花 198 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

腐女子向けのお話ブログです。

「聞いてない」
「え」
「聞いてないで、にいちゃん」
「えと」
「どうゆうことなん」
「あの」
「まーくんとチュウってどうゆうことなん、にいちゃん」





じりじり。


じりじりじりじり。





ここはリーフシード事務所。





つい先ほどまで風間さんとふたりきりだったはずなのに、今は横山さんも居て、俺はその横山さんにじりじりと距離を詰められている。


ばばんとドアが開いてそのまま俺に一直線で、逃げるより先にどどんと目の前。





そして雅紀はまだ戻って来ていなくて、風間さんに俺を助ける気配はZERO〜。





「だから、それは」
「付き合うとるんか?」
「………いえ、あの………付き合っては」
「付き合うとらんのにチュウしとんのか」
「………そ、そういうことになります、ね」





俺はもう雅紀のことを『そんな風に』好き、ではあるが。





「はあああああ?何でやねん‼︎何で付き合うとらんのにチュウなんかしとんねん‼︎」
「なっ………何でってそもそも横山さんのせいじゃないですか‼︎」
「何でにいちゃんとまーくんのチュウが俺のせいやねん‼︎」
「横山さんがチュウしたかとかできるかって言ってきたんでしょ⁉︎」





あまりの勢いに思いっきり言い返して我に返った。





やばい。


この人、暴走族の元総長だ。


嘘か誠か、今もなおその一声で200人ぐらいは集まるって。





怒らせたらどうしよう‼︎って言ってからめちゃくちゃ焦ったのに、横山さんはいともあっさり。





「ああ、せやな。言うたわ。それ」





自分の発言を思い出し、すんっと落ち着いてくださった。





よかった。覚えていてくれて。落ち着いてくれて。





俺はまだ海には沈みたくない。





それこそ唇がくっつくんじゃないかというぐらい詰められていた横山さんの顔が、すっと離れて行ってくれた。





「横山さんに言われてたそれを雅紀に知られて、してみてって言われたんですよ」
「まーくんがにいちゃんに言うたん?」
「そうです。できないの?って」
「なるほどな。そんなん言われたら………するわな。にいちゃんは」
「そうですよ‼︎本人がいいって言ってる以上、できない理由、しない理由がありませんから‼︎」





ぐぐっと右手で握り拳を作り、思わず力説をした。





だってそうだろ⁉︎そうでしょ⁉︎


雅紀が‼︎あの雅紀が‼︎あのお天使顔でキスをねだるんだぞ⁉︎


どうやったら断れるって言うんだ⁉︎





「………え、それ俺や風間や松潤相手でも言えるか?」
「………はい?」
「チュウしてええよ言うたらにいちゃん俺にできるん?チュウ」
「は、はいいいいい⁉︎何言ってるんですか、横山さん‼︎そんなのできるわけないでしょ‼︎………あ」
「………ほお」
「………あ、あの」
「つまりまーくんやからっちゅうことや」
「えと」
「まーくんやから、してって言われてしたっちゅうことやな」





つい反射的に、横山さんにキスはできないと盛大に拒否っただけに、もう。





「………はい」





認めるしかない。降参。





そうです。雅紀だからです。


雅紀だからできたんです。雅紀だからしたんです。





「もう自分ら相思相愛やん」
「………え?そ………そうなんですか?」
「何やそのおもんない返事は」
「いや、だって………」





正直。


俺には雅紀の気持ちは分からない。





嫌われてはいない。どちらかというと好意。


それは分かるけど。





口ごもる俺を、にやりと横山さんが見た。





………それ、悪い顔ですけど。





「なあ、にいちゃん。毎日?毎日しとんの?チュウ」
「………ええ、まあ」
「どんな?どんなやつ?」
「………どんなって」
「チュなのかチュウなのかブチュウウウウウウウなのかブチュチュチュチュチュウウウウウなのか」
「………すみません、最後ふたつの違いが俺には分からないんですけど」
「大丈夫や。俺にも分からん」
「え」
「イメージやイメージ。何となくや。深く考えんでええて」





イメージって。





これって、答えなければいけないのだろうか。


横山さんの悪い顔でにやりなのがはっきり言って信用ならない顔だし、なかなか恥ずかしいのだが。





カタカタカタカタ………





風間さんのタイピングの音は止まっていない。





だがしかし。


駄菓子菓子。


絶対聞いてるよね、高橋隆。





「どれ?なあどんな?」
「えーと………多分」
「多分?」
「………全部、です」
「は⁉︎全部⁉︎全部しとんの⁉︎ チュもチュウもブチュウウウウウウウもブチュチュチュチュチュウウウウウも⁉︎」
「………はい。多分。横山さんと俺のイメージが大きく違わなければ」
「それを毎日⁉︎」
「………はい」
「それいつ⁉︎朝⁉︎昼⁉︎夜⁉︎」
「え、朝も昼も夕方も夜も寝る前も………です」
「はあああああ⁉︎朝も昼も夕方も夜も寝る前も⁉︎ チュからブチュチュチュチュチュウウウウウまで⁉︎」
「………はい。俺今絶賛ポンコツキャンペーン中なので、しょーちゃんの仕事はキスねって。雅紀が」
「はあ⁉︎何やそれ‼︎何なんそれ‼︎」
「す、すみません。俺今本当にポンコツで………」
「ちゃうちゃう‼︎そこやなくて‼︎」
「………?」





途中までは確かに悪い顔でにやにやしていたのだが。横山さんは。





おもむろに頭に巻いてあった白いタオルを引っ張って取って、ガシガシガシガシと頭を掻いた。





「めっちゃ好きやん‼︎」
「………何が、ですか?」
「まーくんや‼︎まーくんめっちゃにいちゃんのこと好きやん‼︎」
「………そうでしょうか」
「え、そうやろ。どこからどう見てもそうやろ。何でそんなテンション低なんねん」
「いや、分かんなくて。俺はすごい好きなんですけど、雅紀のこと。でも、雅紀がどういうつもりでしてって言ってるのか。だから、俺の気持ちを伝えていいのか悪いのか………」





雅紀は頭がいい。


それは確かだと思う。思っている。


俺の知らないことを色々、種のことも、生きるということの何たるかも、すごく色々知っている。


でも雅紀はちょっと………だいぶ、人と感覚がズレていて。天然で。





だから。





「………にいちゃんて」
「はい?」
「かしこなんちゃうん?」
「かしこ?」
「勉強出来て高学歴ちゃうんかってことや」
「え、俺ですか?俺は、雅紀や風間さんに比べたら全然、ものすごく普通だと思います」
「あいつらはあほや」
「え」
「あいつらはあほの域のかしこや。あんなんと比べたらあかん」
「………そ、そうですか?………いや、そうですね。あほほど賢い。本当ですね。すごい。言い得て妙だ」
「まああれか………にいちゃんはボケ倒しやもんな。櫻井ボケ倒し」
「………はい?」





何故だろう。





最終的に俺までディスられている気がするのだが。





俺は。俺の名は櫻井ボケ倒しではなく、SHO MOCHI SAKURAIです。





かなり本気でそう言ったら、横山さんは大爆笑だった。ひーひー笑った。





笑われている意味が、理由が、俺にはよく分からなかった。










関西弁監修:プロデューサーK


久しぶりにちょびっとだけどお直しされた✨


基本もうほぼお直しされない名古屋弁人{emoji:077_char3.png.ゲラゲラ}