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( 浜の山ちゃんさんによる写真ACからの写真 )
レオナルド・ダビンチは、絵画だけでなく、あらゆる学問を極め、万能の天才と呼ばれた。
人類の至宝ともいえる言えるあの名画モナリザを残した。
実はレオナルドが深く関与したと考えられる絵画は14点しか存在しない。
ひょっとすると、まだ見ぬ絵画がこの世のどこかに存在するのではないか。
人類はこの500年、取り憑かれたかのようにレオナルドの新しい作品を探し続けていた。
今、その探求にこれまで考えられなかったような局面が訪れている。
最先端の科学技術を使って、レオナルドの作品ををあばきだそうというもの。
NHKはその調査に密着、浮かび上がったのは、想像を超えたレオナルドの超絶技巧、果たしてレオナルドの新しい作品を目の当たりにすることはできるのか。
レオナルドダビンチの没後500年、ルーブル美術館では、史上最大のダビンチ展が開かれている。
世界各地から集められた作品はおよそ160点、中でも注目はレオナルドの絵画14枚のうち、7枚が一堂に会したこと。
作品はいずれも国宝級。
人類が初めて目にする圧巻の光景。
この展覧会を誰よりも心待ちにしていたのはサカナクション・山口一郎さん。
真のオリジナリティとは何かと、ダビンチからヒントを得たいと考えていた。
レオナルドには不思議なことがいくつかある。
作品の多くがが未完成のままだということ。
本物そっくりの模写が数多くあること。
そして何よりこれほど有名な画家が、わずか14展の絵しか残していないこと。
そんな不可解さが新たな作品への思いを狂おしいほどかきたてる。
16世紀の初め、混迷の中からルネサンスへと時代の転換期を迎えていたイタリア。
新しい芸術を生み出そうと、活躍した3人の巨匠がいる。
ミケランジェロ、ラファエロ、そして一際異彩を放ったのがレオナルド・ダビンチ。
ほかの2人が100点近い作品数を残したのに、レオナルドの作品はごく僅か。
ましてや、修道院に描かれた『最後の晩餐』など、レオナルドが描いたという確かな記録がある作品は数える程しかなかった。
当時画家が自らの作品に署名を入れることは無かった。
言い伝えと、僅かな文献。
そして何より作風だけを手がかりに、人々は数百年に渡って未完成の作品を探し当ててきた。
2年前、一つの大発見が美術界を揺るがした。
『サルバトール・ムンディ』
青いローブをまとったイエスキリストの肖像画。
およそ100年ぶりに姿を現した、14枚めのレオナルド作品。
ひょっとすると、レオナルド最後の作品になるかもしれない、その興奮が落札額を押し上げ、人類史上最高額の4億ドル(約450億円)で落札した。
果たして、他にもレオナルド作品は世界のどこかに存在するのか。
極秘裏に、本物だと疑われる2つの絵の調査が進められていた。
キャスト1、糸巻きの聖母
この日、誰もいないルーブル美術館に、その疑わしき絵が運び込まれた。
20年前個人コレクター購入して以来、ほとんど人目に触れていなかった。
今回修復が行われるのを機に、調査が実現した。
絵画の名は『糸巻きの聖母』。
スコットランドのバクルー公爵家が所蔵し、ほとんど門外不出だった。
サイズは縦50センチ、横36センチ
赤ん坊のキリストを抱く聖母マリアの姿が描かれている。
キリストは物思いにふけった眼差しで十字架の形をした棒を見つめている。
この『糸巻きの聖母』が、レオナルドの作品では無いかと思われるには、訳があった。
1501年、レオナルドのもとを訪ねたマントバ公爵夫人の制作の様子をつぶさに記した手紙が残されている。
「幼子のキリストが十字架の形をした4本の棒を見入っています。母親はその棒を取り上げようとしています」
手紙に記された描写は、まさに糸巻きの聖母だった。
しかし、世界には同じモチーフを描いた作品が40枚以上見つかっている。
ほとんどが模写。
その中にレオナルドが手がけた可能性が高いと考えられるものが見つかっている。
