花 188 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

腐女子向けのお話ブログです。

「にいちゃん‼︎どないしたん、その顔‼︎今日めちゃくちゃぶっさいくやで⁉︎」





ひどい。





おはようの挨拶もなく顔を合わせての第一声がぶさいくって。





………いや。





今のはただのぶさいくではなかった。


相当気持ちのこもった『ぶっさいく』だった。





………ひどすぎる。





確かに。


確かに今日の俺の顔はひどいと思う。まだ見ていないが


多分目が腫れている。目が重いんだよ。目がどぅううううんって感じ。





雅紀にも目腫れちゃったねってさっき言われたし、横山さんが『ぶっさいく』って言うほどだ。結構ひどいのだろう。





何故俺の目がこんなかと言うと、まだ明け方前、深夜と呼べるような時間に泣いたから。


悪夢にうなされ夢で良かったと泣き、その後雅紀の言葉に泣いたから。





ご飯を食べたらう◯こが出る。





そんな当たり前が当たり前に起こっているのに、何故だろう。どうしてだろうと思い悩んでいるのが俺。





発見である。





しかも、雅紀が言う当たり前と俺の当たり前は大きく違うということが分かった。





俺はいわゆる、普通とか一般的………つまり多数を単純に当たり前と認識していた。


でも雅紀は、何をしたか。だからの結果がこうだ。こうなる。を当たり前と言っている。





ご飯を食べた。だからう◯こが出た。





これが雅紀の当たり前。





でもそれは、健康であればの話で、昨夜は便秘という例こそ出さなかったのだけれど、聞いたら当たり前でしょって絶対言うと思う。


便秘であるなら、う◯こは出ない。出づらい。それが当たり前でしょって。





ということは。





何をしたか。どういう状態でしたか。だからの結果。





雅紀が言う当たり前は、これだということ。





ご飯を食べた。健康である。だからう◯こが出た。


ご飯を食べた。便秘である。だからう◯こが出ない。





俺はメンタルやられてるから、この例えでどっちかと言うと後者だな。





納得した。


めちゃくちゃ納得した。


そして、今まで胸の辺りで燻っていた何かがすこんと消えた。





メンタルがやられているのに、メンタルがやられていないときと同じようにできると思うから、できない自分に何故だろう。どうしてだろうと思い悩むのだ。


メンタルがやられているのに、メンタルがやられていないときと同じようにできるなら、それはメンタルをやられているとは言わないのだ。





仕事をした。しようとした。でもメンタルがやられている。だからろくにできない。





単純な話だ。





そうだ。


俺は今、メンタルがやられているのだ。


二宮メンタルクリニックの二宮先生のお墨付きなのだ。


だから、そのようにしかできないのだ。





仕事ができない。眠れない。悪夢ばかり見る。くよくよする。めそめそする。





俺はそれをダメなことだと思っていた。


30オーバーのおっさんがそんなって。


けど違う。


違うのだ。


俺はメンタルがやられているのだ。


だからそれが、当たり前なのだ。


それが俺の、ご飯を食べたらう◯こ方程式なのだ。





しかも雅紀は言った。


この状態はいつまでも続かないと。





上がれば下がる。下がれば上がる。ずっと続くわけじゃないと。





そうだ。


そうなんだよ。


ずっと、永遠に続くものなんかどこにもない。


何かは必ず変化する。


いいことも悪いことも、いいままでも、悪いままでもない。変わる。変化する。


今が最悪だからと、悲観しなくてもいいのだ。変わるから。最悪なままでなどいないから。





しかも雅紀は言った。


雅紀と俺でソイプロテイン以上のものを、オレンジM以上のものを作りたいと。絶対その日は来ると。





雅紀と共同で何かを開発する日が。必ず。





見えた希望の光に、俺は泣いた。


泣いて泣いて、いつの間にか俺は寝ていた。


気づいたらアラームが鳴っていた。





多分、実際に寝たのは3時間とかだと思うんだけど、久しぶりにしっかり寝れて、それにめちゃくちゃ驚いた。





おはよう、しょーちゃんって寝起きの雅紀に思わず、寝れた‼︎俺寝れたよ‼︎って報告するぐらい驚いた。





雅紀はうんって穏やかに言って、そして。





………いやぁ。朝から農耕だったわ。うん。農耕。耕された。耕されまくった。俺。





で、耕しに耕されて、そろそろ起きようっておりてきたらこれだ。横山さんだ。





ぶさいくって。


ぶっさいくって。





「まーくん、ファミ◯キ買うてきたで。松潤来る前に食べ」
「ファミ◯キっ。ファミ◯キ食べるっ」





にやにやと悪い顔をしながらコンビニの袋を渡して雅紀を俺から引き剥がし、横山さんは俺の首に腕を回した。


ほぼヘッドロック状態。





何するんですかっ………てジタバタするも微塵も動かない。





何故だ。俺と横山さんの腕は何が違うのだ。





そのままリビングの端っこまで連れて行かれ、なあなあって耳元で。





もう、イヤな予感しかしない。





これ確か、前にやられた時もろくなことを聞かれなかったはず。





「にいちゃん、まーくんに言うた?もう言うた?」
「………何をですか?」
「何を⁉︎何をってそんなん決まっとるやん‼︎」
「………?」
「………相変わらず鈍いなにいちゃん。そろそろ改名した方がええんちゃう?櫻井ボケ倒しって」
「え?俺、ボケ倒してるつもりはないですが」
「それがもうボケ倒しや。ちゅうか言うたん⁉︎にいちゃんまーくんに言うたん⁉︎好きって‼︎」
「は⁉︎はいいいいい⁉︎なっ………なっ………」
「………なんや、まだか。おもんないなあ」
「おっ………おもんないってっ………おもんないって………‼︎」
「おもんないて。………せやけどにいちゃん」
「………はい?」
「にいちゃんの顔、恋する乙女やで」
「はっ⁉︎」
「まあ、今日はえらいぶっさいくやけどな」
「ぶっ………ぶさいく………ひどい………」





俺がこんな風に横山さんに絡まれている間、雅紀はほくほくとファミ◯キをもきゅもきゅ食べていらっしゃった。





ついさっきまであんなにも農耕なキスをしていたって言うのに。





………俺………ファミチキに負けた………?





その後横山さんは、松本さんに『ファミ◯キは買ってくんなって言ってるだろ‼︎』って怒られていた。





それを見て、ちょっとだけふふって思った俺であった。










187よりも苦労した188。

どれだけ書き直したことか………。


う◯こで悩まなくなりますように。