▼某月某日
オートバイの距離計が9万3千キロを越えた。
走りながら変わりゆく数字を眺めながら、ちょうど93000.0を示した場所で停まろうと思った。
前に乗用車、後ろにも乗用車。
順調に流れる車列に身を任せて、ぼくはただ距離計を眺めるしかできない。
オートバイが進む速度は速く、距離計の数字が回る速度は遅い。
ぼくを取り巻く時間は止まっている。
ゼロを超え、回転ロールの数字が変わりゆくさまは止められない。
コンビニエンス・ストアの駐車場にオートバイを停めて、1枚写真を撮った。
このオートバイを知人から譲り受けたとき、距離計は200キロを示していた。
9万3千キロの彼方から、やっとここに辿り着いた。
北海道から沖縄、北から南、西から東、縦横無尽に走り回り、9万3千キロの到達地点は自宅から数キロ離れたコンビニエンス・ストア。
譲ってくれた知人宅からも10キロは離れていないだろう。
ずいぶん遠回りしたものだ。