8月初旬にスタートしたこのシリーズも、今回でいったん一区切り。最終回では、三輪先生が弁護士として普段取組んでいるお仕事の中身や、裁判での弁護士の役割についてどのように捉えているのかなど、語っていただきました。普段テレビなどで弁護士を見かける機会はあるものの、実際どのような仕事をしているのかご存知ないという方、ぜひご一読ください。

 

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 弁護士登録したのが2010年12月のこと。この仕事を始めて、今年で10年目になりました。

 

 弁護士になってからは一貫して、依頼者の方との距離が近い街の弁護士、いわゆる街弁(マチ弁)の業務に携わってきました。

 

 裁判には、罪を犯した疑いをかけられた人が起訴され裁かれる「刑事裁判」、私人間の紛争を扱う「民事裁判」の大きく分けて2つがあります。仕事で扱っているのは、主に後者の案件。一般的には訴訟のイメージが強いと思いますが、中には、交渉事件もあります。

 

 依頼者は同世代が多く、よくいただくのは離婚・不倫の慰謝料請求のご相談。最近では両親や叔父叔母が亡くなった場合の遺産分割の案件なども多いですね。2017年、同期の塩見直子弁護士と一緒に東京で事務所を開設してからは、中小企業や個人事業主の方からの法務案件(顧問業)も増えています。

 

 弁護士になりたての頃から、若い女性、貧困に苦しむシングルマザーなど、社会的に弱い立場の女性をサポートしたいと思っていました。その気持ち自体は今も変わっていません。けれど最近は女性に限らず、男性には男性のしんどさがあるのだということも理解できるようになりました。

 

 例えば、ある夫婦が離婚することになったとします。多いのは、子どもの親権・監護権を母親が持つことになり、父親は元妻に養育費を払うことになるケースです。話し合いで支払い額を取り決めたとしても、「何で自分ばかりお金を取られるのか」「元妻が稼げばいいのに」などと不合理に感じる男性も一定数いらっしゃるんですね。

 

 そうした状況が起こるのは、元をただせば個々人というより、社会の構造に問題があると考えています。

 男女の賃金には、歴然たる格差があります。特に非正規雇用で働く女性の場合、長時間働いても、高い年収が見込めません。そのため、家庭内では家事・育児の負担が女性側にのしかかります。それで男性側がハードワークだと、家事・育児を分担できなくなってしまう。結果として、離婚時には、「主たる監護者」である女性が親権を持つことになり、男性側が養育費を支払うことになる、というスパイラルが固定化されてしまうんです。

 

 このように、男女平等社会といいながらも現実にはまだまだ固定化された男女差別がある。根本にある社会の仕組みがそのものが変わっていくべきだ、と考えています。具体的には女性の賃金が上がること、男性が育児休暇を取りやすくなること(義務化すべきだと考えています)、そもそもの賃金ベースが男女を問わず上がることが必要だと感じています。

 

 今後取組んでみたいのは、スポーツ・ロー。大学時代陸上部だったこともあり、スポーツはもともと関心が高い分野なんですね。今は、日本陸上競技連盟(日本陸連)で、法制委員会の委員をやっています。ここ数年、日大アメフト部などスポーツ界の不祥事から、組織のガバナンスやコンプライアンスへの関心が高まっています。法律家として現役アスリートや志望者たちの環境整備をお手伝いできたらいいなと思い、この分野の勉強会にも参加して知見を高めているところです。

 

 私は、裁判とは恨みを晴らすためではなく、依頼者が前向きな気持ちで再出発を果たすための手段だと思っています。

 紛争に臨む主体は依頼者で、弁護士はあくまでもそのサポート役。起こったこと自体はネガティブな出来事だったとしても、適切な形で向き合うことができれば、離婚であれ刑事弁護であれ、依頼者はその後、ポジティブな気持ちで先に進んでいくことができるのではないでしょうか。

 いまトラブルの最中で辛い状況にあったとしても、これから前を進んで歩いていきたい方には「弁護士に相談する」という手段もあることを知っていただけたらいいなと思います。(了)

 

 【取材・構成=松岡瑛理

 

 ▼バックナンバー

第一話:「女子に進学先がないことに理不尽さを感じていた」(中高時代)

 

第二話:「林監督の言葉がなければ『今頃アル中で死んでる』」(大学時代)

 

第三話:「机に座っても、文字が読めない」(司法試験受験生時代その①)

 

第四話:「目には見えないものを扱う法の面白さ」(司法試験受験生時代その②)

 

第五話:「人の心は、法律だけでは裁けない」(司法修習生時代)

 

第六話:「グラビアへのバッシングに『ただヘコんでいた』」(グラビア出演振り返り)

 

第七話:「弁護士からはこんな風に世界が見えていると知ってもらいたい」(タレント活動について)

 

★秋口からはまた新たなインタビュー企画記事を発信していく予定です。今後ともどうぞお楽しみに!

 

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弁護士の三輪記子(ミワフサコ)です。
2010年12月の弁護士登録以降2017年秋までは京都で執務していましたが、

2017年秋に同期の塩見直子弁護士と『東京ファミリア法律事務所』を開設しました。
東京ファミリア法律事務所は女性弁護士2名の法律事務所です。
表参道駅A2出口から徒歩7分くらいの閑静な住宅街にあります。
離婚、不倫、遺産分割、契約書チェック等々
お困りのことがございましたらお問い合わせください。
秘密は厳守いたします。
ご予約いただきましたら早朝、深夜、土日祝日の法律相談も承ります。
お問い合わせはHPかお電話(平日9~18時)からお願いします。
なお、法律相談は30分ごとに5500円です。
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メール:fmiwa@tokyo-familiar.com
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