論文:大都市制度改革  その2 | 宮沢たかひと Powered by Ameba

■国家戦略としての大都市構想

 

 政令指定都市の指定を受けるには、自治体として発展を遂げ、人口が増えて産業および文化が栄え、さらに県と市の意見が一致していること、十分な税収が見込まれる等の条件が要求された。しかし、認定基準に見合った市を政令指定都市にしたのであって、将来を展望し、国家として戦略的に「政令指定都市」にしたのではない。

 未来の大都市は、国家戦略として重要な場所に設定すべきと考える。現状では大都市でなくても、アイデア、カネ、ヒトをつぎ込むことにより、国家にとって重要な大都市に生まれ変わらせればよい。以下にその骨子を挙げ、詳述する。

 

①   災害時代替首都としての大都市

 

 まず、東京以外の大都市の役割は、いつでも首都としての役割を担えることと考える。一極集中の弊害が指摘されてから長いが、危機感のなさゆえか、遷都構想も進んでいない。昨年3.11の大震災後原発事故がもっと甚大な被害を及ぼしていたら、東京が壊滅していたかもしれないのに、首都機能を代替できる大都市は日本のどこにもない。もちろん大阪は第2首都の最有力候補だが、現在の大阪は首都としては不十分である。もう3つくらい、日本国の中に首都候補都市が分散して存在し、首都ポートフォリオを構築していれば、いつ、どこの大都市が壊滅的被害を受けても、日本国自体が危機にさらされることはないはずである。

 

②   日本全国に大都市を構築

 

 別紙地図に示したように、従来の政令指定都市とは異なる発想で、大都市を構築する。

 大都市を3段階に分ける。

 

(A)従来から存在し、確立された大都市(東京地区、大阪地区、名古屋地区)

(B)中堅で発展が期待される大都市(従来の政令指定都市に相当;札幌地区、仙台地区、新潟地区、北九州地区)

(C)地域発展のキーとなる新設大都市(釧路地区、函館青森地区、金沢富山地区、秋田地区、長野松本地区、新宮地区、岡山高松地区、広島松山地区、松江地区、高知地区、熊本地区、宮崎地区、那覇地区)

 

 それぞれ「地区」と記載されているが、これは従来の県境にとらわれず、近接する都市は合併して一つの大都市を構築することを意味する。例えば、

 ●東京地区:東京、さいたま市含む埼玉県南部、川崎市、横浜市、千葉市を含む

 ●大阪地区:大阪市、神戸市、堺市を含む

 ●名古屋地区:名古屋市、四日市市、豊田市を含む

などである。主に経済的機動性を上げるために合併した方がよいと思われるものは一緒にした。一方で、本プロジェクトでは都道府県境自体が消失するので、都道府県同士で縄張り争いをするという構図はなくなる。

 

その設置条件と意味は、

1.   従来の都道府県の県庁所在地としてではなく、それぞれの周辺市区町村をサポートする大都市を設定する。

2.   新設大都市には、初期10年くらいは国家が経済的特別優遇措置や資金援助を行い、ヒト、モノ、カネが集まるようにする。

3.   都道府県制度を廃止する。従来の市町村は近隣の大都市と提携関係を持つ。これは道州制に相当するが、先に境界を決めるものではなく、どこの大都市と提携するかは市町村の選択に任される。

4.   各大都市は自助努力、創造的発展を要求され、国内はもちろん、海外の大都市とも競争をしなければならない。努力の足りない大都市に対しては国家からの補助が減額される可能性もある。

5.   中堅や新設大都市については、発展するまでは国家の補助が期待できるが、10年の一定期間内に自立する義務を負う。

6.   市町村も存続をかけて自助努力を続けなければならない。

 

③   大都市中心の地域活性化と過疎化対策

 

 従来の市町村はいずれかの大都市と提携する。

1.   この提携関係は固定されたものではなく、市町村がどの大都市と提携するかは市民の自由意思に任される。

2.   市町村自体も、自助努力が不足し、創造性や発展性がなく、税収や生産性が下がれば近隣の市町村に飲み込まれる可能性もある(企業で言うM&A)。つまり、公務員といえども相応の努力を要求される。

3.   かつての戦国時代のごとく、市町村間の自由競争を促進することにより、市町村合併が頻繁に起こり、場合によっては大都市に匹敵する都市が生まれる可能性もある。

4.   このような市町村の合併により否が応でも公務員の削減となり、コスト削減ができる。