全然麻雀は関係ないけど、思ったことを。


12月23日。
今日は小学一年生の娘と映画に行く約束をしていた。

昼過ぎにマンションのエントランスに降りたところで、娘の同級生のAちゃんのお父さんに会った。

「あ、Aちゃんのパパ!」

お父さんは、箱に入った子ども用の一輪車を大事そうに抱えて帰ってきたところだった。

「ねえそれ何!?あ、一輪車!?」

「・・・!――ち、違うよ、違うよ!」

慌てて大きな箱を隠そうとするお父さんに、あ、これはしまったな、と思った。

「えーじゃあ何、何」

しつこく尋ねる娘に、普段とても落ち着いているAちゃんのお父さんがとても困っていたのが申し訳なかった。

「行こう、一輪車じゃないよ。何か、違うものじゃないかな」

娘の手を引いて、マンションを出た。

さてこれはどうしたものか。

歩きながら、私はいろいろ考えた。

間違いなくあれは、Aちゃんが明日のクリスマスイブに、サンタさんからもらうはずのプレゼントであろう。

そうすると学校で、Aちゃんが

「サンタさんから一輪車もらったんだ~」

なんて話をすれば、

うちの娘が

「あれ?Aちゃんパパが一輪車の箱持ってるの見たよ」

なんて話をするかもしれない。

いや、むしろ明日の朝に学校で、

「昨日Aちゃんのパパがね~」

なんてフライングしてしまう可能性もある。

私は悩んだ。小学一年生くらいが、サンタについてはもっとも難しい年齢なのである。

このままでは遅かれ早かれ、娘がAちゃんに今の出来事を話してしまうだろう。

Aちゃんのお父さんも、今頃まずいと思っているかもしれない。

意を決して、娘の方を向いた。

「――大事なお話があります」
「さっきあったことは、決してAちゃんに話してはいけないよ」

「えー・・・どうして」

「うん――。あれはやっぱり、Aちゃんパパが、サンタさんに頼まれて持って帰ったプレゼントかもしれない」
「でもね、そうするとサンタさんの代わりに、お父さんがAちゃんのベッドにこっそり置いてあげないといけないでしょう?
だから、パパが今持っていることは、Aちゃんには内緒にしてあげた方がいいと思わない?」

娘は少し考えたあと、わかった、とうなずいて――、

「でもね、サンタさんっていないんじゃないの、本当はパパとママなんじゃないの」

と質問してきた。

――ああ。

来るべき日が来たか、というやつだ。

内心、かなり動揺していた。

それでもなるべく子どもの夢を壊さないように、子どもの納得いくような答えを、自分なりに準備だけはしていた。

「いや――、サンタさんはいるよ」

娘の目を見てはっきり言った。

「でも、世界中にたくさんの子どもがいて、ちょっとサンタさん一人ではプレゼントを作ったり、配ったりするのが難しいことがあるんだよ」
「だからそんなときは、サンタさんの代わりに、おもちゃの会社がおもちゃを作って、おもちゃ屋さんがそれを売って、パパとママがそれを買って、というのを――、みんなでやってるんだ。サンタは世界中にたくさんいる。みんなが子どものために、分担してプレゼントを用意してるの」

娘はやはり少し考えたあと、わかった、と明るい声で言った。

じゃあうちはどうなの?とは聞いてこなかった。

なんとなく、分かっているんだと思う。


毎年毎年、子どもにそれとなく欲しいものを聞いて、
子どもの知らないうちにこっそり準備して、家のどこかに隠す。
イブの夜子どもが寝静まった頃を見計らって、そうっと枕元に置く。

この盛大な嘘を、世界中で何十年も大人たちは続けている。

世界は意外にも優しい。なんとも不思議なものだ。


うちのサンタは麻雀しか出来ないけど、これくらいは頑張ろう。
分担だからね。

ちょっと本物のサンタには3DS用意できないだろうし。


日本プロ麻雀協会の矢島亨、通称やじーが本を出しました。



これで勝てる麻雀攻めの常識100 (マイナビ麻雀BOOKS) 単行本(ソフトカバー) – 2015/8/25
矢島 亨 (著)


