チルソクの夏 | これ観た

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基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『チルソクの夏』(2004)

監督・脚本 佐々部清(『東京難民』他)

 

水谷妃里、上野樹里、桂亜沙美、三村恭代、鈴木淳評、金沢碧、山本譲二、イルカ、高樹澪、田山涼成、夏木マリ、谷川真理、竹井みどり、岡本舞、他。

 

下関と釜山が姉妹都市となったことを記念して高校生による親善陸上競技大会が開かれていた。その1977年7月釜山で開かれた競技会で、走り高跳びの遠藤郁子(水谷妃里)は同じ競技の安大豪=アン・テイホウ(鈴木淳評)と出会う。

陸上部で仲良しの、800メートル走の杉山真理(上野樹里)、走り幅跳びの藤村巴(桂亜沙美)、槍投げの木川玲子(三村恭代)は、もちろん競技会が第一だが恋をしたい年頃、かっこいい男子はいないか物色に沸いていた。郁子はあまり興味を持っていなかったが、彼女らがあまりに安をイケメンだと騒ぐしなんとなく意識し始める。そんな時、高跳びについて安から的確なアドバイスをもらい記録更新につながることがあった。安は郁子に一目惚れしていた。その後、800メートル走でトラブルが起こり二人の気持ちは急接近し、安は積極的行動に出る。二人は文通をすることになった。この出会いの日は七夕だった。韓国語でチルソク。

文通で親交が深まり、郁子はもう安に恋をしていた。けれど母親(金沢碧)はともかく、流しをやってる父親(山本譲二)は朝鮮人なんかと文通するなと嫌な顔をする。近所の人らもいい顔はしない。安も外交官の父親はともかく、戦争で日本人に叔父を殺された母親は反対をし、郁子にはもう手紙を送ってくるなと釘を刺す。でも二人は次の1978年の大会で再会しようと約束していた。その約束を守るべく、部活は引退となり受験生である安だったが、特別枠で参加し、下関へやって来た。真理ら友達が逢瀬の時間を用意してくれ、互いの気持ちを確かめることができた。翌日の帰国の見送りに間に合わなかった郁子だったが、人を介して安からクリスマスに贈るはずだったブレスレットも受け取り、二人は確かに互いを想う気持ちに溢れていた。

でも、外交官を目指す安は受験もあるし兵役もあるから次は4年後に会おうと約束するも、その約束が果たされることはなく、文通も途絶えていった。また、社会情勢から競技大会もなくなってしまっていた。

あれから二十数年がたち、体育大学に進み教師となった郁子(高樹澪)は結婚もし離婚も経験した。そして2003年、郁子の尽力もあって10数年途絶えていた陸上競技大会の再開が果たされた。ハードル走のスターターを担当する郁子、ふと選手を見ると安にそっくりな青年がいた。そしてこの競技会の資金援助者には…。

 

まだ高校生で国と国の往来など自由にならない、織姫と彦星のように年に1回しか会えなかった二人の淡い初恋を描きつつ、高校生というこれからの人たちの考える日韓問題を静かにとらえた作品。

 

まさに季節外れだが「なごり雪」がキーポイント曲になっていて、だからか郁子らの担任教師がイルカだった。

 

日本においては韓国人ではなく朝鮮人というくくりで、半島の者としては戦時下の苦しみから、互いに憎み合っている両国。朝鮮半島は南北に分断されてもっと複雑な感情があるだろう。でもそれは親の世代までで、郁子らの世代には関係ない。実感もない。だから何がいけないのかもわからない。でも実はそれを説明、説得できるほど親の世代も何か言えるわけではない、そういうわだかまりが未だに続いているのがなんともはや。

 

真理の彼氏宇島役が福士誠治で、モテモテのイケメン設定(さわやかでぴったり)。それで初体験した真理が妊娠の可能性に悩むシーンがある。彼女らは中絶のためにカンパを募ることを考える。私の時代にもそんなような話を耳にしたことがある。女子は自分らで事を片付ける。これだけでも時代性を感じるが、もちろん陸上競技が好きだからやっているにしても、恋愛がしたくてたまらない年頃だというのを前面に押し出してるあたり、なんだか郷愁にかられた。高校生ってやっぱり恋の話題、かっこいい男子の話で盛り上がるんだよなぁと。それからクリスマスプレゼントに郁子は手編みのマフラーを贈る。手編みのマフラーなんて、これも時代性だろう。

 

郁子の家は貧乏で、長屋住まい。それで父親が流しという設定、あの年代にはまだ流しがいたのかと新鮮だった。ちょうどカラオケに取って代わる時代だったようだ。

 

★★★★



高樹澪には気づかなかった。