花 222 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

腐女子向けのお話ブログです。

つっ………疲れた。





とても、ものすごく、非常に、めちゃくちゃのめちゃに、疲れた。


多分今日は俺のパオンがパオンできない。しない。


それぐらい疲れた。


もうぐったりだ。





某有名デパートの外商・長野さんが、ジュラルミンケースに持って来ていた数々の腕時計は、なんと恐ろしいことに、世界五大ブランドの腕時計で、その五大ともがそこに入っていた。





ケース内の腕時計の合計額で家が2軒ぐらいは余裕で建つのではないだろうか。


時計ひとつでうん百万円だ。





しかも雅紀は言った。





『ちゃんと好きなやつ選ばないと、この中から高い順に3個しょーちゃんに買うからね』と。





ケース内の一番安いのだって俺からしたらすごい金額なのに、高い順に3個だと⁉︎





ちょっとパパン‼︎相葉パパン⁉︎


この子の金銭感覚まじばかあほ通りこして狂気ですよ‼︎狂気‼︎


パパンの教育間違ってますよ⁉︎


もう一度そこ教育し直した方がいいですよ⁉︎





って、すごく言いたい。ものすごく言いたい。





でも、きっと言ったところで………なのだろうと、俺は腹を括って時計を選んだ。





長野さんに渡された白い手袋をはめて、でも、長野さんの丁寧な解説はお断りして、デザインとどれが俺に似合うかの意見のみで。





だって説明なんか聞いたら、どこのどんなやつなんて聞いたら、ましてや値段なんか聞いてしまったら、絶対絶対絶っっっっっ対選べないだろ‼︎


腕時計の世界五大ブランドだぞ⁉︎


ブ◯ゲ、パテッ◯フィリップ、ヴァシュ◯ン・コンス◯ンタン、オー◯マ・ピゲ、ラ◯ゲ&ゾ◯ネだぞ⁉︎


呪文かよ‼︎


まじ舐めんな俺の極小キャパ‼︎





悩みに悩んでふたつにまでしぼり、最終的にそのふたつからひとつを雅紀に決めてもらった。





ふたつともいいよ?って言う雅紀の口を、いっそキスで塞いでしまおうかと思ったよ、俺は。


雅紀くん、ちょっと黙ろうかって。


手で塞いでもすぐ払われるだろうから、絶対払わないキスで。





我ながらナイスアイデアだと思ったが、それを長野さんの前でやる勇気はもちろんなかった。





ひとつでいいです。お願いだからひとつにして下さい。





懇願して懇願して懇願して拝み倒して、しょうがないなあってひとつにしてもらった。





『今日から毎日、ちゃんとはめること』





ぴっかぴかに光る世界五大ブランドのひとつの腕時計がはまる俺の左手首を眺めて、雅紀は至極ご満悦だった。





俺としては………。


俺としては‼︎今すぐ超頑丈なバイオ◯ザード金庫を買って来て、そこに入れて保管しておきたい‼︎


手首切り落として盗まれたりしないよね⁉︎


それにこんなのはめて農作業とか絶対無理だって‼︎


もしうっかり傷なんかつけてしまったら‼︎


考えるだけでこわい‼︎俺のパオンがギャオンと縮む‼︎





『とてもお似合いですよ、櫻井様』





そんな俺の心をよそに、長野さんは最後シトラスの香りのように爽やかにそう言い残し、シトラスの香りのように爽やかに帰って行かれた。





「ありがとう、雅紀。本当に。俺、まじ一生大事にします」
「うん」





まじ一生、大事に。





それは腕時計のことであり。


それは………。





ずしりと感じる重みは、時計の重み、聞いてはいないが安くてもうん百万円だろう金額の重みで。





雅紀の想いの、重み。





俺だけあのお三人と違ってつなぎじゃない上に、これだけの金額。


の、意味を、俺はこの重みと一緒に、しっかりと受け止めなかればいけないのだ。





俺は、俺の隣でご満悦な雅紀をぎゅっと抱き締めて、ありったけの気持ちを込めてキスをした。





「ただいまー。まーくんいるー?」
「おう、にいちゃん、ケーキ買うてきたでー」





キスしてキスしてしまくっていたら、である。





玄関から声。近づく足音。


風間さんと横山さんの。





んのおおおおおおう‼︎





ここで⁉︎このタイミングで⁉︎





俺は普段の俺からはあり得ないマッハな速度でソファーに組み敷いていた雅紀から離れて起き上がり、雅紀をぐいっと引っ張って起こし、雅紀の乱れた髪とちょっと乱れた服を直し、自分の髪と服もささっと直した。





雅紀の超絶不満そうな顔が怖いけども‼︎


目‼︎目がすわってるけども雅紀くん‼︎





でも良かった致し始める前で‼︎って心底安堵しながらも、『後でな』って耳打ちを忘れなかった俺よ、ナイス。





いや、何か言っておかないと、後できちんと致しますよって約束をしておかないと、消化不良な雅紀が風間さん横山さんの前で大きな爆弾を落としそうで。





「おかえりなさい」
「………おかえり」





どたどたばばんと開いたドアに、平静を装い言うと、そこにはいつもよりパリッと決まったスーツ姿の風間さんと、いつも通り黒つなぎに頭タオルの横山さんで、横山さんは手に白い箱を持っていらっしゃった。





どうかどうか、雅紀のパオンをパオンパオン致そうとしていたことがこのふたりにバレませんように‼︎


雅紀が爆弾を落としませんように‼︎





神さま‼︎まじでお願いします‼︎










遊んでばっかで全然進まない💧

今日も米お待ちしてます✨