『トゥルーノース』(2020)
日本とインドネシアの合作3Dアニメーション映画。
監督脚本 清水ハン栄治
実際の脱北者に取材をし、10年費やし作ったそうだ。
1995年。平壌で暮らす一家にある日事件が起こる。父親が所在不明になり、次に母ユリと息子ヨハン(主人公)、娘ミヒ(妹)の3人が政治犯強制収容所へ送還となる。まったく身に覚えのないことでわけわからぬまま劣悪な環境での重労働の日々が始まる。父親が政治犯だったと知るのはその後のこと。
看守の下に同じ収容所員で作られた監視係がいる。きつい労働に見合わぬ配給食で、みんな食べ物が欲しいばかりに密告や瑣末な告発をする。少しでも自分の立場を良いものにしようと他人を陥れ、係や看守に気に入られようとする。ヨハンも子供時代から9年もそこで生きてきたせいで立ち回りを覚えるようになり、助け合いつつ過ごしてきた仲間を裏切り、自分の家族しか見えなくなってしまう。しかし、自分のしたことが思わぬ形で返ってきて、長い収容所生活でもまっすぐな心と優しさを失わない母とミヒにより心を入れ替える。
やがてヨハンはみんなの力になるような存在になり、密かに脱出を計画し始めるが…。
脱北に成功したミヒとヨハンの親友のインス。2人は一緒になり12年後、そのインスがTEDで収容所での問題、北朝鮮で人民はどう扱われているかを全世界に向けてスピーチする。
病気や理不尽なリンチ、上に立つ者の気分で死んでいく人を間近で見ていると感覚がおかしくなるのだろう、夢も希望も抱けず気力もなくなり与えられた作業だけをこなす毎日、本能である「生きる」ことだけが目標になる。ただ生きるためだけにそこにいるのが身につまされる。人間の醜い部分ばかりが顕になる描写中、看守も監視係も中には疑問を持っている人間らしい情を持った人もいるのは救い。
とても良かった。
★★★★(★)
3Dアニメというか、ポリゴン。でも、だから良かった気がする。今の時代にこんな収容所や強制労働があるなんて信じられないからだ。ポリゴンであれば人間味も欠けるし、ややもすると絵空事にさえ感じる。そういうリアリティを排除してひとつのフィクションに仕上げた方がより心に響き伝わりそうだ。そうであろうな、かの国は、と歴史からも誰もが想像ついてるだけにちょうどいい気がする。現実味を出す点ではTEDがあるし。
朝鮮民主主義人民共和国という名のもと、主体思想を国民に根付かせた単なる独裁国家。人民の苦役の上にあの太っちょがいるのだ。
共産主義、社会主義のどん詰まり感ある。だったら格差は生まれても可能性を試せる自由がある資本主義の方がいい。
True Northは英語の慣用句らしく、真に重要な目標を指し、決して変わらない目標=正しい方向、真意は「生きる意味」とのこと。