スコットランド国立美術館にある『糸巻きの聖母』
つややかな髪は本物である可能性を感じさせる。
しかし、顔のバランスがいびつで、レオナルドが深く関与したと断定するには決め手を欠いていた。
そこに現れたもう一枚の候補が、今回分析する『糸巻きの聖母』である。
調査にはイタリアやフランスから、世界的な研究者や修復者が集まった。
チームを指揮するのは、ルーブル美術館学芸員のヴァンサン・ドリューヴァンさん。
作品の来歴から、ある程度の期待はあった。
絵を目で見た瞬間、これこそ本物なのでは無いかと感じた。
「とても印象的、顔の表情が美しい。動きがあり、息吹が感じられる。また美しいと思われるのは背景。ボリューム感がある。モナリザにも感じられる大切なポイント」
悲しみとも喜びともつかない表情で描かれた聖母の顔。
背景にはモナリザにも似た風景が描かれ、レオナルドの作品にとても似ている。
しかし、この絵には弱点があった。
それは「糸巻きの聖母」を記した、あの手紙。
詳細に読み込むと、気になる一節がある。
「座って糸を巻こうとしている聖母と、糸の入った籠に足を置いている幼いキリストがいます」
という記述。
しかし、調査中の絵を見ると、手紙にある糸、そして籠が描かれていない。
決定的な弱点を覆すことができるのだろうか。
キャスト2 プラドのモナリザ
スペイン・プラド美術館で、もう一つのプロジェクトがすすんでいた。
通称『プラドのモナリザ』
両手を組み、微笑みを浮かべる女性はモナリザそっくり。
本物と比べるとモデルの女性が若い印象を受け、そして何より背景が一切描かれていない。
作者に関する記録もなく、レオナルドとは異なる人物が描いた作品だと考えられていた。
ところが、表面の汚れを落とす作業をしていたときのこと。
真っ黒な背景の下から、鮮やかな風景画が現れた。
それはルーブルのモナリザと、とてもよく似た風景だった。
レオナルド作品の可能性を大いに感じさせる発見だった。
2枚の絵の調査は次の段階に進んだ。
ここで登場するのが、最近になって絵画研究の世界で急速に導入された科学的な解析方法。
レオナルドの作品である可能性が浮かび上がった『プラドのモナリザ』。
科学的な手法で可能性を見出そうとしていた。
用いたのは、赤外線反射撮影法。
表からは見えない下絵だけを透視し、作品の真贋に迫ろうとした。
赤外線は表面の絵の具を透過し、下絵に使われた木炭を浮かび上がらせる。
その性質を利用し、まるでレントゲンのように、下絵だけを透視する。
分析の結果、想像しなかった事実が見つかった。
頭の上を見ると、うっすらと細い線が見える。
作者が最初に描いた頭の輪郭線である。
その後、完成形は低い位置に修正されたのがわかる。
本物のモナリザにも同じ分析を行った。
浮かび上がった下絵を見ると、全く同じ修正が行われていた。
完成品の右肘に肘掛の部分「プラザのモナリザ」には
三角の形をした椅子の肘掛が描かれていた。
一方、ルーブルのモナリザを見ると、肘掛は描かれていないが、しかし、下絵を見ると、ルーブルのモナリザにも肘掛が描かれていた。
頭の輪郭線と肘掛、奇妙な共通点が見つかった。
下絵の製作にレオナルド本人が関わっていた可能性が浮かび上がった。
一方、古い手紙との矛盾を抱える『糸巻きの聖母』、手紙にあるのに見当たらない糸と籠。
モナリザと同じく赤外線で下絵を分析。
浮かびがった画像。
幼子が持つ棒の先端に、垂れ下がる糸が描かれている。
幼子の足元には、紡ぎ糸の入った籠が描かれていた。
あの手紙に記されていた特徴は下絵段階のものだった可能性可能性が浮かび上がった。
絵画の奥底にある下絵。
そこに秘められていた真実。
500年の時を経て、2つの絵はレオナルド作品であると、一歩近づいた。
レオナルドの最高傑作と言われるモナリザ。
口元の不思議な微笑みに見られる淡い陰影。
薄いベールに覆われたような透明感のある肌。
こうした卓越した絵画技法がなければ、決して本物だと断言することはできない。
2つにその技法は使われているのだろうか?