私も製作に少なからず携わったので、宣伝がてら裏話を少々。

もともとこれは、マイナビから協会に
「初中級者向けに戦術本を書いて欲しい」
という依頼があったのですが、
そのとき白羽の矢が立ったのがやじーでした。

マイナビの編集さんが、天鳳位の独歩さんから紹介されたんですよね、やじーを。

やじーと独歩さんは昔から知り合いで、まあ麻雀も強く、講師もやってるということで信頼があったようです。

やじーは、2011年から「やじ研」という麻雀の勉強会を開いています。

毎週水曜、決まった時間、決まった場所で、
なんともう丸4年もほぼ毎週欠かさずやっています。

月謝が入るわけでもありません。
ただただ、みんなが強くなるための勉強会を、後輩たちのために、
会社が終ったあとに無償でやっているのです。

やじーは麻雀も極めて論理的で、教え方も本当にうまいので、
参加者たちは皆、立派な結果を残してきています。

矢島 亨  第13回 日本オープン優勝 
水城 恵利 第11回 野口賞女性棋士部門受賞
冨本 智美 第11期 女流雀王
武中 進  第13期 雀竜位
武中 真  第10回 日本オープン優勝
斎藤 俊  第12期 雀竜位
綱川 隆晃 第 9回 オータムチャレンジカップ優勝

などなどですね・・・。

それでまあ、
「攻撃の戦術を100コ書いて!できるよね!」
というマイナビさまの依頼を、
やじーも快く承諾したわけなんですが。

ここまで信頼の厚いやじーに、編集さんも独歩さんも知らなかった欠点が、一つだけありました。


矢「須田さん、本が出来たら校正してくんないかな」

須「あーいいよー」

そんなことをやじーと約束して何週間か過ぎ、そろそろ原稿の締め切りも近づいてきたある日曜。

・・・・そういや原稿できてるのかな?

そう思ってやじーに連絡。

須「あのさー今日休みだから、多少校正にかかろうと思うんだけど」

矢「あ、じゃあどっかで会おうか、パソコン持って行く」

出来上がった原稿に目を通して、私はたいへんなことに気づいてしまいました。

須「やじー・・・もしかして、文章苦手?」

矢「うん!」

やじーの欠点は、執筆者として致命的なものだったのです!がーん。


それからは血のにじむような日々が続きました。

校正するよと言った手前、出せないレベルにするわけにはいきません。

もうこれは校正じゃなくてゴースト・・・いやいやそんなことは思いませんが。

苦手ながらも、やじーは牌姿を何百も出し、自分の伝えたいことを懸命に残しています。

(ちなみにやじーはパソコンも苦手です)

これを読者にわかりやすく形にするのが、今の自分の使命だと思いました。
他にヒマ人いないし。

やじ研の若い子にも細かい作業を手伝ってもらいました。

巻中のコラムは、やじ研のタイトルホルダーそれぞれに書いてもらいました。

青木さやさんの漫画も入れることに挑戦しました。(マイナビ本では異例)

というわけで、やじ研のみんなで作った本です。


やじーが毎週毎週4年も、金にもならん研究会を真面目にやってるから。

仕事も忙しいくせに、文章苦手なくせに、必死に原稿書いてるから。

やじーが麻雀にここまで真摯じゃなかったら、私も手伝わなかったでしょう。

というわけで、内容は私が保証します!

皆さん読んで下さいね!→予約!



