ロードレンドロン ツツジ | もとろーむの徒然歳時記

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山が好き、花が好き、クラッシック音楽や絵画、演劇に歴史好き…気ままに書かせて頂いています。

 

ツツジほど地名がつけられた花もめずらしいでしょう。

 

エゾ、クルメ(キリシマ)、ヒラド、

 

リュウキュウ、ケラマ、ウンゼン、ミヤマキリシマ等々。

 

これらから派生した園芸種のツツジは数百種とも言われています。

 

日本は世界に誇るツツジ大国で、

 

ツツジという名も、これらツツジの総称として呼ばれていることが多いです。

 

 

牧野富太郎博士は

 

著書の中でおもしろい事を言われています。

 

それは

 

「霧島にキリシマツツジはなく、雲仙にウンゼンツツジなし」

 

という言葉です。

 

博士の言葉通り、霧島山にキリシマツツジはなく、

 

霧島山以の周辺でも自生は全くないそうです。

 

あるのは全く別物のミヤマキリシマツツジです。

 

雲仙では国の天然記念物「池の原ミヤマキリシマツツジ群落」は、

 

ご当地ではウンゼンツツジとよばれているそうです。

 

牧野博士はウンゼンツツジというのは誤りであるが、

 

古くから用いられた名前なので改めない。

 

と書かれています。

 

呼び方もご当地によって、色々あるようですね。

 

因みにミヤマキリシマは

 

牧野博士が発見し名付けられています。

 

 

 

またこのツツジを県の花としている県もあります。

 

鹿児島県のミヤマキリシマ、

 

長崎県のウンゼンツツジ、静岡県のツツジ、

 

栃木県のヤシオツツジ、群馬県のレンゲツツジなどがあります。

 

 

ツツジを図鑑で開くと、

 

ツツジという花は記載されておらず、

 

ツツジ科ツツジ属という風に記載されています。

 

つまりツツジという花は存在しません。

 

それはそうですよね。ツツジには色々な種があります。

 

Rhododendron ellipticum Maxim(ロードレンドロン エレティカム)

 

ツツジ科に属するツツジ属の総称です。

 

ツツジは種類も多く、

 

アザレアなどの園芸種も含めて、見た目で種類を判別するのは、

 

なかなか難しいと思います。

 

 

サツキとツツジの違い、

 

これは以前書いたのですが、

 

恥ずかしながら、私の疑問でした。

 

私の頭の中ではツツジ科の中で属を分け、

 

サツキ属のサツキ種というイメージがあり、

 

この二つは同科ながら属を分ける種だと思っていました。

 

その事を長い間確認をしていませんでした。

 

それはツツジが咲き終わったら、

 

次はサツキの季節だなと頭の中にあったからです。

 

これが属の違いだろうと思い込んでいた理由です。

 

それは学名を調べたところ、サツキの学名を見て気づきました。

 

それまでツツジとサツキを比較する会話や話から、

 

先入観でツツジとサツキは別々の品種だと思いこんでいたのは前述の通り、

 

サツキの学名は

 

Rhododendron Indicum Sweet、ツツジ科ツツジ属でした。

 

サツキは正確にはサツキツツジですからツツジの一種です。

 

当たり前の事ながら、

 

サツキツツジはツツジ科ツツジ属の一品種でした。

 

 

 

因みにサツキは日本特産のツツジでありながら

 

学名にIndicum、インド産という示種名がついているのは、

 

このツツジがインドネシアを経てヨーロッパに伝えらた為、


東インド諸島産と誤解されたものとありました。

 

 

ではこのツツジの学名に日本産がついているものを調べると、

 

ありました。

 

Rhododendron Japonicum Suringer

 

ツツジ属ツツジ種 レンゲツツジです。群馬県の県花です。

 

確かに私がよく行く群馬県のスキー場では、

 

初夏の日の当たるゲレンデなどで、

 

鮮やかな朱色に咲くレンゲツツジです。

 

何度か見に行った事があります。青い空と緑のゲレンデ、

 

白い白樺林とその足元に咲く朱色のレンゲツツジ。

 

それは見ごたえがあり、美しい風景です。

 

ゲレンデには牛が放牧されているのですが、レンゲツツジは全体に毒がある為、


牛はレンゲツツジを絶対に食べません。

 

 

 

風早の 美保の浦廻(うらみ)の白ツツジ 見れどもさぶし なき人思へば

                                   (巻第三 四三四)

 

風が激しい美保の浦には、

 

白ツツジがこんなに美しく咲いていますが、

 

亡くなった人のことを思うと、いくら見ても楽しい気持ちにはなれません。

 

万葉集では

 

白ツツジ、岩ツツジ、丹(に)ツツジの名でツツジが詠まれています。

 

初夏の山を彩る代表的な山ツツジは、

 

芽吹いたばかりの新緑に燃える様な真っ赤な花を咲かせ、

 

色の対比があざやかです。

 

またミツバツツジの紫や、

 

レンゲツツジの朱の色は緑の中で浮きたつほどの美しさです。

 

万葉の昔からツツジは身近な美しい花とされていたのでしょうね。

 

 

 

山越えて 遠津の浜の 岩ツツジ 我が来るまでに 含みてあり待て

                           (巻第七 一一八八)

遠津の浜の岩ツツジよ、

 

私が帰るまでは、つぼみのままで待っていて。

 

たくひれの 鷺坂山(さぎさかやま)の 白ツツジ 我ににほはね 妹に示さむ

                            (巻第九 一六九四)

鷺坂山の白ツツジよ、

 

私の衣を白くしてくれたら、それを私のいとしい人に見せましょう。

 

 

長唄にも詠まれています。

 

物思はず 道行く去(ゆ)くも 青山を 振り放(さ)けみれば ツツジはな 

 

にほえ越売(をとめ)さくらばな 

 

栄え越売 汝(なれ)をぞも 我に寄すといふ 

 

我をぞも 汝に寄すといふ 汝(な)はいかに思ふ 思へこそ

 

 年の八年を きりかみの 吾同子(よちこ)を過ぎ 

 

たちばなの 末枝(ほつえ)をすぐり 

 

            この川の 下にも長く 汝(な)が心待て                       

  (万葉集 巻第十三 三三〇九)

 

物思いせずに、道を歩いてゆき、

 

草木の茂った山を振り仰いでみると、

 

そこに咲いているツツジのように綺麗な君。

 

匂わんばかりに咲いた桜のような美しい盛りの君。

 

君は私が好きだという。

 

私も君が好きだという。きみはどう思っているの。

 

(女性の返答)

 

あなたのことを思っているからこそ

 

私は八年もの間、おかっぱ髪の少女時代を過ごし、

 

タチバナが上枝に実をつけるまで、

 

じっと川底にいてあなたの心が動くのを待っていました。

 

といういじらしい歌も詠まれています。

 

 

ツツジには本当に沢山の種類があります。

 

私は山で出逢える朱色のレンゲツツジや

 

蝶々が羽ばたいているようなピンクのアカヤシオや、

 

紫輝くミツバツツジが好きです。

 

山を歩いていると

 

突然現れる美しい花に思わず足を止めてしまいます。

 

花期の幅が広い

 

ツツジ属は、まだしばらくは楽しめそうです。