『今日何があったか、ここに書いていくね』
ってまず打って雅紀に見せると、雅紀は何で?って感じに首を傾げた。
こういうとこ。
そう、こういうとこだよって、また思う。
雅紀は俺を信じるって言ってくれた。
俺がその言葉を信じられるのは、俺の、一見ただのこの変な行為に意味があると即座に対応してくれるからだ。
今だって別に、『何で?』って声に出して聞けばいい。
俺の声が出ないとかでもないのだから、実際意味不明だろう。
でも、意味不明な俺の行為に意味があると信じて、声に出さずにいてくれるのだ。
そうだ。雅紀とはこういう男なのだ。
なのに俺は。
………何を躊躇っていたのだろう。
最初から、言えば良かったんだよ。
最初から相談していれば。
そしたら雅紀はきっと、オレンジくんを大事にしながら、俺のことだって信じてくれた。
今してくれているみたいに。
結局俺だよ。
ちゃんと雅紀を、この目の前のお天使を信じていなかったのは。
首を傾げたまま声を出さない雅紀がまじで愛し過ぎて、それにごめんって気持ちが合わさって、思わず俺はその唇にキスをした。
コンビニの駐車場なのに。つい。
いやもう、だってな?
仕方ないって。まじ好きだから。
びっくりした雅紀がしょーちゃん⁉︎って文字通りびっくりして、そんな雅紀に笑った。
そして俺は、スマホに今日大学に行ってからのことをぽちぽちと打ち始めた。
うん。最初はね。
最初は大人しく待っていた。待ってくれていた。待っていられたんだよ、雅紀は。
俺が打つのを運転席で、時々ペットボトルのお茶を飲みつつ待っていた。
でも少ししてどうやら待っていることに飽きたらしく、俺の手元を覗き込んできた。
そうするともちろん必然的に顔の距離が近くなる。
ちかって口をぱくぱくしながら笑うと、雅紀はいいじゃんって口をぱくぱくして、さっきのお返しとばかりにちゅってしてきた。もちろん俺の唇に、だ。
ああ、もう。
あああああもおおおおおう。
あーーーーーもーーーーー。
雅紀がかわいすぎて打つのが全然進まねぇ‼︎
雅紀が大切に育ててきたオレンジくんが俺をコロそうとしている?疑惑を雅紀に話すという、結構緊迫した状況のはずなのにこんなんで。こんな風で。
俺はさっきの恐怖にもこの先の不安にも押しつぶされることなく、雅紀にちゃんと伝えることができた。
雅紀は俺が打ったメモを読んだ。
読んで、読み返しているのか、長く沈黙した。
いや、単に俺が長いと感じただけなのかもしれない。
普通に考えたら、あり得ないことだから。
植物に意思と感情があり、思考することもできる、なんて。
オレンジくんにはその可能性があるなんて。
急にそんなこと、言われてもな。
沈黙は、判定が、審判がくだる瞬間を待っているかのようで、落ち着かなかった。
『明後日森田さんのところに一緒に行こう』
長い沈黙の後、雅紀は俺のスマホにそう打った。
『殺気とか、オレも気になる。どういうことか説明してもらおう』
頷いた俺に、次はそんな文字。
うんって、声には出さず、もう一度頷く。
ひとまずの安心。
雅紀から、オレンジくんはただのオレンジだよ。という言葉が発せられることがなくて。
『とりあえず明後日まで、オレンジくんの話をする時は、スマホでしよう』
頷く。
『しょーちゃんはもう絶対1人でオレンジくんのところに行っちゃダメだよ』
もう一度頷く。
頷いてからスマホをもらって、俺は『すき』ってぽちぽちして雅紀に見せた。
それを見た瞬間、珍しく雅紀がぶふって吹き出した。
そしてまた、俺からスマホを持って行って。
『もしその話が本当なら、オレがちゃんとオレンジくんを処分するから』
………雅紀。
大切なはずのオレンジくんに、スパッと切れそうなほど、迷いのない言葉。
それにドキッとして上げた視線の先。
本当に俺と同じ人間かよってぐらい、おそろしくキレイな雅紀が、俺の方をじっと見ていた。
全然ホラーにならない
今日5月21日は岡本健一くんの誕生日(笑)
と、わたくしみやぎの誕生日。
プレゼントに米たくさんください🎁