『街のあかり』(2006/日本公開2007)
アキ・カウリスマキ監督による「敗者三部作」の三作目。原題は『Laitakaupungin valot』、英題は『Lights in the Dusk』。
監督・脚本・製作 アキ・カウリスマキ
ウエスタンアラーム警備社で警備員の仕事をするコイスティネン(ヤンネ・フーティアイネン)はその仏頂面からか強面からか、はたまた性格の問題か、半ばいじめのように同僚に無視され続け、友達も出来ず孤独だった。唯一、キッチンカーのアイラ(マリア・ヘイスカネン)だけが夢のような野望を自慢げに語れる、口をきいてくれる相手。そんなコイスティネンに、ある日魅惑的な美女ミルヤ(マリア・ヤルヴェンヘルミ)が声をかけてくる。なんとなく男女の付き合いが始まる。しかしミルヤはマフィアのリンドストロン(イルッカ・コイヴラ)の仲間で、指示を受け接していたに過ぎなかった。リンドストロンは警備員であるコイスティネンを罠にかけ宝石泥棒を企てていたのだった。そしてついにその時が来たわけだが、ミルヤに惚れてるコイスティネンはバックにマフィアがついてるとはつゆも思わず、ミルヤをかばって逮捕され1年の懲役刑となる。出所すると元のアパートも仕事もない。紹介された簡易宿泊所に住みレストランの皿洗いに就く。そのレストランでミルヤとリンドストロンが一緒にいるところを見て、全てを理解したコイスティネンはリンドストロンに復讐をはかるが…。
やはりちょいちょいのアイテム使いがうまい。全て情につながり深みが増す。1週間も放置されてる犬とか、路上の有色人種の少年(ヨーナス・タポラ)とか、長いエスカレーターで地上へ向かうオープニングとか、著名な作家の絶望的な人生を比べる通行人とか、友達なんかいないコイスティネンの事業相談相手が有料のセミナーだったり、ミルヤとリンドストロンの関係がレベルアップしていく様とか、ディスコのバンドに割く尺とか、コイスティネンと同じような孤独を抱えた受刑者がいる刑務所だからこそのシンパシーから時と共に笑顔がこぼれるようになる、とか。
敗者……
最終的にはずっと見ていてくれた女性アイラがいたと知ったことで、敗者はようやく自分の人生の出発点に立ったということなのかな。
スーパーのレジ係にカティ・オウティネンがいた。
★★★★(★)