リア王 東京芸術劇場プレイハウス | これ観た

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基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『リア王』東京芸術劇場プレイハウス(2024)

 

ウィリアム・シェイクスピア

翻訳 松岡和子

演出 ショーン・ホームズ

美術・衣装 ポール・ウィルス

 

リア:段田康則

エドガー:小池徹平

コーディリア:上白石萌歌

ゴネリル:江口のりこ

リーガン:田畑智子

エドマンド:玉置玲央

コーンウォール公爵:入野自由(いりのみゆ)

オズワルド:前原滉

オールバニー公爵:盛隆二

道化:平田敦子

ケント伯爵:髙橋克実

グロスター伯爵:浅野和之

貴族・使用人・兵士:秋元龍太朗中上サツキ王下貴司岩崎MARK雄大

 

 

この、キービジュアルの表情の魅力たるや…フライヤーの裏面も段田安則の顔が素敵だ。

 

 

 

ブリテン国王リア(段田安則)は退位するにあたり三人の娘に領地を分割し与えることにした。その際に、どれだけ父リアを想っているかを問い、大小持分を違えることにした。長女のゴリネル(江口のりこ)、次女のリーガン(田畑智子)は甘美な言葉を並べたが、末娘のコーディリア(上白石萌歌)は口下手の正直者なので世辞など言えず、リアの機嫌を損ねてしまう。結果、コーディリアは勘当、同時にコーディリアをかばった忠実な家臣ケント伯爵(高橋克実)をも追放してしまう。リアは愛溢れる言葉を信じ、ゴリネルとリーガンのもとを渡り歩くことになるのだが、結局どちらにも手ひどい扱いを受け追い出されてしまう。名を変え身分を隠したケントがリアをこっそり支え仕えるのだが、放たれた荒野でリアはどんどんひどい状態になっていく。

一方で、家臣でもあるグロスター伯爵(浅野和之)にも問題が起こる。愛人の子エドマンド(玉置玲央)が嫡男のエドガー(小池徹平)を陥れ、その地位を我がものにすべく画策、ゴリネルにもリーガンにも取り入るのだった。そんな中、グロスターはリーガンの夫コーンウォール公爵(入野自由)の怒りを買い、両目を潰され追い出されてしまう。その先で気の違った「哀れなトム」(小池徹平)と名乗る男に救われ、そのトムがエドガーだったと全てを知ることになる。

リアの窮地を知ったフランスへ嫁いだコーディリアは助けに行くのだが、逆に命を取られてしまう結果に。その惨状にリアはようやくコーディリアの深い愛に気づき、自分の間違いに気づくのだが、グロスター同様、時すでに遅し…。

 

 

21世紀のリア王ということだが、確かに舞台美術が変わっていた。プロジェクターや複合機、ウォーターサーバーが点となってあるオフィスのような広い空間に、簡易な椅子、王の座る椅子だけが背もたれが高くクッションの効いた社長椅子で在る。壁はスクリーンも兼ねるので白い…紙で出来ていて、床も白。この白は汚れや落下物、場面転換を示すホワイトボード的役割を果たしてた。

内容は「リア王」なのだけど、舞台ならではの危うい台詞がヒヤリとさせる(映像作品では注釈が必要だ)。そして長台詞の応酬。

ストレートプレイは台詞とその抑揚、あと動きに重点がいってると思ってる。表情は遠い席ではつかめないし、動きといっても大振りすりゃあいいってもんでもなく、この作品では台詞の後ろで体で表現をしていて、こうしたゆっくりとした過度にならない動きが心情表現として有効だなと思った。しかしながら台詞と声色の演技が一番重要。そんなことをありありと感じる作品だった。

 

気になったのが飛び交うハエ(虫)の羽音で、ことごとにまとわりつく。追い払ったり潰したりするのだが、これが何を表しているのか。邪心か良心か、その都度起こる心のざわめきなのか、よくわからなかった。

欲と愛と裏切り、死に際の改心、人間の全てが詰まった普遍的な話なので、どんな演出にしても見せたいものは変わらないのかもしれない。でも、何か他にテーマがあるんじゃないかと探してしまう。前衛的な演出と言ってしまえばそれまでだが、1回で把握できるものではなかった。まあ、集中力が要るし、疲れる作品だった。たぶん、3回観ればつかめる…。

 

段田安則はもちろん、浅野和之、上白石萌歌、田畑智子、小池徹平…素晴らしかった。段田安則のリア王は単純でありながらプライドが高く、結果人間らしい。浅野和之のグロスター伯爵は淡々としていながら忠義深く、上白石萌歌のコーディリアは声色からも心根が美しいのがわかる。田畑智子のリーガンは大胆でクセが強い。小池徹平のエドガーは優しく頼りなく感情移入しやすい。前原滉執事オズワルドは情けなくもズルく面白かった。とても前原滉らしい。平田敦子道化は自閉症の子供みたいだった(褒めてる)。他の役者さんも実力派なのでとてもいい。贅沢なキャスティングだと思うし、それだけに見応えもある。総じて良かった。

 

 

(観劇日20240322)

 

 

東京:東京芸術劇場プレイハウス 0308~0331

新潟:りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館劇場 0406~0407

愛知:刈谷市総合文化センターアイリス大ホール 0413~0414

大阪:SkyシアターMBS 0418~0421

福岡:キャナルシティ劇場 0425~0426

長野:まつもと市民芸術館主ホール 0502