SHUT UP(ざっとネタバレ) | これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『SHUT UP』(2023)

テレビ東京20231204〜全8話

 

監督 児山隆(『猿楽町で会いましょう』)、進藤丈広

脚本 山西竜矢いとう菜のは的場友見

 

仁村紗和、莉子、片山友希、渡辺美穂、芋生悠、一ノ瀬颯、井上想良、野村康太、草川拓弥、他。

 

仁村紗和、片山友希、芋生悠、と好きな女優さんが三人も揃ってるとあっては見ないわけにはいかない。

 

貧しい環境で育った四人の女子大生、田島由希(仁村紗和)川田恵(莉子)工藤しおり(片山友希)浅井紗奈(渡邊美穂)は学業とバイトを両立させながら同じ女子寮で良好な友達関係を築きつつ暮らしている。

ある日、恵が所属するインカレサークルの憧れの先輩鈴木悠馬(一ノ瀬颯)の子を妊娠したと告白。恵は産めないというし、悠馬に話しても、別に本命の彼女露木彩(芋生悠)がおり、無碍にされる。あと数日で中絶費用が一段上がってしまうことから、それまでに20万の金を作る必要があった。由希、しおり、紗奈は恵に内緒で手っ取り早く稼げそうなパパ活に手を出す。お茶と食事までで、それ以上は進まないという約束のもとに。しかしどうしても10万足りないため、由希はそれ以上に進んでしまう。そうして費用は揃えられ、恵は堕胎することが出来たが、由希が体を売った相手田口(池田良)が盗撮をしており、ネットにさらされてしまう。結果、恵、しおり、紗奈だけでなく学内のみんなの知るところとなってしまった。

サイトへ動画削除依頼をしてもらちがあかない。弁護士を立てることを決め、その費用100万を調達しなければならなくなった。四人は悠馬への復讐として、悠馬から100万を盗むことを計画する。ちょうど恵と悠馬のいざこざ場面を見ていた綾とコンタクトが取れる機会に恵まれ、真実を話し、味方につける。作戦は成功し、100万を得るが、間もなく悠馬に気づかれ、綾は窮地に立たされ、由希たちは悠馬に警察か示談金を払うかどちらかを迫られる。その際に悠馬がハプニングで怪我を負い、警察沙汰になってしまう。

事情聴取で女性の警察官(西丸優子)が流れを読んで恵に性暴力について知ることをすすめる。言われるままに高梨塔子(野呂佳代)が主催する被害者たちの集いに参加することによって、恵の意識が変わっていく。一方で、優馬は父親(矢島健一)に告訴を取り下げさせられる。それが我慢ならず、怪我をさせられた時の現場動画を拡散し、四人はストーカーに仕立て上げられる。

すでに大切な友達となってる四人の疑惑を晴らすため、綾は悠馬とはサークルで一緒で幼馴染みの榎本伊月(野村康太)の協力のもと過去に悠馬の手にかかった女性たちの証言集めを提案。しかし証拠は集められず。ただ、バズってる今がチャンスと見込んで悠馬たちが最大規模のイベントを企画していることを知り、由希はそこへ乗り込み悠馬の全てを暴露しようと考えつく…。

 

貧困層の女子大生が富裕層の男子学生に好きなように扱わた、その復讐劇かと思ったら、それだけに終わらず奥が深かった。持つものと持たざるものの違い、保身は自我から切り離せないものであること、などが描かれていた。とてもいいドラマだった。仁村紗和に芋生悠だもんな、と改めて。

 

一番重要なのは現代における性暴力の認知だろう。一昔前の当たり前は通用しない。女の私でさえ、「かわいい」という言葉で傷つく被害者女性の感覚に驚いた。

被害者になる恵が「こらしめるのではなく、自分たちが何をしたかちゃんとわかって欲しい」と言うのも、怒りに任せず、悲観的でもなく、一回受け止めて出来るだけ自分の中で消化を試みる感じがして良かった。生きる強さを感じた。

ラスト、これまで見て見ぬふりをしてきた伊月が内省を込めながら、校内で白い目にさらされながらも何食わぬ顔でとりつくろう悠馬に「逃げちゃダメなことだよ」と友達だからこその言葉をかけるのも良かった。

悠馬にも父親との確執があり、抑圧に苦しんでいる。父親に認められたい一心が根底にあるのも丁寧な作りだと思った。

サークルの仲間山内たける(井上想良)は悠馬に恩義を感じているから悠馬を慕う。どんなことでも協力するし、それが悪だとも思ってない。自覚ない忠誠心、盲目って怖いと思った。

また、紗奈はこっそりパパ活を続けてたり、怪しいビジネス(美容グッズのマルチ商法)を人の良さそうな山際ひかり(岡本玲)にすすめられるまま始めてしまうなどあり、欲と金の怖さも描かれてる。

トラブルが続く中、由希と同じ講義を取ってる宇野陽太(草川卓也)の存在が、友達のラインを崩さず安易に恋愛に進んだりそうでなくても距離を縮めてしまいそうになるところ(本的に)、つかず離れずの微妙な位置を保ち続け、心地よかった。

全てのキャラクターにちゃんと背景が見て取れ、だから物語の流れに無理がないし説得力も増す。

 

わからなかったのは、「自由になりたい」と由希が繰り返す意味。何からの自由なのか。金か、階層か、大きく世間か人生か、はっきりわからなかった。

 

井上想良はもちろんだが、一ノ瀬颯も良かった。そして草川卓也、「みなと商事コインランドリー」と比べると(比べるものが違う気もするが記憶にあるのはこれだけだった)別人のように良かった(そもそも別キャラ^^;)。

 

★★★★

 

 

 

 

このドラマはオリジナル作品のようで、これだけのものが作れるなら、漫画や小説原作に頼るのはいい加減やめたらいいのに。視聴率なんて稼げない時代なんだし。私は脚本家の話が見たいし、監督の世界観が見たいし、演出家のセンスが見たい。