脱毛は医療行為:脱毛だけではありません | 美容外科開業医の独り言

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エステサロンでの脱毛で熱傷が生じ施術者が逮捕されたとの報道がされています。

フィルターを付け忘れたとの見解。それだけでしょうか。医療脱毛でも熱傷は生じ得ます。正しく照射していても、です。もし付け忘れだとしても、全て施術者の失念のせいにして機器は安全、と言っているかのようです。何とも解せない報道。

 

脱毛は医療行為です。これは厚労省の通達もされています。

但し、毛根が永久に破壊されないなら細胞への傷害はないから医療行為ではないとの解釈がなされています。ホームケアの脱毛機器と同じ扱いです。

そのためエステでは永久と謳ってはいけないことになっています。そして熱傷が起きたら、傷害罪に必ず問われます。

しかし、その実態は。。。。

 

報道では、エステ経営者、施術者ともに脱毛が医療行為とは知らなかったと供述しているとのことです。驚愕です。もしお客さんに対して、また元通りに毛は生える一時的脱毛であることを明示していれば問題にはならなかったかもしれません。しかしほぼ全てのエステでは永久であること(終わりがあること)や毛の量が減ることを説明していると思います。大っぴらには広告できないけど、実際には説明している、そして施術者は特に資格のないエステティシャン。極論を言うと、近所の主婦が時間があるからパートしようとエステで働き始めて、ちょっと説明聞いて照射するようなものです。

 

身体に傷を付ける可能性がある行為は資格が必要です。顔剃りだって理容師の資格がないとできません。一般の人が顔剃りサロン開店してもいいのなら理容師団体は大声挙げて抗議します。きちんと勉強して国家資格を取っているから出来る行為ですから。肌に傷を絶対に付けない特殊なカミソリがあるからエステでも顔剃りできます、でもたまたま刃の付け方を間違えたから首を切ってしまいました、となったら傷害罪で捕まります。でも理容師が誤って肌に傷を付けても、資格者であるからこそ故意でなければ大きな罪には問われません。

つまりエステティシャンがどんなに勉強しても、そしてどんなに良い人であっても、医療行為は出来ませんし、傷つけたら傷害罪です。そもそも最近は医師でさえも通常診療で予期せぬトラブルがあると警察が来て傷害罪で逮捕までに至ることもある時代です。それが医学的に見て正当な行為かどうかの高度な判断さえ裁判では問われます。100%安全な治療などないのに。これが国家資格を与えられた専門職である責任でもあり、特権でもあります。それを無資格者がおこなって、かつトラブルになっても罪に問われないとなると、私たちの医師免許は何なんでしょうか。

 

つい最近もHIFU(ハイフ)機器は医療機器であると消費者庁から意見書が出たばかり。

世界広しと言えども、これらのことを放置しているのは先進国では日本だけです。

縦割り行政で厚労省なのか経産省なのか、責任の所在は分からないですし、そのため消費者庁は両方に意見書を出したのですが、今回の脱毛に関しては、果たしてどうなるのか。。。。

 

 

 

ちょっと宣伝。私と皮膚科学の権威である宮地良樹先生で対談した内容が本になりました。一般の人向けです。なかなか面白い内容になっていると思います。

 

 

 

この対談集が刊行されたのは、実は医師向け専門書「最新美容皮膚科学体系」全5巻のうち第1、2巻が刊行されたのを記念して、一般の人向けにも何か本をということで、急遽企画が決まったのです。

この専門書は私と宮地先生で編集を務めました。大きな重圧を感じながらもやっと刊行されたのです。

業界向けのほぼボランティア的な仕事はまだまだ沢山請け負っております。