花 195 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

腐女子向けのお話ブログです。

鷹匠の高橋さんは、しばらくの間鷹のタカを自分の腕と山の木々を往復させた。





タカが木の近くに飛んでいくと、面白いぐらいカラスがパニくって、鳴きに鳴いて飛んで行くのが分かった。





何でもこれを3日ほど続けると、多くのカラスたちはカラスの天敵である鷹がここに住んでいると思い込み、ネグラを変えるのだとか。


もちろん、変えずに住み続けるカラスもいるんだけど、その数は激減するらしい。





タカアンドトシのタカ、飛んでるだけなのに、すげぇ。





「うちも飼おっか」
「え、何を?」
「鷹」
「は、はい⁉︎」





俺の隣でキラキラした目でタカを見ていた雅紀が、視線はそのままにそんなことを言い出した。





この子は人に影響されやすいのかな。


ル◯バのときもそうだったよね?


うちのル◯バ見て即買いだったよね?


でも、鷹を飼うってそんな。





確かに。


確かにカッコいいのだが。





タカはハリスホークという種類なのだそうだ。


このハリスホークという鷹は、集団で狩りをする鷹で、人間も仲間だと思ってくれるから、害鳥駆除にも向いているんだと、鷹大好き鷹匠の高橋さんが教えてくれた。





「ええやん。そしたら俺も面倒見に来たるで」





悪ノリするのは、雅紀の飼おうか発言を耳ざとく聞いていた横山さん。





こんな時、松本さんの不在が痛いと思う。


松本さんなら雅紀と横山さんの暴走を止めることができるかもしれないのに。





「え、きみちゃんこれ以上まだ仕事増やせるの?」
「そんなん、まだまだ全然余裕やで」
「全然余裕って………絶対おかしいから、それ。ひとりで何人分の作業してるか知ってる?」
「何人分って、1人分やろ。何もおかしないって。余裕や、余裕」





よ、横山さん。


風間さんがあんびりーばぼな顔でぽかんとしてますけど。





そして横山さん。


俺は、横山さんの相葉種苗での仕事量は存じ上げませんが、リーフシードの仕事だけでも相当やってますよ?


結構ではなく、相当。


それもしっかり休憩やサボりを入れつつ。





あり得ないですからね。本当に。


俺よりめちゃくちゃ働いてますからね。本当に。


そりゃ宇宙人説、双子説、ドッペルゲンガー説、コピーロボット使用説、瞬間移動説等等出て当たり前レベルですからね。





絶対きみちゃん3人はいるでしょって、小さくつぶやいた風間さんに、俺も心で激しく頷いた。





「じゃあさ、ここに小屋建てて鷹ハウスにするから、きみちゃん鷹匠になってよ」
「は⁉︎鷹匠⁉︎俺が⁉︎何で俺⁉︎嫌やでそんなん‼︎飼うなら面倒見たるけど、俺が鷹匠なんて無理や‼︎」





おお、これはまたすごい無茶振りをしたな、この子。


鷹匠て。今日初めて見たのをやってってそんな。





横山さんもまさかの提案すぎて、めちゃくちゃ焦っていらっしゃる。





だがしかし。


駄菓子菓子。


目の前にいるよ、たかはしたかし。





やってよって相手が横山さんでほっとした。心底したよ。俺は。





だって俺に言われても、はっきり言って無理な気しかしない。





「きみちゃんが一番似合うじゃん。鷹匠」
「………え?」
「絶対カッコいいよ。鷹ときみちゃんって」
「え………。そう?そうか?似合うか?カッコええか?」
「うん。すっごいカッコいいと思う」





これは。





作戦なのか、はたまた本当にそう思っているからの言葉なのか。





「………これ、絶対やるやつですよね。きみちゃん」
「………ええ。俺もそう思います」
「きみちゃん、ちょろすぎ」
「………」





雅紀に似合う、カッコいいを連発され、もち並みにでろんでろんのどぅるんどぅるんに伸びた顔になっている横山さんを見て、鷹ハウスが建つのも時間の問題だろうと思う俺であった。










「誕生日プレゼント?」
「そう。誕生日プレゼント。雅紀もうすぐ誕生日でしょ?」
「あ、そうだっけ?」





泊まって行けばいいのに。





鷹がよほど気に入ったのか、安田さんと高橋さんに、雅紀はそう言ったのだが、タカをちゃんと休ませたいし、トシが待っているから高橋さんは帰ると言い、一緒の車で来た安田さんも帰って行った。





何でも、夜ここに辿り着くことはなかなかできないそうだが、帰ることはできると言うから、これまたナゾである。





ちなみに明日はトシを連れて来てくれるそうだ。





今日はいつもより遅くなったため、安田さんたちが帰った後はそれぞれの仕事を片付けてそのまま解散となった。





ソイ御殿に雅紀と戻って、小腹が減った時用にとストックしてあるカップラーメンと冷凍チャーハンでチャーラー定食をして空腹を満たし、ふたりでまったり風呂入った後の、今はまったりタイム。





結局雅紀への誕生日プレゼントが決められなくて、本人に突撃取材となっているのだ。





ほら。この子お金持ちだからさ。


もう買えるからさ。何でも自分で。それこそ別荘とかもひょいって。


だからいちいち誕生日に欲しいものなんて、今さらないのかなって。


それでも誕生日だから何かあげたいし、喜んでもらいたいから、なら、聞くのが一番かなって。





誕生日を忘れていたらしい雅紀が、うーんって少し考えて。





「あ」





何か思いついたらしい。


考え中って書いてあった顔が、一瞬でピカっと輝いた。





「オレ、しょーちゃんちに泊まりたい」
「………はい?」
「誕生日に誕生日プレゼントで、しょーちゃんちにお泊まり」





キラキラキラキラキラキラキラキラ………





また突拍子もないことを、直視できないほどとんでもなく発光しながら仰ってるよこのお天使。


だからついうっかり、分かった。いいよ。なんて、鉄壁トリオに報告も相談もないまま返事をしてしまい、やべぇ、やっちまったと、いつもとはまったく違う意味での恐怖で、俺はその日、眠れない夜を過ごした。









………250じゃ終わらない気がしてきた。←脱線多すぎ。