。ヤクザ稼業の厳しい現状に何とか打開策を求める組長の浅田。それぞれの現状にそれなりの未来が見えてくる。

 

面白かった。時間にするとたった1日の出来事なのだが、たった1日でも人が思惑に沿って動くとこんなにも濃い1日が出来上がるのかと。まあ、めったにないことだろうけど。

 

ヒットだったのは、宮田と真紀の抱擁シーンが足元だけで表現されてたところ(浅井目線)。宮田が真紀の電話番号をゲットして浮かれてるところ。その流れで電話が繋がらないことに疑念を抱かない点、勇介は呆れているのに。勇介の「ひどいことをするんだよ、女は」という台詞。タクシーの運転手が真紀に宮田の良さを説くところ。偽金にオドオドする浅井。どこの地球に住んでるんだという二度使いされる台詞。

じらされたラストも、すんなり喜べるもので、とても良かった。

 

★★★★★

 

 

 

 

配給 クロックワークス

 

PFFサイト

 

 

『初恋、ざらり』(2023)

(土曜0時12分〜テレビ東京系列)0708〜全11話

原作はざくざくろの漫画。

 

脚本 坪田文(『美しい彼』シリーズ他)、矢島弘一池田千尋藤沢桜上野詩織紡麦しゃち

監督 池田千尋(『東南角部屋二階の女』他)、七字幸久倉橋龍介

 

小野花梨、風間俊介、若村麻由美、尾美としのり、熊谷真実、浜中文一、西山繭子、尾上紫、うらじぬの、西慶子、福澤重文、他。

 

軽度知的障害と自閉症を合わせ持つ上戸有紗(小野花梨)は水商売に就く母親冬美(若村麻由美)と二人暮らし。有紗もコンパニオンをやってお金を稼いではいるが、求められることで自分の存在価値を確かめるかのようにいつもヤリ目の男を断ることができずに流されてしまう。普通であることに憧れ、障害者であることを隠し経歴も詐称して運送会社「楽々運送」でバイトを始める。

職場の先輩パートの女性たち(西慶子、うらじぬの、尾上紫)はどんくさい有紗にイラつき、簡単なこともわからない有紗を怪しみ始める。主任の岡村龍二(風間俊介)と事務の天野久美(西山繭子)、所長の久保田(渡邊聡)が理解者となる。

岡村は35歳になるが独身で恋愛もご無沙汰。彼女はもちろん結婚なんて諦めていた矢先に、何事にも一生懸命な有紗と出会い、他とちょっと違うまっすぐな人間性と可愛らしさに惹かれ始める。チグハグな感情の行き違いがありながらも、やがて二人は一緒に暮らし始める仲になる。

そこで有紗は知的障害があることを打ち明ける。岡村は、25歳にしては幼ないが頑張り屋さんで素直でいい子、それ以上有紗のことを知らなかったことに気づく。それからは会社での行動が気になり始め、抜けてるんではなく思えばそれが障害のせいだったのかと多少の戸惑いを持つ。だからと言って有紗を好きな気持ちは変わらない。

岡村の父母(尾美としのり、熊谷真実)にも会い、普通になりたい、みんなと同じくできるようになりたいという思いが強くなる有紗。そんな時、配車係を担うことになる。しかし配車係は結局うまくできず、仕分けの仕事にもどる。その頃にはパートの女性たちにも障害は認知され理解を得られるようになっていたが、失敗から自信をなくし、岡村も忙しいことからすれ違いが多くなり心の負担が重くなった有紗は会社を辞め、実家に帰り、岡村との別れを決意する。

岡村は営業所を変わり、二人の生活は接点をなくす。けれど互いの想いは残っていて…。

 

