全然麻雀は関係ないけど、思ったことを。
12月23日。
今日は小学一年生の娘と映画に行く約束をしていた。
昼過ぎにマンションのエントランスに降りたところで、娘の同級生のAちゃんのお父さんに会った。
「あ、Aちゃんのパパ!」
お父さんは、箱に入った子ども用の一輪車を大事そうに抱えて帰ってきたところだった。
「ねえそれ何!?あ、一輪車!?」
「・・・!――ち、違うよ、違うよ!」
慌てて大きな箱を隠そうとするお父さんに、あ、これはしまったな、と思った。
「えーじゃあ何、何」
しつこく尋ねる娘に、普段とても落ち着いているAちゃんのお父さんがとても困っていたのが申し訳なかった。
「行こう、一輪車じゃないよ。何か、違うものじゃないかな」
娘の手を引いて、マンションを出た。
さてこれはどうしたものか。
歩きながら、私はいろいろ考えた。
間違いなくあれは、Aちゃんが明日のクリスマスイブに、サンタさんからもらうはずのプレゼントであろう。
そうすると学校で、Aちゃんが
「サンタさんから一輪車もらったんだ~」
なんて話をすれば、
うちの娘が
「あれ?Aちゃんパパが一輪車の箱持ってるの見たよ」
なんて話をするかもしれない。
いや、むしろ明日の朝に学校で、
「昨日Aちゃんのパパがね~」
なんてフライングしてしまう可能性もある。
私は悩んだ。小学一年生くらいが、サンタについてはもっとも難しい年齢なのである。
このままでは遅かれ早かれ、娘がAちゃんに今の出来事を話してしまうだろう。
Aちゃんのお父さんも、今頃まずいと思っているかもしれない。
意を決して、娘の方を向いた。
「――大事なお話があります」
「さっきあったことは、決してAちゃんに話してはいけないよ」
「えー・・・どうして」
「うん――。あれはやっぱり、Aちゃんパパが、サンタさんに頼まれて持って帰ったプレゼントかもしれない」
「でもね、そうするとサンタさんの代わりに、お父さんがAちゃんのベッドにこっそり置いてあげないといけないでしょう?
だから、パパが今持っていることは、Aちゃんには内緒にしてあげた方がいいと思わない?」
娘は少し考えたあと、わかった、とうなずいて――、
「でもね、サンタさんっていないんじゃないの、本当はパパとママなんじゃないの」
と質問してきた。
――ああ。
来るべき日が来たか、というやつだ。
内心、かなり動揺していた。
それでもなるべく子どもの夢を壊さないように、子どもの納得いくような答えを、自分なりに準備だけはしていた。
「いや――、サンタさんはいるよ」
娘の目を見てはっきり言った。
「でも、世界中にたくさんの子どもがいて、ちょっとサンタさん一人ではプレゼントを作ったり、配ったりするのが難しいことがあるんだよ」
「だからそんなときは、サンタさんの代わりに、おもちゃの会社がおもちゃを作って、おもちゃ屋さんがそれを売って、パパとママがそれを買って、というのを――、みんなでやってるんだ。サンタは世界中にたくさんいる。みんなが子どものために、分担してプレゼントを用意してるの」
娘はやはり少し考えたあと、わかった、と明るい声で言った。
じゃあうちはどうなの?とは聞いてこなかった。
なんとなく、分かっているんだと思う。
毎年毎年、子どもにそれとなく欲しいものを聞いて、
子どもの知らないうちにこっそり準備して、家のどこかに隠す。
イブの夜子どもが寝静まった頃を見計らって、そうっと枕元に置く。
この盛大な嘘を、世界中で何十年も大人たちは続けている。
世界は意外にも優しい。なんとも不思議なものだ。
うちのサンタは麻雀しか出来ないけど、これくらいは頑張ろう。
分担だからね。
ちょっと本物のサンタには3DS用意できないだろうし。
12月23日。
今日は小学一年生の娘と映画に行く約束をしていた。
昼過ぎにマンションのエントランスに降りたところで、娘の同級生のAちゃんのお父さんに会った。
「あ、Aちゃんのパパ!」
お父さんは、箱に入った子ども用の一輪車を大事そうに抱えて帰ってきたところだった。
「ねえそれ何!?あ、一輪車!?」
「・・・!――ち、違うよ、違うよ!」
慌てて大きな箱を隠そうとするお父さんに、あ、これはしまったな、と思った。
「えーじゃあ何、何」
しつこく尋ねる娘に、普段とても落ち着いているAちゃんのお父さんがとても困っていたのが申し訳なかった。
「行こう、一輪車じゃないよ。何か、違うものじゃないかな」
娘の手を引いて、マンションを出た。
さてこれはどうしたものか。
歩きながら、私はいろいろ考えた。
間違いなくあれは、Aちゃんが明日のクリスマスイブに、サンタさんからもらうはずのプレゼントであろう。
そうすると学校で、Aちゃんが
「サンタさんから一輪車もらったんだ~」
なんて話をすれば、
うちの娘が
「あれ?Aちゃんパパが一輪車の箱持ってるの見たよ」
なんて話をするかもしれない。
いや、むしろ明日の朝に学校で、
「昨日Aちゃんのパパがね~」
なんてフライングしてしまう可能性もある。
私は悩んだ。小学一年生くらいが、サンタについてはもっとも難しい年齢なのである。
このままでは遅かれ早かれ、娘がAちゃんに今の出来事を話してしまうだろう。
Aちゃんのお父さんも、今頃まずいと思っているかもしれない。
意を決して、娘の方を向いた。
「――大事なお話があります」
「さっきあったことは、決してAちゃんに話してはいけないよ」
「えー・・・どうして」
「うん――。あれはやっぱり、Aちゃんパパが、サンタさんに頼まれて持って帰ったプレゼントかもしれない」
「でもね、そうするとサンタさんの代わりに、お父さんがAちゃんのベッドにこっそり置いてあげないといけないでしょう?
だから、パパが今持っていることは、Aちゃんには内緒にしてあげた方がいいと思わない?」
娘は少し考えたあと、わかった、とうなずいて――、
「でもね、サンタさんっていないんじゃないの、本当はパパとママなんじゃないの」
と質問してきた。
――ああ。
来るべき日が来たか、というやつだ。
内心、かなり動揺していた。
それでもなるべく子どもの夢を壊さないように、子どもの納得いくような答えを、自分なりに準備だけはしていた。
「いや――、サンタさんはいるよ」
娘の目を見てはっきり言った。
「でも、世界中にたくさんの子どもがいて、ちょっとサンタさん一人ではプレゼントを作ったり、配ったりするのが難しいことがあるんだよ」
「だからそんなときは、サンタさんの代わりに、おもちゃの会社がおもちゃを作って、おもちゃ屋さんがそれを売って、パパとママがそれを買って、というのを――、みんなでやってるんだ。サンタは世界中にたくさんいる。みんなが子どものために、分担してプレゼントを用意してるの」
娘はやはり少し考えたあと、わかった、と明るい声で言った。
じゃあうちはどうなの?とは聞いてこなかった。
なんとなく、分かっているんだと思う。
毎年毎年、子どもにそれとなく欲しいものを聞いて、
子どもの知らないうちにこっそり準備して、家のどこかに隠す。
イブの夜子どもが寝静まった頃を見計らって、そうっと枕元に置く。
この盛大な嘘を、世界中で何十年も大人たちは続けている。
世界は意外にも優しい。なんとも不思議なものだ。
うちのサンタは麻雀しか出来ないけど、これくらいは頑張ろう。
分担だからね。
ちょっと本物のサンタには3DS用意できないだろうし。