今日、帰りの駅で、1分程度で、降りた1番ホームからとなりの2番ホームへ横移動するっていう時、
目の見えない中年の女の人がいました。
その人は、杖をついて、黄色いぼこぼこのある線をたどって2番ホームの電車に乗ろうとするのです。
しかし、うまくいきません。
早く行かなきゃということで、電車の前で、あっちを向いたり、こっちを向いたいりしています。
私は、腕をつかんで「こっちだよっ」とぶっきらぼうに言って、一緒に2番ホームの電車に乗った。
どうにか間に合い、無事に電車に乗れた。
いつもの私のようにちゅうちょして、どう声をかければいいんだろう、とか、いつ近づけばいいんだろう、とか考える暇はありませんでした。
必然的に体が動いてやりました。
彼女を電車に連れ込むと、私は何のあいさつもせず、黙ってすぐとなりの車両に早歩きして行って、
空いていた席にドカッと座った。
なぜか涙が出てきた。細い涙じゃなくって極太の涙。
どうしてだろう、よくわからなかった。
もし、泣くとすれば、あっちじゃないか。
なぜ、私が泣いているんだろう。
なぜ泣いているのか、理屈っぽく考えようとするけれど、うまく考えられない。
勝手に出てくるなみだ。
この半年間、一度も泣いていない。
赤ちゃんの時以来、泣いたのは、数に数えられるくらい少ない。
おかしな人間だ。
いや、おかしくなった人間に違いない。
斧を振り回していれば、それで充分だった。
涙が出てくると、大切な斧がどこかに行ってしまった。
それに気づいた途端、また斧が欲しい、必要なんだ、そう思った。
あの斧を振り回しているのが私なんだ。
あれが私だ、あれがなきゃだめなんだ。
・・・
家に帰って、あたたかいスープを飲んだ。
焼き豆腐とにらと卵が入っている。きれいな色。
あたたかい料理とは、こんなにもおいしいんだ。
うれしいな。
素朴な喜び。
私は料理を作ってくれた人に初めて感謝した。
・・また斧がどこかに消えていった・・・。