指導者として人物を磨く・論語(153)
「論語」が目指す「君子」たる人物 ⑦義に之れ與に比う
子曰わく、君子の天下に於けるや、適(てき)も無く、莫(ばく)も無し。
義に之れ與(とも)に比(したが)う。
里仁第四 仮名論語41頁5行目です。
伊與田覚先生の解釈です。
先師が言われた。「君子が政治にあたる時には、是非ともこうしなければならないと固執することもなく、絶対にこれはしないと頑張ることもない。ただ道理に従っていくだけだ」
「子曰わく、君子の天下に於けるや、適も無く、莫も無し」・・・孔子の言った言葉です。君子の世におけるあり方は公平で有り、一方的には肯定もなければ、一方的な否定もない。「義に之れ與に比う」・・・ただ筋の通った事、それに従うまでだ。
この章は、短い章ですが、なかなか難しいですね。
色々な本を読んでも納得のいくような解釈をしたものがありません。
君子が天下のことに対するには、逆らうこともなければ、愛着することもない。主観を去って、ただ正義に従っていくだけだ。肯定もなければ、一方的な否定もない。ただ筋の通ったことだけに従うのです。
「適」とは、何が何でもいいものはいい。「獏」とは、何が何でもいやなものはいや。というような、片意地を張った態度と考えてもらってもいいでしょう。
「適」と「獏」は、色々な説がありますが、ここでは、伊與田先生の解釈の、「君子が政治にあたる時には、是非ともこうしなければならないと固執することもなく、絶対にこれはしないと頑張ることもない。ただ道理に従っていくだけだ」という以上の解釈はありませんね。
つづく
宮 武 清 寛
論語普及会