たるみ治療器デンシティの評価 | 美容外科開業医の独り言

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当院で導入した新しいたるみ治療器デンシティDENSITYですが、患者様の評価が高く、連日施術希望者がいらっしゃる状況が続いています。やや予約が取りにくくなっておりますが、何卒ご容赦ください。

 

少し前にもブログで少し理論には触れましたが、ちょっと今回はマニアックなお話。

 

デンシティは従来のモノポーラ容量結合型RF機器サーマクールと同じ機構を持ち、深部まで作用して三次元的にたるみを引き締めますが、それだけではなくバイポーラ(双極式:2極間に電流を流す)という浅い部分に熱を生じさせるチップ(Hi-Tip)を有しており、ちょうどウルセラなどのHIFUが筋膜(SMAS)と皮下や真皮を焼灼するのと同じく2層に熱作用を及ぼします。2つのレイヤーを加熱することでよりダイナミックに引き締めること、直後の作用が強いことが特徴です。高周波機器で2つの層へアプローチできるのはデンシティだけです。いわゆるサーマクールコピー製品ではないのです(だからこそサーマクールとの使い分けもでき、引き立てられます)。新しいたるみ治療機器の分野になり得ます。

施術を受けられたほとんどの患者様は直後から顔が引き締まったのを自覚されますので、鏡でお見せしています。

真皮や皮下の一次収縮という熱によるダイレクトな線維組織の収縮と軽い炎症によるものであり、この炎症が収まると少し効果は落ち着きますが、引き続き生じる創傷治癒機転(傷を修復する作用)によってコラーゲンなどが増加し二次収縮が生じ、引き締め効果を得ます。

 

サーマクールをはじめとしたこれらモノポーラの容量結合型RF機器の特徴は電流としての高周波(RF)を深くまでしっかりと流して主に線維性結合組織をジュール熱で引き締めることです。これによって他では得られない三次元的な収縮を生じさせるのです。

ではなぜデンシティは浅い層に熱を生じさせる必要があるのでしょうか。そしてこれらは従来のバイポーラ高周波機器やソフウェーブなどと何が違うのでしょうか。

 

2つの特徴があります。

 

ひとつめ、容量結合型という構造への理解が必要です。容量結合型はインピーダンス(電気抵抗みたいなもの)の合致によって表面に電流を流さず深部に電流を生じさせます。これがないと深部へ高周波は電流としては流せません。モノポーラの容量結合型RF機器の最も重要な構造が容量結合というものを生み出すコンデンサ:誘電膜です。

さて、本来バイポーラ機器というのは最短距離を通るので、通常皮膚表層は少し濡らしてもインピーダンスが高く体表を電流が流れがちです。ここに容量結合が生じると従来バイポーラで通るべき電流の道よりも深い層に流れていくことになります。深さ、つまりは真皮を含めた深層を確実に加熱するバイポーラ。

二つめ、単純にバイポーラで照射しているのではなく、モノポーラとバイポーラ両方を1つの照射でおこなっています。電流をいくつかのパルスで発振して、モノポーラでの照射ののち最後にバイポーラ照射をおこなっているのです。このパターンが組織学的に最も深部へ熱が発生することがわかっています。

以上によって通常のバイポーラよりかなり深く電流が発生、加熱します。さらにはソフウェーブのように限局した層への強い熱ダメージではなく、広がりを持つので即時の三次元的な引き締め効果が生じます。これは肌質の改善も期待できるはずです。

 

難しい話となりましたが、理論はこんな感じです。

 

具体的にどれくらいのエネルギーで、どういうパルスの組み合わせで発振するのかの設定などを、昨年依頼されて試行錯誤しつつテストしてきました(今はソフトウェアの設定上簡便に表記されブラックボックスになっています)。

また構造的な問題についても初期からアドバイスして、トリートメントハンドピース、チップの改良を進めましたが、機器オタクの私にとって、まだまだ改良の余地はあると確信しており、実際に使用して新たな発見をしていきたいなと思います。

 

来月の形成外科学会総会・学術集会におけるランチョンセミナーでこの辺りの話はもっと分かりやすく、そしてさらにまだまだ書ききれない(一般の人には難しすぎる)特徴などを講演予定です。

オタクマインドがくすぐられる〜