2月21日。

武中進という協会の選手が、今日
第13期雀竜位決定戦
の最終日に臨んでいた。

この日までのポイントは、

斎藤 俊355.1
武中 進-54.9
板倉 浩一 -143.0
渋川 難波 -158.2

と、斎藤のぶっちぎり。

武中は一番近い位置だったが、
残りたったの半荘5回で、400pの差をまくれた前例はない。

斎藤は本当に強く、センスと華のある打ち手だ。
消化試合だと、誰もが思っていた。

しかし初戦、思いもよらぬ出来事が起こる。



大きく離された武中がこの手をツモ和了らず、



必然のリーチを放った斎藤の宣言牌を出来メンツチー。



斎藤がツモ切った発を武中が鳴き、
斎藤が3索をつかんだ。

奇跡といえばそうかもしれないが、
それでも斎藤を脅かす位置につけたわけではなかった。

しかしここから、武中は丁寧に打牌を繰り返し、
徐々に斎藤との差を縮めていって、
ついに本当の奇跡を起こしてしまった。




たぶんだけど、僕を含めて、今日の決勝をちょっと違った感傷で見ていた人たちがいると思う。

昔協会に、ちょっと生意気でイケメンの後輩がいて、いつも武中とつるんでいた。

「ススムくんは不細工だな!」
「ススムくんはホント麻雀太いよな~!」

そうやって無邪気にばんばんと叩いてくる後輩を、
武中は面倒くさそうにあしらいながらも、
いつもうちの店に一緒に連れて来ていた。

彼は麻雀も強く、そう、たとえば今の斎藤のように、未来ある後輩だった。



2月25日は、彼の命日である。

その日を目前にして、今日武中は、雀竜位を勝ち取った。

優勝直後に武中からメールが来た。

「今年は、いい報告ができそうです」
と。


まあ――どうせあいつは、

「ススムはやっぱツイてんな!」

と生意気に笑って、

それでもやっぱり、嬉しそうに武中のことをばんばんと叩くだろう。


あのときのみんなでそろって、祝ってやれると良かったけれど。

彼のぶんまで、おめでとう、ススムくん。
僕が昔最強戦のプロ予選に出たとき。
初戦で対面に、ある団体の偉い方が座った。
上家も下家も有名プロ。
みんなテレビで見たことある人だー、と思っていた。

僕が北家スタートで東1局と東2局に満貫をツモって、結構ダントツ。
東3局に親の上家からリーチが入った。僕はなんかグチャグチャな手だったので、とりあえずオリた。まあオリるよね。
流局したらカン4筒の愚形リーチだった。それでも親だし、先手は当然打つだろう。

で次の局、12巡目まで僕はリャンシャンテン。13巡目に親の切った牌を鳴いて形式テンパイに向かった。
すると下家の西家がリーチ。これもまあオリるよね。役ないし。
そして最後の巡目、このままでは西家に海底が回ってしまう。よって僕は上家の切った安全牌をチーして海底をずらした。
流局して、西家の一人テンパイ。
僕がノーテン、と言うと対面の偉い方がびっくりした表情をする。そして西家のテンパイ形を見て、またびっくりしている。海底ツモだったようだ。

そんなこんなで南入。上家が何度か和了って、僕はまくられる。
で、オーラス。僕のラス親は、3着目の偉い方が七対子のみの1600を和了ってさっと終わる。まあ仕方ないね。

で、このときの卓がずいぶん早く終わったもので、周りはみんなまだ打っていた。
卓に座ったままでいると、対面から偉い方が話しかけてきた。

「君ね、上家の親リーチにオリただろ。あれがダメなんだよ。君は満貫2回和了ってツイてたんだ。あんな愚形リーチにオリちゃダメだ。あのときも結構いい手だったんだろ?」

僕は、

「いいえあのときはグチャグチャだったし、だいたい満貫2回ツモったなら親リーチにオリるのは普通じゃないんですか?」

と言おうと思ったけど、とりあえず「はあ」と頷いていた。

「あと、次の形式テンパイに向かうあの鳴きがいけない。君は今ツイてるんだから鳴いちゃダメだ」

僕は、

「え?もう3段目でリャンシャンテンですし、そろそろテンパイ料を狙って仕掛けるのは普通じゃないんですか?」

と言おうと思ったけどやっぱり「はあ」と頷いていた。

「ああいうくだらない鳴きをするから西家にテンパイが入ってしまうんだ。それからあの海底ずらしとかね。まあ、たまたま海底は西家の和了り牌だったけどな。だいたい君の団体の人は鳴き過ぎる。君、高レートやったことないだろ。高レートやってればああいう鳴きをしないんだけどな」

僕は、

「え、高レートをやると麻雀の内容が変わってしまうんですか。僕は競技麻雀プロだと思っていたんですけど、高レートの経験がここの麻雀に関係あるなんて思いもしませんでした」

と言おうと思ったけど・・・まあいいや。

「まあ君もね、こんな団体にいるからこういう鳴きをしてしまうんだ。うちに来ればもっとちゃんとするよ」

僕が偉い方に説教されているのを遠目で見ながら、立会人であった我らが団体代表のイガリンが、

「いやーもっと言ってやって下さい」

などと言ってたのが個人的にはたいへん笑えないギャグであった。

誤解のないように言っておきたいのだが、その偉い方は、とても面倒見のいい人なんだと思う。
僕に対しても、丁寧に麻雀について教えてあげているつもりだったんだろう。
だから僕は特に反論する気も起きなかったけれど、そこにいる若い子は大変だろうなあ、と思っていた。
こうやって上の人に言われては、鳴きたいときも鳴けなくなってしまう。