「何がわからないのかわからない」という台詞があって、これこそ知的障害の本質をついてると思った。

「できないことが多すぎて苦しい。それでいいといってくれる優しさが苦しい」も響く。

「私にもきっとできる、普通の恋愛が」

「求められないと不安になる」

「障害者だと知ったらふられる」

「どうして私には障害があるんだろう。どうしてみんなにはないんだろう」

「必要とされたい私」「ここにいていいんだ」

健常者にとっては当たり前が知的障害者には当たり前じゃない、そんな思いを乗せた良い台詞がたくさんあった。

そして知的障害があっても岡村が有紗を好きなのが何より嬉しいお話だった。(現実的であるかないかは別として)

 

コンパニオン時代にもされるがままの有紗に胸が痛くなるし、同じ障害を持つ友達上村友子(高山璃子)の短絡的なモノの見方、理解の仕方に切なくなる。

冬美の男に襲われそうになるシーンはつらかったが、冬美がまだ良識ある母親であって良かった。この冬美が強い。冷たいように見えて、実は障害があっても自分で生きる力をつけさせている。

岡村の家庭のことも描かれるが、その前に岡村もちょっと足りないのかなと思う節があった。でも変わっていたのは岡村の兄龍之介(浜中文一)の方だった。そんな兄を持った弟という立場からの違和かとわかりやすかった。おそらくそれがナチュラルに有紗を想うことにつながっているんだと思う。まぁ、軽度という設定だし。

 

その他、こんなこともわからないのか、言葉にしないと通じないのかと思うシーンがいくつかあったが、それは私が「普通」であるからで、考えてみれば「お気持ちお察し」の方がおかしいのかもしれない。当たり前って危うい。

 

風間俊介が濃い演技じゃなくて良かった。このくらいの温度のキャラの方が合う。

小野花梨、今後も良い役に当たりますように。

 

★★★★(★)

 

 

 

 

『姪のメイ』(2023)テレビ東京系 0908〜全6話

脚本 小川康弘

監督 清水康彦(『CUBE』『その日、カレーライスができるまで』他)、大内田龍馬

 

本郷奏多、大沢一菜(おおさわかな)、田中美奈子、川田広樹、橋本淳、清水葉月、土井志央梨、竹原ピストル、真飛聖、須藤理彩、関智一、岩田奏、他。

 

都内の会社に勤める小津高一郎(本郷奏多)、独身32歳。姉夫婦(須藤理彩、関智一)が事故で亡くなり、12歳の姪メイ(大沢一菜)を夏休みの1ヶ月だけ預かることになる。しかし今のマンションに二人で住むには狭く、仕事はリモートで出来るし、同僚のツテで福島県の楢葉町の一軒家に仮移住することになる。

そこで農園の平田夫妻(田中美奈子、川田広樹)とその息子の高校生の純(岩田奏)赤井(竹原ピストル)、移住者の岩倉(橋本淳)上原容子(土井志央梨)山下真理子(清水葉月)坪野(真飛聖)ら、復興を目指す住民や夢を持って移住してきた人との交流、心の自由なメイとの暮らしが、冷ややかで合理的な人間小津に変化をもたらす。

 

ドラマ初出演だという大沢一菜だが、とても良かった。演技はどうなのかと考えてしまうが、朴訥な台詞まわしが作品のカラーや「メイ」というキャラクターに合っていた。アドリブかなと思うような会話も多くあって、そこでの本郷奏多が自然体で、それに大沢一菜がピッタリハマった感じだ。メイに振り回されつつの小津の変化も無理がない。

本郷奏多、良かった。特に、最終回、メイを家の前で住民らと並んで見送るシーン、その立ち姿が漫画やアニメ絵みたいで、まさに絵に描いたような雰囲気、完璧だった。

等身大というのが良かったのかな。福島県の震災跡も盛り込まれていて(実際の田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯館村がロケ地とのこと)、どこかドキュメンタリーみたいなとこもあり、コミカルなところもあり、人の感情の揺れもあるヒューマンドラマでもあり、面白かった。

 

★★★★(★)

 

 

 

 

『美しい彼 エターナル』(2023)

