行政事件訴訟法の訴訟要件のポイントその2
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本試験まであと187日。
今日は珍しく2回更新です。
というのも訴訟要件の話が長くなったからなんですね。
その1はこちら。
訴訟要件のなかで、判例知識が問われるのは①処分性 ②原告適格 ③狭義の訴えの利益についてです。
なかでも①と②は択一問題で出された場合、選択肢の文章が長めになる傾向がありますね。
たとえば「処分性」に関する判例知識を問う2016年問題19をみると、ひとつの選択肢が180字くらいのものが5つ並んでいます。
これをひとつひとつしっかり読んで正誤を判断するとなると、なかなか時間がかかることになりそうです。
だから判例の勉強をするときに、まず事例を確認する。
幸い重要な判例について同じような事例はありません。
そして処分性を肯定したのか否定したのか、という結論を把握する。
この2点を最低限把握しておくことで「時短」できます。
ひとつ実際にやってみましょう。2016年問題19(3)を取り上げます。
「(旧)医療法の規定に基づく病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められており、これに従わない場合でも、病院の開設後に、保健医療機関の指定を受けることができなくなる可能性が生じるにすぎないから、この勧告は、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たらない」
長いですね。
でも「(旧)医療法の規定に基づく病院開設中止の勧告は」のところで、「あの判例だな」ということに気が付いてほしい。
「勧告」とありますので、先を読むまでもなく「行政指導」です。
「行政指導は任意がキホン」ですので、処分性は認められないのが原則です。ただ病院開設中止勧告は例外的に処分性を認めました(最判平17.7.15)。というのも、これに従わないと、保健医療機関の指定をほぼ確実に受けられず、その結果病院の開設を断念せざるを得ない状況に追い込まれるからです。
まず「(旧)医療法の規定に基づく病院開設中止の勧告は」のところで、ここまで思い出す。
そして、文末を見ます。
すると「この勧告は、行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たらない」と書かれていますね。
ここで判例と結論が違うことがわかれば、この選択肢は誤りであることがわかりますね。
原告適格に関する2014年問題17でも同じようなテクニックが使えます。
「定期航空事業に対する規制に関する法体系は、飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするものにとどまるものであり、運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることになる者であっても、免許取消訴訟を提起する原告適格は認められない」
これも長いですね。
原告適格に関する判例知識を問う問題で、「定期航空事業に対する規制に関する法体系は」という文章から、新潟空港事件(最判平元.2.17)であることがわかります。
ていうか、わかるようになりましょう。
原告適格+定期空港事業免許=新潟空港事件
こんな感じで押さえておく。
ここがわかったら「あ、新潟空港事件では周辺住民に原告適格を認めたよな」という結論も思い出せるようにしておきましょう。
この選択肢は「免許取消訴訟を提起する原告適格は認められない」と書かれていますので、この時点で誤りであることがわかります。
事案によっては、原告の立場によって原告適格を認めたり、否定したりする判例もありますね。
ですから、念のため「誰に関する原告適格」に関する問題なのかもチェックしておきましょう。
この問題では「航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることになる者」という部分にも目配りしておこうということです。
このように、事案と結論を押さえておくことで、簡単に判断できるのが、行政事件訴訟法の訴訟要件に関する判例問題なんですね。
ここは「時短」が可能なところなので、ぜひこの記事の解き方を参考にしてみてください。
渋谷駅前本校の講師控えスペースに置かれていたたばこ。
「わかば」ってまだあるんですね。
たばこを吸っていた頃、「しんせい」とか「わかば」は「超大人のたばこ」というイメージがありました。
もう吸わなくなって20年近くたちますが、なんだか懐かしかったので、思わず写真を撮った次第です。