実際次の2回戦、僕の上家に当の団体の別の方が座ったのだが、なんか縮こまって鳴けなくなってしまった。本当は萬子を仕掛けてチンイツにしたかった局面で、また何か言われるんじゃないかと思ってチーの声が出なかった。

僕は気が強い人間ではない。人の顔色を伺いながら生きてきたような、どこにでもいる小市民だ。誰でも自分の好きなように自由な麻雀が打てるわけじゃないだろう。

いつかは鳴きの優位性が認められる日も来るんじゃないか、でもそれはまだまだ先かなあ・・・などと思っていた。

それからしばらくして、ある打ち手が現れた。

堀内正人さんだ。

僕は個人的にはほとんど面識がない。
でも、彼は当時としては珍しく、軽い鳴きを主体とした手数の多いスタイルの麻雀だ。
それで勝てるかどうかは分からない。鳴くことは手牌の残し方に守備と攻撃のバランスが必要で、その判断は容易ではない。基礎能力がしっかりしていないと、こういう打ち方が勝てるというわけではない。

しかし、彼は強かった。ネット麻雀でも抜群の成績を叩き出し、2010年にはビッグタイトルである第27期の十段位を獲得した。



この動画を見て欲しい。
そのとき彼は、優勝が決まりつつある局の終盤に涙していた。
彼は今までどれだけ、いわれなき批判をされてきたのだろう。
どれだけ孤独な戦いを続けてきたのだろう。
男が泣くというのは、つまりそういうことだ。
僕はもう、一発で彼のファンになってしまった。
自分の出来なかったことを、言えなかったことを、彼は麻雀で懸命に示そうとしてくれている。
僕はずっと、彼を応援していこうと思った。

それからいろいろあって、彼はいなくなってしまった。

その経緯についてはどうしようもないが、
僕の中では、僕のヒーローがもう見れなくなってしまったことが残念だった。

退会して年が明け、彼は思いもよらない姿で帰ってきた。



神速の麻雀 堀内システム51

この本について、内容については言及しないことにする。
誰もが同じように打つ必要はないし、自分にとって有効な戦術を色んな所から取り入れていけばいい。
すごい、と感嘆する打ち方もあれば、「え、こんなの本当にするの?」とびっくりするものもある。
大事なのは、この本には「堀内正人」が詰まっているということだ。

彼が何を考え、どのように戦ってきたか。
ただの戦術本ではない。
ふんだんなデータも文章も。彼が戦ってきた軌跡をくっきりと示している。

最強戦のあの場所で。

何も言えずに小さくなっていた僕が、
ずっと待っていたのは、この本だった。

構成もたいへん読みやすく、福地さんにも心から感謝したい。
皆さんに読んで欲しいです。
先日最高位戦のAリーグ全日程が終了し、
決定戦進出者と残留者、そして降級者が確定した。

そういえば協会の自分のことを書いてなかったので、
思うところを記録しておこうと思う。


木原浩一プロのブログマガジンに、こんな記事があった。

現役麻雀プロがガチで「天鳳位」を目指すブログマガジン

Aリーグ最終節の話と9月6日の十段坂

ご存知の方も多いと思うが、僕は今年の第13期Aリーグで15人中14位となって降級が決まった。(下位3人降級)

僕は第1期後期で入会し、第4期からAリーグに在籍した。
都合10年Aリーグにいたことになる。

今年の最終節は9月6日だった。
前節までの時点で僕は13位。
同卓の浪江が約90p上の12位だったので、浪江をまくっての残留は十分現実的なことだった。

初戦、浪江が起親でややリード。
その連荘中、北家の金が8巡目にリーチしてきた。

西家の自分の手牌は、せいぜいピンフ三色のリャンシャンテンというところ。
大した手でもないので、すでに場に2枚切れの白と北を抱えてスリムに構えていた。

リーグ戦の対局で、いい加減に打つことなどもちろんない。
3者それぞれに対し、後々何が切りにくくなるかは当然考えながら打っている。

問題は、この白も北も金の現物ではなかったことだ。
地獄単騎も警戒しないわけではないが、他に現物もなく、僕は一発目に白を切って、国士無双を放銃する。

競技生活13年目にして、初の役満放銃だった。

それでも、失敗したとか悔しいとかいう気持ちは微塵もなかった。
仕方ない、としか思わない。
白を残しただけの理由もあるし、金が国士と決めつけられる捨て牌でもなかった。