原作は凪良ゆうの小説。

 

監督 酒井麻衣(『美しい彼』シリーズ)

脚本 坪田文(『美しい彼』シリーズ)

 

萩原利久、八木勇征、高野洸、落合モトキ、仁村紗和、和田聰宏、金井勇太、池田大、前田拳太郎、綾乃彩、伊勢佳代、飯田基祐、他。

 

ドラマ『美しい彼2』の続き…というか、そもそもドラマ自体が映画版への序章。登場人物が

話を進める上でのキーになっているので、ドラマ版を見ている方がすんなり理解に及ぶ。

原作はどうなのか読んでないので何とも言えないが、とりあえず以下、ざっくりあらすじ&感想。

 

ドラマ版『美しい彼2』からの続きで、平良一成(萩原利久)は大学生活最後の年で、カメラマンの野口大海(和田聰宏)のアシスタントをしている。清居奏(八木勇征)は役者となり、事務所の先輩である安奈(仁村紗和)との作品の撮影が佳境。平良と清居は、平良の実家で同棲生活を送っている。

清居が役者として活躍していく傍らで、平良は何者にもなりえてない自分と、プロカメラマンの腕を目の当たりにして自信を失いかけていく。全てを自分の中で片付け一人で悩み、キングたる清居の位置づけを変えない平良に、ただ心の赴くままに愛を注ぎ感じたい清居はもどかしさを覚える。わずかにすれ違いが起こる中、安奈にアイドル桐谷恵介(前田拳太郎)とのスキャンダルが持ち上がり、転じて更なるゴシップ記事に反応した熱狂的な安奈ファン設楽克己(落合モトキ)が清居に対して犯罪行為に出る。それに対峙する平良…。

 

やはり平良が王様だった。清居は普通の人間。というか、劇中で平良が覚醒するんだけど、もちろんドラマ版でも清居に関する事ではタガが外れるシーンもあったが、その最上級表現があった。これはもうサイコパス。原作は知らないので、映画のみでしか言えないけど、やり過ぎ、ガッカリだった。なに、これサスペンス?と思った。愛情表現でもなんでもない、清居の言う「キモイ」のレベルを超えて怖いくらいだ。いったいここまでの表現必要だったのか? とはいえ、萩原利久の覚醒した眼力(しかもモノクロで)は素晴らしかった。作品が違えば最高だった。

 

でもまあ、作品の方向性はよく出ていて、魅せる映像もあったし、平良の心の声のナレーションが効いててよくまとまっていた。これは平良の物語だし。

その魅せる映像のひとつ、清居の美しいという設定もよく表現されていた。それはほぼラブシーンだけど、八木勇征の艶かしい演技は素晴らしい。風呂場のシーン、シーツをかけるシーン、ラストシーンなどきれいに撮られてる上に、二人の間に愛も見えて良かった(ラスト八木勇征のキス受けは完璧)。

その他、校舎を駆ける二人は愛らしいし、それに過去を被せるのも愛の深まりを感じさせて素敵な演出だったし、桜の花びらのリピート使い、オープニングの寝顔もリアリティがあって良かったし、その画はドラマからの流れだ。そしてそれがラスト映像につながり、二人の関係の持続と進展を補填できるものだった。そう、ラスト、きっちり未来も約束されてる関係と読める画で締めるという魅せ方はうなるほど良かった。

作品の世界観を揺るがさない細かい監督だなと思う。

 

そうそう、平良が清居を撮るシーンがあるのだけど、ファインダー越しのショットがイマイチだった。その中でのベストショット数枚も、ドラマ版で撮った清居を超えられてない。野村伊兵衛賞を取るにはまだ修行が足りないない、そういうことなんだろうな。やはり細かい…。

野口の人生が垣間見えたのも良かった。多くの人が通るであろう過程を経てプロカメラマンになってるのが、甘酸っぱくて少し切なくて良い。

そしてオマケのように出てきた元担任教師も良かったな。ドラマではそのナチュラルさがお気に入りだった。小山(高野洸)も。高野洸、歌って踊れて芝居もそこそこイケるってすごいな。歌が本職だよな確か?


