三輪先生の人生を振り返る「シリーズ 三輪記子物語」。6回目は、ターニングポイントとなった『週刊プレイボーイ』グラビアのお話です。弁護士がグラビアページに登場することについて、雑誌が発売された時期はさまざまな批判も起こったといいます。当時、三輪先生は何を考えていたのか。今だからこそ言えることを語ります――。

 

 

 弁護士になったものの、スタートはいわゆる「ノキ弁」。法律事務所に所属するのではなく事務所の一部を借りていて、当初は仕事より研修の方が多い状況でした。仕事が空いた時間にツイッターを見ていたところ、『週刊プレイボーイ』がリリー・フランキーさんに人生相談したい人を募集していたんですね。応募してみたところ、運良く採用されました。

  そこで話した内容が「面白いね」と言われ、担当編集者の方から声をかけられて、弁護士3年目の時、同誌のグラビアに出ることになりました。

 

 挑戦に迷いはなく、「やってみたい!」という気持ちの方が大きかったです。弁護士3年目で、法曹界では確固たる地位を築いているわけでもない。自分一人が出たところで、たいした影響力はないと思っていました。

 

 当たり前ながら、グラビア撮影は弁護士の仕事とは全然違っていました。普段は知らない世界をかいま見せてもらう感じがあり、撮影はすごく楽しかったです。

 「恥ずかしい」という感情もなかったですね。ヘアメイク・スタイリスト・カメラマンと、現場にいるのは全員がプロで、素人は自分一人。それならプロを信じ、身を委ねてみようと思いました。

 

 掲載号が出たのは、2013年1月。発売前は気に留めていませんでしたが、いざ雑誌が発売されると世の反応が気になって、SNSや2ちゃんねるなどで毎晩のようにエゴサーチをかけていました。

 特に目についたのは、同業者からの批判。「弁護士だったら普通グラビアはやらない」という声から、中には「お金欲しさに手を出したんだろう」というものもありました。

 

 批判にはそれぞれ思う所があります。

 まず、「弁護士だったら普通グラビアはやらない」はあまりにも常識に縛られすぎた発想で、当時も今も疑問を持っています。

 「●●は××であるべき」という価値観は、目には見えないけど、その社会では〝当たり前“になっていることが多い。だからといってその「当たり前」が「正しい」と一致しているとも限りません。例えば、「男性は外で仕事をして、女性は家事をする」という価値観は、ある時代までは当たり前とされていました。けれど、社会が変化し、ジェンダー平等の観念も多少浸透したことで、それが決して当たり前ではないという見方も広がってきました。

 

 私は、社会で当然とされている価値観を法の趣旨(例えば憲法14条「平等」など)に基づき覆すことも、弁護士の役割の一つだと思っています。そのような発想をすることで、少数派の人権が保護されることがあるからです。弁護士自らがいわゆる「社会常識」に縛られず、ときにそれと闘うという姿勢を見せることも必要だと思います。

 

 また「お金のため」との非難に関して、謝金は一切もらわなかったのですが、それでも、そのような受け止めをする方が多いことに驚きを覚えました。非難の背後に「お金をもらわなければ、弁護士があんなこと(=グラビア撮影)をするはずがない」という前提を感じました。「職業に貴賎無し」といいますが、弁護士の一部には逆の固定観念を持っている人もいるのかと戸惑いました。

 

 当時は司法制度改革の影響もあり、弁護士数が飛躍的に増えていて「法曹資格を取得しても、就職口がない」ということがよく言われていました。そのために、そうした受け止め方をされた部分もあったと思います。

 もしお金のために弁護士がやってはいけない仕事(グラビアは「やってはいけない仕事」ではありません、念のため)に手を出してしまうのであれば、それは業界そのものの問題であり、個人を非難するような話なのだろうかとも思いましたね。

 

 でも、当時はヘコむことしかできませんでした。言い返したかったけど、ショックが大きく、孤立無援のように感じて打ちひしがれてしまっていた。疑心暗鬼になって「この書込み誰がしたんだろう」「同業者のあの先生かな」なんて想像を思い巡らせたりもしていました。

 

 嫌な思いもした一方、このグラビアがきっかけで、TVコメンテーターの仕事も始めることになります(続く)。

 

 【取材・構成=松岡瑛理

 

 ▼バックナンバー

第一話:「女子に進学先がないことに理不尽さを感じていた」(中高時代)

 

第二話:「林監督の言葉がなければ『今頃アル中で死んでる』」(大学時代)

 

第三話:「机に座っても、文字が読めない」(司法試験受験生時代その①)

 

第四話:「目には見えないものを扱う法の面白さ」(司法試験受験生時代その②)

 

第五話:「人の心は、法律だけでは裁けない」(司法修習生時代)

 

 ▼過去記事

グラビアに挑戦しました!!」(2013年1月30日)

 

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弁護士の三輪記子(ミワフサコ)です。
2010年12月の弁護士登録以降2017年秋までは京都で執務していましたが、

2017年秋に同期の塩見直子弁護士と『東京ファミリア法律事務所』を開設しました。
東京ファミリア法律事務所は女性弁護士2名の法律事務所です。
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