ハイ、と言って点棒を支払った。

あの時――白を1巡前に離していれば
もしかしたら浪江が掴んで自分が残留していたかもしれない――

そんな考えても仕方のない、本当に下らない結果論まで頭に浮かんで
1人虚無感に打ちひしがれる。そういうものなのだ。
(木原プロの記事より)


そうだね・・・。
まあ国士については、あまり思わなかったかな。
自分の中では、次の半荘のオーラスのことが、心残りではあるかも。


オーラス1本場。
僕は西家でトップ目だった。
北家の金が4500点差の2着目。すぐ下に親の達也がいた。

678p3577s チー345m ポン555p ドラ発

自分はこのテンパイ。

金が前々巡に僕から6pをポンしている。何点かはわからない。

ただ、トイトイではなく、普通の面子手だ。2着取りのタンヤオのようにも見える。

11巡目くらいか。ここに6sを持ってきた。

金は6pをポンしたとき、打6s。
次巡に手出しの6mだ。

・・・3sを切って、良いものだろうか?

しばし考えた。
金にドラアンコのカン3s待ち・・・あるだろうか。
逆に言えば、ドラアンコのカン3s待ちの場合のみ、切ってはいけない。

一応ここで降りても、ノーテン罰符ではまくられない。
ただラス親は達也で、達也はそのときトータルポイント首位。決定戦進出はほぼ確定していた。

その達也は、前局終盤に愚形リーチをかけて、親の一人テンパイにより連荘している。

これは打ち手によるのだが、そのときの決定戦確定の達也の思考は、「普通に打つ」であり、
「静観して流す」ではなかったことが見て取れる。

敵は、金だけではない。長引けば達也にもまくられると思っていた。

678p3577s チー345m ポン555p ツモ6s ドラ発

少考の後、僕はここで金の現物の6sを打たず、スジの3sを切った。

そして――、ドラアンコのカン3sに放銃した。


金は、

○○○67m66p246s発発発 ドラ発

こういう手格好から6pをポンし、打6s。
次巡、7mを重ねて打6mのテンパイであった。

採譜のない卓だったので今説明はしにくいが、金が場況に合わせた手組みだったのだろう。

金が、最後まで決定戦進出をあきらめない、トップを目指す意識が強いことを自分が理解していれば――、
僕はカン4sのままに受けられたと思う。

1000点の仕掛けのわけは、ないのだ。

この半荘はトップから3着落ち。
この放銃で都合68pの失点である。


そうして4回戦目。
現状はまだまだ浪江が上。
5回戦は抜け番なので、自分にとっては今年最後のリーグ戦の半荘だ。

ラス親の自分は点数を重ねてダントツ。2着の木原とは約25000点差だ。

5回戦目に浪江が大きなラスを引くことに賭け、まだ少しでも多くポイントを叩く必要がある。

西家の木原が序盤に1mをアンカンした。

それから9巡目くらいか、僕の上家が場に2枚目の発を切る。
対面の木原がポン。打7m。

すぐに回った僕の手番で、ツモ4m。

78m224678p23478s ツモ4m ドラ8s東

木原のホンイツを警戒して、前巡に3mを切っていた。

木原がポン出し7mだし、カン4mはあるかもしれない。
ドラは場に出ていたので、そこまで高くはないと思った。

この4mをツモ切って、僕のリーグ戦は終了する。

4555m南南南 ポン発発発 アンカン1111m

倍満。

(注:木原プロのブロマガの牌姿は、少し違います)

