春たけて | もとろーむの徒然歳時記

もとろーむの徒然歳時記

山が好き、花が好き、クラッシック音楽や絵画、演劇に歴史好き…気ままに書かせて頂いています。

 

ちょっと前の話になりますが、

 

4月も半ばを過ぎ、初夏のような陽気につられて、散歩にでました。

 

しっとりとした朝の空気が心地よいです。

 

少し前までは茶色一色だった土手も

 

菜の花の黄色で埋め尽くされ、むせるような芳香を放っていました。

 

対岸をみれば

 

黄色い菜の花の帯がずっと続いています。

 

すれ違う人の数も増え、犬を散歩させているご婦人、

 

ジョキングに汗を流すご夫婦、見知った顔に話かけられている老紳士。

 

春の陽気は人をも活発にさせてくれます。


さて今日は一日、花を求めて歩きます。

 

 

最初に見つけたのは土筆です。

 

毎年同じ場所に出るので、すぐに見つけることが出来ました。

 

周りに生えていたのは、沢山のスギナです。

 

いつも不思議に思うことがあります。

 

ツクシ誰の子、スギナの子とはやされ、

 

ツクシはスギナの付属のように言われることがありますが、

 

どちらかというとツクシが先に地上に現れ、

 

そのあとでスギナが生えてきます。

 

ツクシは胞子茎で生殖する胞子を持っています。

 

卵が先か鶏が先かの話になりますが、

 

私はスギナ誰の子、ツクシの子と思っています。

 

因みに牧野新日本植物図鑑には残念ながら、

 

そのことは書かれていませんが、

 

スギナはその形状が杉に似ていることによると書かれています。

 

 

 

春の散歩道を歩いていると、

 

まだ寒さ厳しい早春に、良い香りを放っていたロウバイの木があります。

 

よく見てみると葉に隠れた緑色の実をつけていました。

 

梅の実のように丸くはなく、

 

緑色の大きなどんぐりのような形をしています。

 

 

中には黒い実もあり、

 

これらは緑色から黒く変色していきます。

 

当然ロウバイとウメとでは、品種が違います。


梅はバラ科サクラ属ウメですが、

 

ロウバイはロウバイ科ロウバイ属ロウバイです。

 

 

 

 

フジが咲き始めていました。

 

フジの学名は

 

Wisteria floribunda(ウイステイラ・フロリバンダ)マメ科フジ属で、

 

和名をノダフジと言います。

 

日本には山に自生するヤマフジがあります。

 

この違いは、

 

ヤマフジの蔓は左巻き。一般的なノダフジは右巻きです。

 

花房の長さもヤマフジの花序の方が短くなります。

 

学名ではヤマフジはWisteria brachybotrys(ウイステイラ・ブラキボロリス)

 

フジ属ヤマフジ種とフジとは異なる同属異種になります。

 

 

フジは古の昔から人々の間に浸透しています。

 

源氏物語の中にも光源氏の理想の女性として藤壺の宮が出てきます。

 

又、古事記を始め、

 

枕草子や徒然草、伊勢物語、

 

もちろん万葉集にも二十七首の藤の歌が出てきます。

 

またNHKの大河でも有名な、

 

平安時代中期の政治文化を彩る藤原時代、

 

同じく平安後期の奥州藤原三代など、

 

地名人名に藤の名がつくものが多い事や、

 

その他絵画や彫刻に残された作品が多く

 

日本の文化のさまざまな方面に数多く姿をみせるフジは

 

日本の特産のマメ科のつる性木本です。

 

フジは万葉の昔から日本人には馴染みの植物ですので、

 

昔から栽培されているので、

 

現在は天然記念物等に指定されているのも多いようです。

 

 

シロバナムシヨケギクです。

 

この花を原料として製品化された商品があります。

 

この花が日本に持ち込まれたのは、明治の中頃です。

 

この花は胚珠に殺虫効果のあるピレスロイドを含んでおり、

 

優れた殺虫効果や、防虫効果をもっていることがわかり、

 

明治21年に初めて製粉され、

 

殺虫効果をハエやノミで試し、良い結果を得たそうです。

 

 

当時和歌山県でミカン農園を運営していた上山英一郎氏は

 

これを殺虫剤として栽培に取り組み、

 

栽培地を拡大したそうです。

 

この綺麗な花が辺り一面に咲き誇っていたら、

 

素晴らしい光景でしょうね。

 

こうして得られた原料を製粉し、

 

渦巻型の蚊取り線香を発明しています。

 

これがのちの

 

”金鳥の蚊取り線香”になります。

 

シロバナムシヨケギクはその名の通り、除虫菊として知られています。

 

 

トゲトゲ姿の異様なカラタチです。

 

こちらは枝の先に白い可愛らしい花を咲かせます。

 

ミカン科ですから、

 

近寄るとかすかに柑橘系の匂いがします。

 

枕草子には、

 

「名おそろしきもの からたち」と書かれ、嫌われています。

 

もともとは中国が原産で名のカラタチは唐橘の略で、

 

古い時代に渡来したようです。

 

当初は薬用として利用され、

 

枕草子や万葉集にもその名をみることができますので、

 

既に奈良、平安時代頃には生薬として利用されていたのでしょう。


寒さに強いのでミカンの台木としても使われています。

 

 

 

万葉集巻第十六 三八三二に

 

このカラタチバナを詠んだ、唯一の句があります。

 

あまり綺麗な歌でもありません。以前訳したので割愛します

 

からたちの うばら刈り徐(そ)け 倉立てむ 屎遠くまれ 櫛造る刀自(とじ)

 

 

こちらはメギです。

 

生垣として植えてある珍しい木です。

 

葉はトキワマンサクに色も形も似ていますが、

 

大きく違うのがメギには節にしっかりとした棘があります。

 

このため別名でコトリトマラズとか、

 

鎧通しと呼ばれています。

 

メギは全体にアルカロイドを含み、

 

枝葉や根を折って水に浸して作る煎液には抗菌作用があって、

 

メグスリノキと同様に目薬とし、

 

結膜炎などの充血や炎症を防ぐのに使ったため、

 

メギ(目木)と名付けられたようです。

 

また煎液は黄色くて苦味があり、

 

整腸薬としても使われていたようです。

 

生薬名は「小蘗(しょうばく)」です。

 

このメギ、なんと言っても花が可愛らしいです。

 

六弁のがく片と花びらが重なっている花を咲かせます。

 

 

 

 

見上げるとハナズオウの赤い花が咲いています。

 

葉より先に小さい紫紅色の蝶々のような花が、枝を隠すように咲いています。

 

梅や花桃や桜が散ったあとにこの花は咲き始めます。

 

一見すると花桃のようですが、

 

特徴ある花の形で見分けられます。

 

中国原産で日本に入って来たのは江戸時代初期頃です。

 

名前のハナズオウは花の色が、

 

落ち着いた紫色、蘇芳色(すおういろ)に似ていることからきているようです。

 

 

めずらしい植物たちにも出逢えました。

 

次回この続きを書かせて頂きます。