エターナルは必要ないんじゃないか?と思ってたし、なぜドラマ1シーズン(と写真集)で終わりにしないのだろうと思ってたので、劇場には行かなかったけど、結局、ロングラン上映でヒットしたというのもわかる作品だった。

 

★★★★

 

 

 

 

 

 

 


 

 

スキャンダルについて良い台詞があって、「どんなに好きって言ってても一瞬で嫌いになれる」。これはファン心理に言えるものだと思った。

 

どこかにも書いたけど、本当に『美しい彼』にはハマって、何回も見た。その流れで八木勇征にも興味を持った。ポンコツキャラで(でも話はつまらなくて)ギャップが面白かったのだけど、作品前と作品後の売り方の違いにゲンナリしてまあまあ一瞬で興味を失ってしまった。腐売りが過ぎるように見えたのだ。本職が役者ではないのだから引きずるのも仕方ないのかもしれないが(おかげでファンも多くついたようだが)、私は、LGBTQを軽んじてる感じがして鼻についてしかたなかった。作品に罪はないが、これも劇場に行かなかった理由だった。

また違う作品で力を発揮してくるかもしれない。腐売りを払拭してくるかもしれない。それは期待していようと思う。

 

 

『静かなる叫び』(2009)

原題は『Polytechnique』

 

監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ

脚本 ジャック・ダヴィッツ、ドゥニ・ヴィルヌーヴ

 

1989年12月、カナダのモントリオール理工科大学で実際に起きた銃乱射事件をモチーフとした作品。

 

就活中のヴァレリー(カリーヌ・ヴァナッス)だが、やりたい仕事はあっても、女だからと面接ではどうしても結婚後の妊娠出産まで意識調査される。性別で理不尽な思いをすることと葛藤していた。そんな優秀なヴァレリーに、ノートを借りるジャン(セバスティアン・ユベルドー)は心が優しく少し引っ込み思案なところがあり、将来に行き詰まっていた。

誰もがその年代に持つであろう悩みや楽しみで日々学生生活を送っている最中、フェミニストを憎む一人の男子学生が構内にライフル銃を持ち込み、女生徒だけを次々に撃っていく。ヴァレリーも撃たれたが致命傷ではなかった。しかし親友のステファニー(エヴリーヌ・ブロシュ)はヴァレリーの横で息絶えた。ジャンは、てっきりヴァレリーは死んだと思って絶望する。それでも目にしたまだ息のある女生徒を助けようと手当てをする。犯人の男子学生は満足いくまで銃撃を果たした後、銃口を自分に当て自殺する。

事件後、ジャンもまた自死を選び、ヴァレリーはこの陰惨な過去を抱えながら仕事に生きる…。

 

モノクロ映画なのだけど、それを忘れるくらい色が見える。モノクロだからこそ登場人物の心情に集中できたのだと思う。カラーだったら情報量が多くて散漫になる気がする。例えば、「え、サスペンス?」「グロい…」とか、話と関係ないところに意識がいったり。

 

まだまだ理系は男の世界であることからのリケジョの立場の弱さ、世間一般の男女の優劣思想と実際との乖離、など、時代もあるだろう苦悩が見える。だからといって、銃乱射していいわけじゃないし、犯人は逆恨みもいいところ。ただ、どの国でも同じなんだな、説得力があるなと思ったということ。

良かった。

 

★★★★(★)

 

 

 

 

『月子』(2017)

監督・脚本 越川道夫(『トルソ』『海炭市叙景』『かぞくのくに』他)

 

三浦透子、井之脇海、奥野瑛太、信太昌之、鈴木晋介、杉山ひこひこ、大地泰仁、信川清順、吉岡陸雄、内田周作、磯部泰宏、岡田陽恵、川瀬陽太、他。

 