ギリギリ2着には残ったが、これも都合56pの失点。

最終的に12位浪江との差は80p少々だった。



「あれがなければ――これがなければ――」
反芻すればきりがない。

僕は今期序盤から負けが多かったので、暇があれば協会事務局に行き、
打った牌譜を全て見返していた。

他人の牌譜を見て打ち筋をチェックするというプロも多いだろうが、
僕自身は自分がきちんと打てているか、その確認をする主義だ。

相手がどう打つかは相手による。
自分が自分の思考に沿ってしっかり打てているならば、それでいいと思う。
結果は水物だ。麻雀なのだから。

とはいえ――、もちろん勝ちたかった。

最高位戦で降級した二人も、皆が認める実力者だ。
彼らの思いは知る由もないが、

木原プロの言うように、

これだけは断言しても良い。
勝ちに執着しない人はこの場には絶対にいないということだ。

たった1つだけ、それだけは紛うことなき真実であり、全員の本音だと確信している。


結果に恵まれなくとも、僕たちは無論真剣に打っている。
勝つために、必死でなかった者などいないのだ。


あの日、最終5回戦前。
僕は、金と木原と、隅の方でその日の対局について話をした。

僕はもう帰るだけ。
金と木原は最終戦の開始待ち。

僕から役満を和了った金にも、倍満を和了った木原にも、恨むような気持ちは毛頭ない。

ただただ、楽しかった。

こうやって、ずっと一緒にリーグ戦をやっている仲間と、その日の麻雀の話をするのが大好きだった。


悲しいのは、来年この場にいないこと。

少しだけ、気丈に振舞って、彼らが気を遣わないようにした。


まあ・・・あの人は気なんか遣わないか。

同期入会で、
大して話もしたことないくせに、
勝手に人の気持ちを代弁して。

礼なんか言わないし。
麻雀ライターの福地誠さんに、「神品」を無理やり買っていただきました。

福地

福地さんは昔から本当に面倒見のいい方で、
出来の悪い後輩のことをなんだかんだで取り上げてくれるんですよね。

そうしたらこんな記事が。
【つぶ】後ろ向きの理屈

前書きだけ読んでみたら、こんなことが。
 * * *
雀荘には、独特の空気がある。
麻雀の研究という点ではネット麻雀に劣るけど、雀荘でしか味わえない人間関係ってもんがあって、それにも少しは目を向けてよね。
(要旨)
 * * *
嫌になっちゃうな。
ネット麻雀ばっかのやつが、この文章を読んで、じゃあ雀荘に行ってみようと思うかといったら、思うわけがない。
老人が集まって、「スポーツでもなんでも、今どきの若いもんは数値主義でロマンがない」とか言ってるのと、同じ理屈の立て方。
こういうの嫌いなんだよな。
内容じゃなく、発想として。
「東大を出たけれど」の「れど」がくっついてる発想法。
なぜ、もっと開き直って、雀荘の魅力をストレートな言葉にできないのか。
あまりにも魅力がなく、自虐芸にもなってねー。



先輩、難しくてよくわからんとです・・・。

前書きはこうですね。

生の麻雀を、十年以上私は見てきた。天鳳位のASAPIN氏のように、ネット麻雀の経験が豊富なわけではない。強さを求めるという観点では、彼らの方がより濃密な時間を過ごして来ただろう。私ももちろん彼らの戦術を参考にするし、勉強になることは多い。
ただ、雀荘には、雀荘でしか味わえない空気と戦いがある。そういうものが好きな人も、決して少なくないと思う。
本書では、私のメンバー経験を元にしたコラムから、皆さんの役に立つような戦術、面白い知識などを解説していこうと思う。雀荘での十年は、ネット麻雀を十年打つことに戦術の研究という面では劣る。しかし、そこで繰り広げられる闘牌も、人間模様も、雀荘でしか体験できないことは沢山あるのである。



福地さんも私が働いていた木馬館の常連&先輩メンバーだったので、
雀荘の空気が嫌いなわけじゃないと思うんですけどね。

一応本の内容が「雀荘での経験(=「東大を出たけれど」)からの戦術論展開」なので、

雀荘で培った戦術もいいもんですよ、ついでにそこでの人間模様も面白いですよ、

という薦め方をしたかったんですが。

まあネット麻雀が好きな人が、もちろん無理に雀荘に来ることはないですよ!
嫌なことも当然あります。

こうやって本を読んで、雰囲気を味わうだけでもいいんじゃないでしょうか。

私だって麻雀放浪記などは大好きです。
実際に博徒の真似事をしようとは思いませんけどね。

まあ単にコラムとして面白ければ私としては十分です。

福地さん、いつもありがとうございます!

