花 151 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

腐女子向けのお話ブログです。

闇。





暗闇。





そこは暗闇。





何もないのか、何も見えないのか。


目の前に広がるのは、どこまでも果てない、闇。黒一色。






そして………静寂。





自分の呼吸する音はもちろん、自分が瞬きをする音さえ、もしかしたら聞こえるかもしれない。





それぐらいの静寂。





一歩踏み出した先に何があるか分からなくて、俺は一歩を出すことができないでいた。


できるのは佇み。


闇が深すぎて何も見えていないのなら、むやみやたらに動き回るのは危険でしかない。





こんなときに頼りになるはずのスマホは、何故か残念ながら持っていなかった。





ドッドッドッドッドッ………


ドッドッドッドッドッ………





徐々に心臓がうるさくなっていく。


変な汗もじわりとじわる。





大丈夫。





俺はこれを知っている。





これはそう。


最近よく見る夢だ。





だから大丈夫。じっとしていればそのうち覚める。





………はずだ。






夢だということは分かるのに、それ以上のことは分からない。思い出せない。





え、これ………夢だよな?そうだよな?






夢だという確信さえ、この闇にの飲まれて疑いに変わろうとしている。





ドッドッドッドッドッ………


ドッドッドッドッドッ………





一面黒一色。そして無音の世界。





そんなの夢だろうと何だろうとこわいに決まっている。





ドッドッドッドッドッ………


ドッドッドッドッドッ………


ドッドッドッドッドッ………


ドッドッドッドッドッ………





心臓が壊れるんじゃないかってぐらい、激しくうるさく鳴っている。


そしてその音に合わせるかのように。





『ソレ』はやって来た。





ズル………


ズルズルズルズル…………





来た。


来ている。





真っ暗闇の中、『ソレ』が動き蠢きながら。





ドッドッドッドッドッ………





ズルズルズルズル………





ドッドッドッドッドッ………





ズルズルズルズル………





見えない。


視界は変わらず一面の黒で闇。





だからなのか他の感覚だけは妙に冴えて。





ズルズルズルズル………





右から左へ。





ズルズルズルズル………





左から右へ。





ズルズルズルズル………





前から後ろへ。





ズルズルズルズル………





後ろから前へ。





おそらく俺は、今完全に、囲まれている。





そして空気が騒ぎ出す。


ざわざわと。





静かに………鋭く。





大丈夫。





自分に言い聞かせる。





大丈夫。これは夢だ。夢だろ?こんな非現実的なことが現実であるはずがない。


だからじっとしていれば。





そう思っていた耳に。





シネ





聞こえた声。





コロス





聞こえた声。





キエロ





聞こえた声。





ざわざわざわざわ………


ズルズルズルズル………





シネ


コロス


キエロ


シネ


コロス


キエロ





声は囁きからどんどん大きくなる。


エコーし乱反射しあちこちからの無数の声になる。





シネ


コロス


キエロ


シネ


コロス


キエロ





シネ‼︎


コロス‼︎


キエロ‼︎





大きくなって大きくなって耳を塞いでも聞こえるぐらい大きく大きく大きく大きく大きく。





シぃいいいいいねぇえええええっ………





コォオオオオオロォオオオオオすっ………





キぃイイイイイえぇえエエエエロぉおオオおおッ………





それはまるで存在そのものが憎しみでできているかのような、人ではないものの叫び声。





その声を起点として、竜巻のように風がぐるりと起こる。


耳を塞いだまま足に力を入れるが、それでも身体が持って行かれそうになる。





早く終わってくれ。


早く目覚めさせてくれ。


早く俺をここから。





シネ


コロス


キエロ


シネ


コロス


キエロ


シネ


コロス


キエロ





無数の声がまた聞こえる。


囁きからどんどん大きくなる。





大きくなって大きくなって大きくなってそして。





『シんじゃえ、しょーちゃん』





くふふふふ





目の前に一瞬で現れた雅紀と、オレンジの木。





「………っ」





雅紀。





雅紀がそこに居た。


いつものお天使笑顔で立っていた。


なのに、その口から出たのは、キスしよっていつもの言葉じゃなくて。





………シん、じゃえ?





今、そう言った?雅紀が?俺に?





次の瞬間、俺は一瞬で四方にあったオレンジの木の枝に身体中を捕縛され。





『バイバイ』





バキバキバキバキィッ………





全身の骨が折れる音を、俺はまた、この耳で聞いた。










えええええ⁉︎今週ここで終わりなの⁉︎って思った方は米ください🌾

ちょっとはこわいかなあ。自分じゃわからない(笑)