行政事件訴訟法の訴訟要件のポイントその3
本試験まであと186日。
昨日は訴訟要件についての記事を2つ書きました。
その1はこちら
その2はこちら
その2の記事の中では、狭義の訴えの利益についてはふれませんでしたので、今回はその話から。
狭義の訴えの利益に関する判例も、事案と結論をしっかり押さえていくことで十分対処できます。
本試験問題も、処分性や原告適格に関する問題に比べると、そこまで問題文が長くはないので、事案と結論がわかっていれば十分でしょう。
ひとつ注意を要することとしては、開発許可の取消訴訟に関する判例です。
2014年問題18(1)では
「都市計画法に基づく開発許可の取消しを求める利益は、開発行為に関する工事の完了によっても失われない」
という問題が出されています。
当時は「市街化区域」における開発許可に関する取消訴訟しか、最高裁判決が出ていませんでした。
「市街化区域」では原則として1000平方メートル以上の土地の開発についてのみ、開発許可がなければいけないとされています。たとえば、建物の建築のために造成工事を行うにあたり、その敷地が1000平方メートル以上の場合開発許可が必要になるのです。
そこまで大規模なものでない場合は、開発許可は必要ではなく、建築確認をとれば建物の建築は可能です。
だから、開発許可を適法にもらうことは、開発工事を適法にスタートさせ、工事を進めていくための要件でしかありません。
つまり工事が終わったら、開発許可の適法性を争う必要もなくなります。
したがって、開発許可の取消し訴訟は、工事終了とともに狭義の訴えの利益を失い、却下判決が出されることになるのです。
ところが2015年に市街化調整区域における開発許可についての取消訴訟の最高裁判決が出されました。
市街化調整区域は、そもそも建物を建てることを原則禁止するとされたエリアです。
その前提となる開発行為についても、開発許可がなければできません。
ですから、開発許可自体は、単に開発工事をするための要件ではなく、その後建物を建てることができるところまでをカバーするものだと評価できます。
したがって、開発工事が終了してもなお開発許可の取消しを求めて争う狭義の訴えの利益は残っていると考え、訴えを却下することはしないのです。
以上を前提に考えると、
「都市計画法に基づく開発許可の取消しを求める利益は、開発行為に関する工事の完了によっても失われない」
という問題は、今後出されるのであれば、「市街化区域」「市街化調整区域」のどちらの話であるかを盛り込んでくるか、それともこの文章のままで、「市街化区域の場合は失われるから×」という答えを出させるかというパターンが考えられます。