↓買います(・∀・)

これだけで勝てる! 麻雀の基本形80

さて、マイナビより先日
東大流 麻雀実戦名手‐神品‐ (マイナビ麻雀BOOKS) 」が発売されました。
神品

こちらは一応戦術本というジャンルですが、
過去近代麻雀に掲載されたコラム「東大を出たけれど」から、
戦術として役立ちそうなものを集めて、まとめたものです。

書籍版「東大を出たけれど」未掲載分も含め、
コラムとその解説という形式になっています。

ですから、純粋に読み物として楽しんでいただけると思います。

「麻雀本を斬る!麻雀ゲームを斬る!!」というサイトで、レビューをいただきました。
(総合評価97点!感謝です)

書籍版「東大を出たけれど」では物足りなかった方、
麻雀コラムがお好きな方、
ぜひともご覧下さい!
$東風戦メンバー戦記-書籍


11月21日に、「東大を出たけれど」がついに発売されました。
過去近代麻雀で連載していましたコラムの単行本です。

漫画版は、こちらのコラムを元にして作られました。
漫画との違いを確認されるのも面白いかと思います。

是非、読んで下さいね!


(以下第一話より一部抜粋)
雀荘での夜番が明け、通勤するくたびれたサラリーマンや賑やかな学生達と一緒に、電車に乗り込む。
疎外感なのか優越感なのか――、自分でもはっきりしないが、これから一日が始まる彼らとすれ違いに帰途に着くことに、妙な感覚を覚える。いつからだろう。歪んできたのは。

吹き溜まりのような場末の雀荘で拙い腕を振るい、卓上の小さな勝ち負けに執着する毎日。今後の人生の不安や生活の苦しさを考えれば、普通の人間ならばいつか足を洗うのが当たり前だろう。
水が合った、といえば聞こえがいいが、私が足を踏み入れたのは、沼だ。まっとうな仕事を選択する道もいくらでもあったのだろうが、私は麻雀に嵌り、雀荘で打ちながら接客するというこの妙な仕事から抜けられなくなってしまったのである。
雀荘メンバーというのは、フロアに立って客にドリンクや食事を出したり、ゲーム代を集めたり、そして面子合わせに自腹で麻雀を打ったりするという特殊な職業だ。
無論鉄火場であるから、いろんな客がいる。優しい者ばかりではない。堅気の商売ではない者もいるし、会社をさぼってそのまま辞めてしまう者もいる。負けて借金まみれになった客も沢山見てきた。
かといって自分が麻雀で給料をなくしてしまっては生活ができない。相応の実力は求められるし、それで客の機嫌を損ねないようにする社交性も必要である。
麻雀が好きだから、と瑣末なプライドをもって今の仕事を正当化しようとしても、どこかでそれを逃げ道にしている意識も常にあった。会社勤めがしたいかというと嘘になる。
そんな葛藤に向き合いながら、ただただ毎日を牌に埋もれて今も過ごしている。晴れない霧を彷徨うように。
ご無沙汰しております。
宣伝をさせて頂きます。

東大を出たけれど 麻雀に憑かれた男 [単行本(ソフトカバー)]
須田 良規 (著)
価格: ¥ 1,260 通常配送無料


来たる11月21日に、
昔近代麻雀で連載しておりましたコラム版「東大を出たけれど」が、
ついに単行本で発売されることになりました。

連載時からお世話になっていましたカネポン(金本ですw)には、
本当に感謝です。

漫画の単行本はすでに読まれた方も多いと思いますが、
コラムの方はこうやってまとめて出るのは初めてですので、
是非皆さんに手に取って読んで頂きたいです。

「麻雀放浪記」「病葉流れて」などの私も大好きな麻雀小説のように、
活字の麻雀読み物として、皆さんも楽しんで頂けたらなあ、と思います。

amazonで予約開始しております。
どうぞよろしくお願いいたします。
ひかりTVの「イキモノ日本紀行」という番組で、
ちょろっとトークゲストをさせていただきました!
http://www.hikaritv.net/hikaritvch/ikimono/

10月12日(金)22:30~

日本のイキな心意気を伝えるモノ、イキモノを紹介していく番組です。
何名かのゲスト様の中の1枠ですので時間も短いですが、
視聴できる方は是非ご覧下さい!

私の考えるイキモノとは、何でしょう?