ミナリ | これ観た

これ観た

基本アマプラ、ネトフリから観た映画やドラマの感想。9割邦画。作品より役者寄り。なるべくネタバレ避。演者名は認識できる人のみ、制作側名は気になる時のみ記載。★は5段階評価。たまに書籍音楽役者舞台についても。

『ミナリ』(2020/日本公開2021)

原題は『MINARI』(韓国語で「セリ」のこと)

監督・脚本 リー・アイザック・チョン

 

1980年代アメリカ、アーカンソー州の片田舎。韓国系移民のジェイコブ・イ(スティーブン・ユアン)は、ソウルが嫌で出てきた妻のモニカ(ハン・イェリ)、娘アン(ノエル・ケイト・チョー)、心臓に疾患があり体の弱い息子デビッド(アラン・キム)を連れて広大な土地へ農作物で成功者になるべく移住する。家はおんぼろトレーラー。現地の風変りな男ポール(ウィル・パットン)を雇い、農地開拓から始める。作物は韓国野菜だ。

農場が軌道に乗るまではひよこの選別をする仕事とのダブルワークなため、子供の面倒を見る者がいない。モニカは母親スンジャ(ユン・ヨジュン)をソウルから呼び寄せ、任せることにした。スンジャはがさつで品がなく、言葉遣いも乱暴で、子供たちはあまり好ましく思ってない。それでも少しずつ歩み寄り、スンジャは子供たちと見つけた泉でミナリの栽培を始める。そうしてようやく慣れたかと思った時、スンジャが脳卒中を起こし麻痺が残る体となってしまう。

あてにしていた納品先が反故になり、水も足りない、と農場経営はなかなかうまくいかない、もともと農業をやりたかったわけではないモニカは都心での生活が諦めきれない、デビッドの体も心配だ、そしてスンジャがこの通り手がかかるようになってしまった。モニカはやはり都心へ戻ることを考え始める。

しかしジェイコブは諦めていない。デビッドの定期健診に向かった先で韓国食材を扱う店から契約をひとつ取ることに成功する。しかも病院ではデビッドの心臓の状態が改善されているお墨付きを得る。医者は言うには水が合ったのだろうと。自然豊かな環境と、スンジャののびのびとした育て方のおかげかもしれない、とモニカは考えを改めようと思うが、その日、一人留守を任せていたスンジャが少しでも役に立とうと思いたったことが裏目に出て、とんでもないことに…。

 

スンジャに対する子供たちの卑下する目がなかなかきつい。きついのだけどその気持ちがよくわかるキャラ設定。(もしかしたらスンジャの性質はデフォルトなのかもしれない)

ひよこを選別する職場でも同じ人種なのに自分たちは君らとは違うという意識が透けて見える。それは現地の米国人に対してもで、ポールなど、見るからに不遇そうな人物に対してはウエメセに出る。

そして現地人もやはり差別的な目でアジア人を見てる。

移民の肩身の狭さ、移住は簡単ではないということが知れるし(国内での地方移住トラブルも昨今聞く通り)、人種限らず人間の嫌な部分が出てるのがヒヤリとして良かった。それも言葉(台詞)に頼らず滲み出てるという演出なのが映像作品ならではで良かった。

 

タイトルの『ミナリ』だが、ミナリ(セリ)は地に根を張り、二度目の旬が一番おいしいことから、子供世代の幸せのために親世代が懸命に生きる、という意味が込められているらしい。

それでいうと、

ラストはこんなトラブルがあってこれからこの家族がどうするんだろうというところで終わっている。収穫した作物は全ておしゃかになり、約束した納品日に間に合うかどうかだ。でも、スンジャと子供たちが植えたミナリは今が旬とばかり生い茂っている。

順当に言ってミナリで繋ぎ、再び立ち上がり、成功への道を歩むのだろうな。

 

とても良かった。

 

★★★★(★)