『飼育の部屋』(2002)
監督脚本 キム・テグワン
小沢和義、桜井真由美、遠藤憲一、根岸季衣、他。
郵便局員の佐川松男は配達先である一人住まいの大学生鈴木まどかに勝手にシンパシーを感じており、綿密な拉致監禁を計画していた。準備が整い実行に移し、589日に及ぶ松男によるまどかの飼育が始まったが…。
最初の抵抗を繰り返す時期から、情が通じるまでが1年足らず。1年半が経つと信頼が生まれ、敵が部屋の外側になる。ストックホルム症候群を狙った犯行なのだが、松男は初期の段階で失敗をしている。
なかなか面白かったのでネタバレは避けておくけど、感じる事の多い映画だった。
ネットリンチとか、被害者より加害者の人権が重要視される傾向への疑問とか、社会的正義とか、PTSDとか、孤独がもたらすものとか、女性の強みとか…。というか、被害者は女性なんだけど、作品からは女性へのリスペクトしか感じないな。人間の本質の部分で男性は女性に敵わないって言っているかのよう。
松男役の小沢和義が本当に気持ち悪くて怖くてすごく良かった。
★★★★
でも、残念だったのもあって、最後に中華屋の出前持が謝罪に現れるのだけど、まどかが床について悪夢にうなされて起きる時間なのでおそらく0時は回っている、そんな時間に来る? しかも玄関の鍵が開いていたということなのか、扉の内側に立っている。そこでまどかはこの上ない恐怖を感じるのだけど、ホラーかよ! と。あまりに不自然で、恐怖を表現するにしてももっと違うやり方があったろうに。その後の事件性を暗示するにしても、だ。余計な演出、もったいない。
あと、最初、防音のためにダンボールを壁じゅうに貼るのだけど、それが雑すぎる。松男の抜けたところが後にわかるので、雑でもいいんだけれど、もう少し、気持ち悪いズレくらいであって欲しかった。