不適切にもほどがある! | これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『不適切にもほどがある!』(2024)TBS 0126〜全10話

 

脚本 宮藤官九郎(『GO』『ピンポン』『TOO YOUNG TO DIE!』『土竜の唄』シリーズ、『木更津キャッツアイ』『IWGP』『タイガー&ドラゴン』『あまちゃん』『ゆとりですがなにか』『いだてん』『俺の家の話』他)

演出 金子文紀(『木更津キャッツアイ』『タイガー&ドラゴン』『逃げるは恥だが役に立つ』『G線上のあなたと私』『俺の家の話』『100万回言えばよかった』他)、坂上卓哉古林淳太郎渡部篤史井村太一

音楽 末廣健一郎MAYUKO宗形勇輝

振付 八反田リコ

ミュージカル作曲 MAYUKO

 

阿部サダヲ、仲里依紗、河合優実、吉田羊、磯村勇斗、坂元愛登(さかもとまなと)、山本耕史、古田新太、錦戸亮、八嶋智人、袴田吉彦、中島歩、三宅弘城、中田理智(なかたりち)、イワクラ、円井わん、ファーストサマーウィカ、山本博、板倉俊之、赤羽健壱、トリンドル玲奈、矢作兼、他。

 

1986年。高二の娘不良少女の純子(河合優実/幼少期:山田詩子)と二人暮らしのシングルファーザーで中学教師及び野球部顧問の通称「地獄の小川」小川市郎(阿部サダヲ)は、ある日乗った路線バスで2024年にタイムスリップしてしまう。

2024年で小川は社会常識、文化の差異に驚き感化され、EBSテレビに勤めていたシングルマザーの犬島渚(仲里依紗)と出会い、その関係でEBSのカウンセラーに就き、乗った路線バスがタイムマシンであったこと、行きつけだった「喫茶&BARすきゃんだる」のトイレから1986年に戻れることを知る。ただ、「すきゃんだる」のマスター(1986年:袴田吉彦/2024年:沼田爆)が異音がするからとトイレを改装してしまってからは戻れなくなってしまう。その代わり、2024年から1986年にやって来たフェミニストの社会学者向坂サカエ(吉田羊/1986年:前田織音)とその息子中学生のキヨシ(坂元愛登)から、路線バスのタイムマシンで往復出来ることを知らされる。というのも、キヨシの父親、サカエの元夫が、小川の教え子で野球部員でもある井上昌和(2024年:三宅弘城/1986年:中田理智/2054年:小野武彦)で、そのタイムマシン開発者だったのだ。

向坂親子は、純子に夢中かつ1986年が気に入ったキヨシのため、またサカエは社会学者の立場からも、小川家に居候し1986年をしばらく過ごす。

小川は2024年を体験するうち1986年の生きにくさ、サカエは1986年を体験するうち2024年の窮屈さを知る。

そんな未来で小川は、渚が実は純子とその後出会うディスコ「マハラジャ」の黒服から六本木の覇者となった犬嶋ゆずる(1986年:錦戸亮/2024年:古田新太)との子供であり、純子と小川自身は1995年の阪神淡路大震災で命を落とすことを知る。それもあって、純子を渚と過ごさせたくて、純子には未来を告げないまま、純子を2024年に送ったり渚を1986年に招いたりする。その過程で純子は勉学に目覚め、スケバンスタイルをやめ、青山学院大学を目指すことになる。

サカエはキヨシの通う中学(小川の中学)の担任安森(中島歩)との間に恋心が芽生えたり、キヨシは井上、同じクラスの不登校生徒佐高強(1986年:榎本司/2024年:成田昭次)、純子の憧れの先輩近藤真彦好きのムッチ先輩こと秋津睦美(1986年:磯村勇斗/2024年:彦摩呂)と交友を深める。そのムッチ先輩の息子アプリ開発会社に勤める秋津真彦(磯村勇斗)は2024年での小川の居候先であり、小川の計らいでやがて渚と交際することになる。

最後はタイムマシン稼働の資金が絶えるに伴い、小川は1986年に、サカエとキヨシは2024年に戻ることになる。そして、キヨシが2024年でゲーム好きが転じて成功をおさめた佐高と再会、井上に出資してくれることになる。それが「すきゃんだる」のトイレのタイムトンネルを作り出す…。

 

面白かった。特に3話目の八嶋智人(本人役)とEBSテレビプロデューサー栗田(山本耕史)のやりとりが最高だった。クドカンの作品はいつも最初は凪で数回目でドカンと来る。あとは強弱こそあれ、笑いと人情が絶えない。


山本耕史と磯村勇斗のせいか、「風と木の詩」が差し込まれていたのはウケたし、名作など作品のオマージュ、とにかく全編通して色々、伏線も振りも芸も細かく、回収がみごとでワクワクした。


純子と渚の母娘シーンは泣けるし、ここはクドカンとばかり小泉今日子(本人役)を出してくるし、まさかの成田昭次も出るなど、毎回のゲストも豪華だし(2024年純子とデートする美容師ナオキ岡田将生、渚の元夫フリージャーナリストの谷口柿澤勇人、女装子が発覚する中学校長赤堀雅秋、校長代行佐伯宍戸開、病んでしまうEBSの社内カウンセラー池谷中村靖日、脚本家エモケン池田成志、EBS不祥事アナウンサー倉持小関雄太本人役松村雄基など)、ふっくらしてる磯村勇斗の未来が彦摩呂なところ、錦戸亮が古田新太になるとか、最後は歯抜けの小野武彦とか、役者自身がエンターテイメントに徹してて、吉田羊も、こんな役もハマるのかとものすごく良かった。

 

そしてラストは2054年の話に続くわけで、「時代による言語表現や文化・風俗の変遷を描く本ドラマの特性に鑑み2024年の表現をあえて使用」の断り書きは締りがいい(それまでは1986年)。タイムパラドックスファンタジー。

 

毎回のテーマは今よく取り沙汰されてるような賛否あるもの。セクハラ、パワハラ、モラハラ、マタハラなどハラスメントについて、ノイジーマイノリティに配慮した放送業界の自制自粛、実体の見えないコンプライアンス、一度の失敗がその後の人生に影響する社会、釈然としない多様性について、カテゴライズ社会、SDGs、LGBT、厨二病的憧憬は性同一性障害の誤認(話題にもなってる「トランスジェンダーになりたい少女たち」にもつながる様相)、認知の歪み、隠蔽疑惑憶測の怖さ、SNSの弊害、やらやら、一般的に不適切に当たる事柄、それらが問題視されていなかった1986年との比較でどこで線引きするか問題提起している。クドカンは最終的には「寛容になろう」と言っている。これも締めとして落ち着く。

 

ところで、ミュージカルパートもあったのだが、回を重ねるほどにカラオケのようになっていったのはどうなんだ?笑

やはりミュージカルは状況や心情を明確に表現するのに良い手法。

 

★★★★★

 

 

1986年とのことだが、当時を知らんでもない私からすると多少のズレもあったように思う。ざっくり80年代の文化が混合されてた感じだ。懐かしくもあり、今にして思うと小川のように「あれはひどかったな…」と思うものも多々。


そうそう、エモケンの回、「昔話をしてるんじゃない、17歳の話をしてるだけ」という台詞は良かった。そうだ、他人にとっては若者にとっては昔話だけど本人、当事者にとったら昔話とくくれない。一方で「おやじになると未来に希望が持てなくて昔話をしがち」というのももの悲しくも摂理。