『キネマの神様』(2021)
原作は原田マハの小説。
だが、原作とは設定等大きく違えているとのこと。
監督 山田洋次(『幸福の黄色いハンカチ』『男はつらいよ』シリーズ、他)
脚本 山田洋次、朝原雄三
菅田将暉、沢田研二、永野芽郁、寺島しのぶ、前田旺志郎、宮本信子、野田洋次郎、小林稔侍、リリー・フランキー、北川景子、志尊淳、広岡由里子、松尾貴史、片桐はいり、原田泰造、前田航基、今井翼、渋川清彦、近藤公園、迫田孝也、他。
かつて映画監督を目指していた78歳になる丸山郷直(ごうちょく)=ゴウ(沢田研二)はギャンブル好きの酒飲みで、借金で女房子供に苦労かけている世間一般に言われるクズの部類。だけどお調子者でどこか憎めない…もちろん一人娘でシングルマザーの歩(寺島しのぶ)はだいぶ金銭を融通してきたのでカリカリするし、まるめこまれる母親淑子(宮本信子)にも苛つく。でもそんなのおかまいなしに飲み代も賭け代もない郷直は、いつものように昔撮影所で一緒だった親友寺林新太郎=テラシン(小林稔侍)の映画館「テアトル銀幕」に逃げ込み、古い映画を見始める。ちょいと缶ビールをしっけいして…。
そこで、出水監督(リリー・フランキー)のもとでカチンコを鳴らしていたまだ夢いっぱいのゴウ(菅田将暉)、映写部にいた将来は映画館を作りたいと夢みていた実直なテラシン(野田洋次郎)、撮影所の近くで映画人がしょっちゅう集まる食堂の娘淑子(永野芽郁)、スター女優の桂園子(北川景子)らとの熱く楽しく充実した日々が思い出される。淑子と一緒になったいきさつ、ゴウの才能が認められた過程…しかし初監督作品「キネマの神様」は日の目を見ずに終わってしまったことなど…。
そうこうして今のこのていたらくであるのだが。
そんなある日、歩の息子勇太(前田旺志郎)がそのゴウの書いた脚本「キネマの神様」を読み、脚本家の登竜門「木戸賞」に応募しようと持ちかける。賞金は100万円だ。二人で現代風にアレンジした「キネマの神様」を仕上げ応募すると、みごと木戸賞を獲得する。みんなに祝われ有頂天のゴウだったが、病床に倒れ、また、コロナウィルス蔓延で「テアトル銀幕」の存続が危ぶまれる…。
口下手のクズだけど、淑子への感謝は計り知れず、テラシンという唯一無二の親友にも恵まれたという、愛と人情のお話でまとめられていた。
志村けんが郷直にキャスティングされていたようで。でも残念なことになり、沢田研二に代わったと。そのじいさんぶりは驚愕だった。志村けんをどうキャラづけしようと思っていたのかわからないけど、沢田研二のその見てくれはみごとだったが、違った気がしてならない。声が軽いしキャラクターに深みがなかった。もともと沢田研二は演技がうまくない。歌手だし。たぶん、志村けんでも同じだったんじゃないかな。普通に俳優を使えばよかったのに。淑子の母親役でさえ広岡由里子だもの、畑違いではバランスが悪い。
「テアトル銀幕」の従業員水川役志尊淳が目立たないながらも良かった。二番手以降がいい味出せる。また、常連客に片桐はいりがいて、映画館愛が実生活と同じじゃんと思った。こういう配役いいな。
劇中作はオマージュがいっぱい。出水監督は清水宏のようだし、桂園子に細かい指導を入れる監督は小津安二郎だろうし、桂園子も原節子だろう。「木戸賞」は「城戸賞」かな。ゴウが「東村山音頭」を歌うシーンもある。
★★★
配給 松竹