気まぐれツーリング | 旅ノカケラ

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@人生は先がわからないから、面白い。
@そして、人生は旅のようなもの。
@今日もボクは迷子になる。

▼某月某日

気まぐれで、バイクで散歩に出た。
行き先は、気まぐれ、気の向くまま。


気まぐれな空から雨が落ちてくる。
気まぐれで家を出たから、レインスーツを持ち合わせていない。
あるがままに雨を受け入れて、全身を濡らしてみる。
いつもなら、どこか雨をしのぐ場所に飛び込んだ途端に激しく雨が降ってくる。
今日は、気まぐれだから停まらない。
やっぱり。
車が激しくワイパーを動かすほどの大粒な雨が激しく降ってきた。
あるがままに雨を受け入れて、全身をびしょびしょにさせる。


軒先で空を見上げている雨宿りのおじさん。
逃げるように一生懸命に自転車を漕いでいる子供たち。
スーパーの入口で両手に買い物袋をぶら下げている唖然とした表情のおばさんたち。
雨が降っきただけなのに、まるで災難が降ってきたようである。
車の運転手たちが、ずぶ濡れのぼくを眺めながらすれ違っていく。
あいつはとんだ災難にあったもんだ、と思われているかもしれない。
彼らはぼくがあるがままに雨を受け入れて、全身を濡らしていることを知らない。


気まぐれな空が晴れ渡ってくる。
やがて、日差しと風で、濡れた全身が乾いてくる。
この道は湖に向う道。一本しかない。
何台も続く車の後ろにのんびりとついていく。
無用なエンジンの空ぶかしの音が背後から聞こえてきた。
バックミラーを覗くと、大きな排気量のバイクが数台連なっている。
たびたび聞こえてくるエンジンの空ぶかし音。
それは、イライラしているライダーの胸の内を声に出しているようにも聞こえる。
トンネルの手前、右側にちょっとしたスペースがあった。
前を走る車の右ウィンカーが点滅した。
センターラインを越えて駐車スペースに車を停めるのだろう。
減速する直前に、チラッとバックミラーを覗く。
馬鹿な。
前方の車と後続のバイクが同時に右ウィンカーを出して、同時にセンターラインを越えていた。
きっと後続のライダーは直線のトンネルで一気に車を追い越そうと思ったのだろう。
ぼくは車の左側を悠々と走り抜けて加速した。
走り去りながら、バックミラーを覗くと、車は左車線をふさぐように横向きに停まり、バイクは左車線出でたまま急停止していた。
まさに間一髪、間に合ったようだ。
イエローラインの追い越し、前方不注意。
明らかにライダーに責任がある。
人は大きな力を手に入れたとき、その力を過信しすぎることがある。
そして周りの状況が見えずに失敗する。
ぼくは今の出来事を見て、そんなことを思い起こした。


ダム湖のそばを通過した。
いつもならば休憩をするが、今日は気まぐれ、素通りした。
大きな橋を渡り、すぐ左折すれば、湖を見下ろす周遊道路を走ることが出来る。
温泉の表示に惹かれるように曲がり損なって直進してしまった。
あるがままに受け入れて、Uターンはしない。


東京と山梨の県境にある温泉に着いた。
駐車場を眺めると、バイクが1台も停まっていない。
珍しいこともあるものだ。
停まっている車のナンバーは八王子や山梨が多い。
山梨のナンバーを見ていたら、旅気分が盛り上がってくる。
ぼくは埼玉に住んでいるから、道すがら栃木、群馬、長野、山梨の各県ナンバーが多くなってくると、生活圏を抜け出した感じを受ける。
千葉県と神奈川県は決して生活圏じゃないが、東京に入ると多少なりとも目に付くナンバーなので、慣れてしまっている。
東京都内への通勤者が多いことも関係しているかもしれない。
温泉はつるつるすべすべ系のお湯だった。
何度も近くを走りながら、機会がなくて入っていなかった。
いろいろな湯船があって充分に堪能できる温泉だ。
再び訪れたくなる。


湯上りに畳敷きの広間で手足を存分に伸ばして横になりたかった。
和室は貸切の小部屋と食堂の大広間しかない。
お腹は空いていなかったが横になりたい一心で食堂に入り何か注文することにした。
自粉を使ったザル蕎麦が美味しそうだったので、注文したが品切れ。
そこで冷たいうどんを頼むことにした。
あるがままに口にしたうどんは歯ごたえ充分、ひんやり冷たく、腹が減っていなくても美味かった。
だから、とても美味しいうどんなのだろう。


外に出ると、気まぐれな空は青空を見せている。
さて、どこに向おうか。
山を越えて、大月まで行くもよし。戻って、周遊道路を走るもよし。
気まぐれの気分も落ち着いてきたので、帰り道の距離が短い周遊道路に向うことにした。
道は、くねりながら高度を増していく。
展望台の駐車場にバイクを停めて、遥か下に見える湖を眺めた。
見上げれば、真っ黒い雲が風に運ばれて近づいてくる。
なんと今日の空は気まぐれなんだろう。
山沿いの道をどう走っても雨に降られてしまいそうだ。
あるがままを受け入れるしかない。
予想通り、山を下って里に着いた頃から雨が降り出した。
あるがままに雨を受け止めて走る。
川沿いの道は逃げる場所がない。
所々、路肩にバイクを停めてレインスーツを着込んでいるライダーを横目で見ながらバイクを走らせる。
大きな町に着いた頃、雨は上がり、バックミラーに夕日が映っていた。


家に帰り、再び風呂に入ったが風邪を引いてしまったようだ。