『SKIN』(2020/米公開2019)
実在の白人至上主義集団(「ヴィンランダーズ」)の創設者の一人でもある元人種差別主義者ブライオン・ワイドナーの半生を描いた映画とのこと。
監督・脚本 ガイ・ナティーブ
ブライオン(ジェイミー・ベル)はスキンヘッドと無数のタトゥーが特徴の白人至上主義組織の幹部。組織の頂点にはパパ(ビル・キャンプ)とママ(ヴェラ・ファーミガ)と呼ばれる絶対的存在がいる。理不尽であっても誰も逆らえない。活動は有色人種の排除で、手段は選ばない。組織構成員は家庭に恵まれない貧困層から食事と寝床を餌に拾ってくるのがほとんど。組織に入ったら洗脳と暴力で組織に縛りつける。こうしてずっとレイシストの中で育ってきたブライオンはある日、飼い犬ボスを通して三人の娘を持つシングルマザーのジュリー(ダニエル・マクドナルド)と出会い、愛を知る。
組織にもこれまでの自分の非道な行いにも疑問を持ち始め、組織から抜けることを決意する。けれどそう簡単な話ではなく、どこへ逃げようと組織はブライオンを見つけ出し、ボスまで殺し、ジュリーや娘らにも危害が及ぶ勢いで、取り戻そうとする。
新しい命を授かったブライオンは、反差別の政治活動家ジェンキンス(マイク・コルター)の計らいでFBIへの協力と富豪の善意から600日に及ぶ全身のタトゥー除去手術に踏み切る…。
カルト教団みたいな作り。集団活動はだいたいそうなる。意識が変わったのに脱退できないって怖いな。組織の中にいる人たちも事あるごとに自分に理念を言い聞かせコントロールしてマインドを持続してるのかもしれない。だからブライオンのリンチ場面で世代交代が起こった時、ママの表情が慈愛に満ちた感じで優しかったのかも。
ジュリーが特に魅力的なわけでもなさそうなんだが(と思う時点で私もけっこうな偏見があることがわかる)、三人の子供を育てているという、おそらく母性に惹かれたんだろうな。組織のママは小さい頃から面倒をみてもらっているとはいえ、本当のママではないし。
そう思うと、女性が女性性を捨てるのはどうなんだろうと思う。やはり人間は父性より母性を求める。10ヶ月も母親の体内で育つんだから当然だ。
短編でもそうだったけど飼い犬のボスがフィーチャーされてるの、いいな。人と犬って昔々から良き相棒だったんだなって感じられて。
短編でやたらタトゥーが入ってたのは白人至上主義のスタイルだったのね。
600日は大変だけど案外きれいに消せるもんなんだな、タトゥー。人間の回復力再生力がすごいのかな。(エンディングでご本人の画像が出る)
エンタメとしても満足度が高く、良かったけど、短編のほうが好き。
でも、やっぱり、洋画は難しいな…。
★★★★
『パージ』を思い出す。