いよいよ絵の鑑定が始まった。
作品は永い年月に伴い、変色したニスに覆われている。
まずは、その汚れを取り除かれる。
最近になり、修復技術が進歩し、作品を傷つけることなく、描かれた当時の絵の輝きを取り戻すことができるようになった。
2つの作品の命運はこの修復によって、大きく別れた。
まずは『プラダのモナリザ』
表面の汚れを取り除いたところ、顎の部分に僅かながら筋目が見つかった。
作者が絵を描いた時の筆跡である。
モナリザの同じ部分と比較しても、筆跡はない。
モナリザはどこを見ても筆跡が見当たらない、
さらに研究者は、肌の透明感に注目した。
「モナリザ」の肌にある不思議な透明感。
プラダのモナリザには全く見当たらない。
鑑定の結果、プラダ美術館は、この絵はレオナルド作品ではないと結論づけた。
プラダ美術館研究員・アナ・ゴンザレス・モソさん
「2つの作品は、筆づかいが全く異なる。これは、本物であるかを見極める決定的なポイント。では、どのようにこの2つの作品が生まれたのか。レオナルドがモナリザの製作の最初の段階でデッサンを書き始めた時に、弟子が手がけたものではないか、という結論」
当時は工房制が取られ、1人の画家の元に複数の弟子がいた。
レオナルドがモナリザを描く、まさにその隣に絵を並べ、弟子が同時進行で描いた作品が数多く残されている。
「プラダのモナリザ」も、弟子が描いたものと判断された。
では『糸巻きの聖母』はどうなのか?
表面の汚れを取り除いていくと、鮮やかな青色が現れた。
当時、著名な画家だけが使えた極めて高価な絵の具・ラピスラズリ。
当時レオナルドがラピスラズリを好んで使っていた。
肝心の筆跡と透明感はどうか?
肌に筆跡はない。
そして、ベールに覆われたような肌に透明感。
「糸巻きの聖母」には「モナリザ」との共通点がいくつも見つかった。
レオナルド独特のものだと思われる。
しかし、見た目の特徴だけだと、決定的な証拠とは言えない。
さらなる科学調査が求められた。
筆跡がないことは、レオナルドの特徴の最大のもの。
例えば、主に指を使ったのではないかと考えられている。
彼の絵には、指紋がよく見つかる。
下絵のところにも見つかる。
指紋がたくさん残っている画家ってあまりいない。
指をポンポン当てた。
あるいは、細い筆でドットのように当てたという説もある。
レオナルドの作品のほとんどは、0.1ミリにも満たない点で描かれたとされている。
1つの点ごとに色を変え、ミクロのレベルで色の違いを描いている。
時間の経過とともに、重ねた点と点の境い目が馴染み、筆跡が目立たなくなる。
写真のピクセルに例えることが出来る。
従来の技法では不可能なくらい、繊細に描くことができる。
絵画の技巧の解析によって、本物の可能性が、高まった「糸巻きの聖母」。
確証を得るために、最先端の科学分析の装置が導入された。
修復センターのエリザベート・ラヴォーさん
用いたのはX線ラジオグラフィーという装置。
絵の具の成分や、描き方の特徴を分析することができる。
薄く塗られた部分はX線を通し、画像に黒く映る。
一方、厚く塗られた部分は、X線を遮り、映らない。
絵の具の種類とその薄さで白と黒のコントラストが生まれ、絵の輪郭がはっきりと映し出される。
レオナルドと並ぶ巨匠のラファエロの作品。
X線を当てると、絵が映し出された。
この装置を使って、レオナルドの作品を徹底的に解析した。
すると、驚くべきことが起こった。
X線を当てると、絵が消えてしまった。
他のレオナルド作品でも全く同じ現象が起こった。
なぜ、レオナルドの絵だけ消えてしまうのか?
フランス国立科学研究所のフィリップ・ヴァルテールさんは、表面を傷つけることなく、絵の具の内部を分析する独自の透過装置を開発した。
これを使い「モナリザ」の深い透明感のある肌に、初めて科学のメスを入れた。
肌には白と桃色の層があり、それぞれが0.5ミリほどの極めて薄い層、髪の毛一本ほど。
レオナルドはその上に100分の2ミリというとても薄い層を塗り重ねている。
それを何度も何度も薄い層を塗り重ねていた。
最も濃い部分では、15層まで塗り重ねた。
絵の具の材質からも、意外な事実が見つかった。
油の量である。
当時、絵の具は画家自らが手作りしていた。
色のもととなる顔料に光沢を生み出す油を加えた。
絵から剥がれ落ちないよう、少し粘りのある状態で使用した。
レオナルドは加える油の量が通常より極端に多かった。
その理由は薄く伸びる絵の具で、透明感のある層を作り出すためだったと考えられている。
モナリザの薄いベールに覆われたような透明な肌。
それは透明感のある絵の具を15層も塗り重ねている超絶技巧によって生み出されていた。
そして、これこそがレオナルドの絵にX線を当てると消えてしまう理由だった。
薄い絵の具の層が積み重ねられたモナリザでは、絵の具の量が均一。
そのためX線を当てても、白と黒のコントラストがなく、絵が浮かび上がらない。
完成までの広大な手間と、時間。
誰にも真似できなかった超絶技巧。
『糸巻きの聖母』にX線を当てるとどうなるか?