まともに仕事もしないアル中ぎみの父親(鈴木晋介)が自殺した。タイチ(井之脇海)の唯一の肉親だった。タイチも仕事は長続きせず、今勤めてる所もサボりがちで同僚(奥野瑛太)が迎えに来たその時、死んだ父親がそのままになっているのを発見される。タイチは殺人を疑われ、仕事も追われた。居心地の悪くなったタイチは住居を処分し、父親の遺骨を持って町を出ようと思い立つ。その際、一度、火葬場からの帰りに出会った、養護施設から逃げ出していた知的障害の月子(三浦透子)と遭遇する。初めて会った時は無理矢理施設に連れ戻されていた。

月子の首筋の傷から、虐待を受けてると知ったタイチは、施設に戻すことをやめ、一緒に、月子が会いたいと願う母親を探す旅に出る。それは月子の「海がある」という記憶と、途中で見つけた月子の名札にある住所だけが頼りの旅…。

 

ロードムービー。

 

一度目に月子と出会った時、タイチは橋の欄干に座り父親の骨壷を捨てようとしていた。そのまま自分も落ちようとしていたのか…は定かではないけど、その並びで月子は鳥を追って欄干に乗り出していた。タイチは遺骨を捨てられないまま、月子の行動を抑えた。自分を投影したのかもしれないし、単に良心かもしれないし、何か繋がりのようなものを感じたのかもしれない。

肉親が亡くなってもどうすることも出来ず放置して一緒にいるという話が昨今聞かれるが、タイチもそれで、社会との隔絶、教育の穴だろうな。2割の下層民だ。およそこうしてブログなど読み書きしてる層には縁のない存在。それが作品全編を通して感じられる。

 

また、障害者に対する一般的な認知と対応が胸に刺さるほどリアル。ということは身に覚えがあるわけだ。おおかたの人はそうだろう。

タイチのぞんざいに扱う姿は施設員とも月子の母親とも変わらない。都度、健常者の苛立ちがよく出てるし理解できるものだ。

 

月子の体には沢山の虐待の痕跡がある。休むために入ったラブホテルでは、月子はタイチの手を取り胸にあてる。そういう経験をしてきたということだ。体を求めない、宿泊費を出してくれる、月子は母親からもらった大切な指輪をタイチにあげる。対価交換というより、月子に初めて生まれた情だろう。

 

渋谷の雑踏を見た月子が言う台詞がいい。

「みんな迷子ですよ」

でもタイチは「みんな家に帰るんだよ」と言う。

二人の立場が描かれている。どうしたらいいか、どう生きたらいいか、とりあえず今は母親の所に行きたいけど自力では行けない、何もわからない月子と、帰る所が欲しいタイチ、月子にも帰る所を示したいタイチ、のように思った。

 

月子の母親は一度も面会に来てないことから、捨てられたというのが周りの認識。月子も母親は恋しいけど、一緒に暮らすことはもちろん会うことさえ叶わないかとぼんやり思っていたかもしれない。それでも辛い施設より母親のもとへ行きたいんだろう。けれど、なぜ母親が来れなかったのか、住所の地へ着いてわかる。月子も理解しただろう。(でも、真実はわからない)

最後海へ行く。遊んだ海だ。楽しそうに入っていく月子は初めて「タイチ」と呼ぶ。やっと心が通じ合ったのかと胸が熱くなった。

渋谷に戻ったふたりは手を繋いでる。でも、おそらくまた喧嘩をし、繋いだ手を離すだろう。そうしながらも二人に芽生えた情で繋がり、しばらくは共に歩んでいくのかもしれないし、月子は施設にまた戻ることになるのかもしれない。

とても良かった。

 

井之脇海の演技が素晴らしかった。三浦透子も。

 

★★★★★

 

 

 

 

配給 スローラーナー、フルモテルモ