レオナルドが目指したものは何か。
それを知る手がかりとなる一冊の本がある。
レオナルドの絵画への考察をまとめた「絵画の書」
レオナルドはこの本の中で、ひたすらあることについて考え続けている。
それは、光とともに移ろう人間の肌の表情について、である。
レオナルドは、観察する中で気づいていった。
現実の肌の色は、一色でも単純な明暗だけでもない。
周りから光を受けることで、肌は透明感のある色を放つということに。
レオナルドが生きたルネサンス。
それは、聖書の教えから離れ、人々が現実の姿を見つめ始めた時代。
肌を照らす光を描くことは、世界の見方の変更を迫る、レオナルドの大胆不敵な挑戦だった。
レオナルドが生涯をかけ、絵に閉じこめようとした、光の世界。
死後500年たった今、私たちはようやく彼が追い求めたものの本質を理解できるようになった。
最先端の美容科学は、レオナルドが追求した肌と光の仕組みを明らかにしている。
表皮など何層にも重なった皮膚の構造。
薄い層はそれぞれ光を反射し、肌の透明感を生み出す。
その分析は化粧品の開発に生かされている。
薄い重ね塗りが肌に透明感と美しさを与えている。
そして、いわゆる光の三原色が解明されたのは19世紀のこと。
現代、私たちは数億万画素ほどの光の点で、この世の全てをありのままに再現できるようになった。
まるで、そんな未来を知っていたかのように、レオナルドは自らの絵に理想の世界を追い求め続けた。
3年に渡った「糸巻きの聖母」の調査。
そこに、レオナルドが求めた理想の世界は描かれているのだろうか。
絵の具の内部を調べることで、レオナルド作品との共通点を探っていく。
この日は絵の具の一部を採取。
その成分や描き方の特徴を探る。
サンプルは世界最先端の技術を持つフィレンツェ国立修復研究所に持ち込まれた。
採取した幅0.2ミリの絵のかけらを樹脂で固め、特殊な光を当てて分析。
すると、絵の断面が浮かび上がる。
柔らかな子供の肌。
ここには、何層もの塗り重ねがあった。
一層の幅はわずか100分の3ミリという薄さだった。
それはモナリザの肌の下で見つかった薄い絵の具を何層も塗り重ねるあの技法と同じだった。
そして、X線ラジオグラフィー調査の結果、絵が消えた。
レオナルドの超絶技巧が確かに施されていた。
今回の調査によって、作品の本質が明らかになった。
ルーブル美術館に展示されている作品と、あらゆる点で似通っていることがわかった。
この「糸巻きの聖母」は、まさにレオナルドが描いた
とても素晴らしい作品である。
明らかになったいくつもの真実。
レオナルドの関与が高い本物であることを示している。
科学の進歩によって開かれた絵画の歴史の大きな1ページ。
これで終わりではない。
きっと世界にはダビンチの作品が眠っているはずだ。
新たなレオナルド作品を見つけ出す物語は今も続いている。
フランスの古城から見つかったのは、もう一つのモナリザ、裸のモナリザ。
3年前からルーブル美術館との合同調査が進められている。
モナリザと重ねてみると、右手の形や位置が完全に一致した。
描かれた紙に、ブランドを示す刻印を発見。
それはモナリザが描かれた時代と同じ場所で使われていた紙だった。
果たして、レオナルドが描いたものなのか、検証が続けられている。
真実は謎に包まれたまま。
だからこそ、モナリザは微笑んでるいる。
私たちのことをからかっているみたいに・・・。
ダウンタウン浜田の雑学博覧会の記事はこちら(2017年10月15日)
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では、明日。