遅刻をしたらクビにするべきか? | 最近の古いモノは!

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「最近の若い者は…」とよく言われますが、
そう言う「古い者」はそんなに立派だったのでしょうか?このブログでは過去の新聞記事等をベースに、「古い者」の昔を検証してみます。
「最近の…」と言われたら、「あなたの時代はもっと悪かった」と言ってやりましょう。





1970年代の事件





クビになる!


先日、統一地方選挙と補欠選挙があった。

統一地方選挙は直接国政には関係ないが、
なかなかそうは言ってられない。

地方選挙とは言え、
岸田政権への支持に直結する。


特に岸田政権が気にしていたのは
補欠選挙の方だ!


今回は4つの衆議院と1つの参議院が争われた。

補欠選挙が行われる理由は色々ある。
今回は議員の死去や知事選への転籍、
それから不祥事による辞任など色々あった。

これらは国政選挙であるので、
国会の議席数にモロに関わってくる。


そして岸田政権への中間評価にもなる。


補欠選挙で負けると岸田政権への不信任。
勝てば岸田政権への信任と評価される。



それ故に当の岸田首相も全国を飛び回った。

もし結果が悪ければ、
岸田降ろしが起きかねない。


つまりクビだ!

そうならないために必死で頑張っていた。


そして結果は…4勝1敗

和歌山1区こそ維新にとられたが、
他の4選挙区は辛くも勝利した。


まあギリギリだった部分もあり、
あまり手放しで喜べないが、


首が繋がったのは事実だ。





ところで…辞めさせられることって、

どうしてクビと言うのだろう?



クビとは…「馘首」と書くが、
その名の通り、首を切られること


つまり殺されることだった。



岸田首相が今回の補欠選挙に負けて
もしクビになっても殺されることは無いだろう。



そういう意味では
日本人で良かったね!


韓国だったらトンデモナイ目に遭っていたぞ。




ところでクビと言えば…

トランプ元大統領


彼は政治家になる前に、
テレビのリアリティショーに出ていた。


これはトランプの経営する会社に
参加者が見らないとして働き、
徐々に切り落としていき勝者を決めるという。

勝者は本採用されるという。


毎週、1名がクビになるのだが、
その時のキメ台詞が

お前はクビだ(You're fired!)

というものだ。


このセリフは一世を博した。


まあ最後は自分がクビになったわけだが…




そう…クビになるかどうかは、
本人にとって大きな問題だ。

岸田しかり、トランプしかり、


そしてクビになりたくないためには、
徹底的に戦う!


例え裁判に訴えても!





19713月5日の新聞に以下の記事が載った。

--------------
寝坊でクビはひどい
--------------


記事によると、

ある会社員が2度寝坊をした。

そのため会社からクビを宣告されたという。


寝坊をしたのは事実だが、
それでクビはひどいじゃないか?


そう訴えて裁判を起こした。



まあ確かに寝坊をしただけでクビはひどいな。

処分されるのは仕方がないが、
クビはひどい!


しかもこの会社員はまだ入社2年の24才だ。

若い身空に、こんな仕打ちをするとは…

鬼のような企業だ!

ブラック起業か?




…と思ったら…



この会社員はアナウンサーだった。



この人は高知放送のアナウンサーで、
それで寝坊をした。


しかし寝坊をしたことにより、
放送をすることができなかった。

まあテレビではなくラジオなので
画面では映らないが、
放送中は空しく音楽だけが流れていたという。


完全な放送事故じゃねーか?


他に代わりはいなかったのか?

さすが地方ローカルだな!
 

 

 



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アナ  ひどいです
 

アナ  ひど過ぎます。
 

アナ  クビですよ。
 

アナ  寝坊しただけで。
 

アナ  あり得ない。
 

アナ  だって寝坊しただけですよ。
 

アナ  普通の会社でも、普通にあるでしょ。
 

アナ  そういう人はクビにならない
 

アナ  例えば

 

アナ  いつも遅刻していたようですが、
 

アナ  クビになっていませんね。
 

アナ  これが普通でしょ。
 

アナ  まあ彼の場合は普通ではないですけど。
 

アナ  それでも遅刻しただけでクビは…
 

アナ  厳しすぎる
 

アナ  まあ確かに
 

アナ  問題は起しましたよ。
 

アナ  私は朝6時からの放送のアナウンサーで
 

アナ  そのため前日から宿直していました。
 

アナ  つまり泊りです。
 

アナ  でも時間開始は朝6時
 

アナ  それから10分間の放送でしたが、
 

アナ  私が起きたのは6時20分
 

アナ  いくら私でも…
 

アナ  どうしようもなかった。
 

アナ  だって起きたのが、
 

アナ  放送終了後でしたから。
 

アナ  放送終了後に起きて、
 

アナ  放送時間に任せるなんて
 

アナ  不可能でしょ。
 

アナ  まあその10分間は
 

アナ  朝にふさわしい音楽が
 

アナ  10分間流れていたので、
 

アナ  むしろ良かったでしょ。
 

アナ  つまり私が放送に間に合わなかったのは
 

アナ  不可抗力です!
 

アナ  それから約2週間後にも
 

アナ  また寝坊しました。
 

アナ  しかしこの時は前回とは違い、
 

アナ  たった5の遅刻で済みました。
 

アナ  たった5分です。
 

アナ  放送時間は朝6時からの10分ですから
 

アナ  残り5分もあります。
 

アナ  そこで遅れた5分間は捨て置き、
 

アナ  残りの5分に全力を尽くしました。
 

アナ  つまり2回目も
 

アナ  不可抗力です
 

アナ  確かに迷惑かけました。
 

アナ  しかし最初は全体10分間
 

アナ  朝にふさわしい音楽が10分間流れ
 

アナ  2回目も
 

アナ  前半5分は音楽鑑賞ができた。
 

アナ  じゃあいいじゃないですか?
 

アナ  裁判官には公平な判断をお願いしたい。
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そして公平な判決が出て、
クビは取り消された!


????????


むしろクビこそが正当な判決だと思うが…。


確かに寝坊したからクビとはひどいが、
仕事柄、仕方がないのでは?


ましてや放送できなかったんだぞ?


なんか釈然としない。







定年まで勤める?

ところでこの事件だが、
具体的には2つの寝坊が重なっている。

第一事故
1967年2月23日 午前6時20分起床
午前6時~6時10分までの放送に出演予定。
全ての放送に参加できず。

第二事故
1967年3月8日
午前6時~6時10分までの放送予定
5分遅刻して、約5分間放送。


最初の寝坊から次まで約2週間
それも同じように寝坊している。

しかも2度目は一度起こされたのだが、
二度寝して遅刻していた。

なおかつ第一事故時には報告書等を出したが、
第二事故の時は事実を上司にも報告しなかった。

最終的には上司の知ることとなり、
報告書と始末書を出したが、

その報告書も間違っていた。



?????????

どうしようもないな。


なんかクビになるのも仕方がないような…。

 

 


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最高裁  棄却します。    
 

最高裁  上告棄却です。
 

最高裁  つまり下級審での判決のままです。
 

最高裁  下級審では原告は…
 

最高裁  アナウンサーへの解雇は無効ですから
 

最高裁  解雇無効が確定します。
 

最高裁  アナウンサー復帰です。
 

最高裁  理由?
 

最高裁  寝坊でクビは行き過ぎでしょ。
 

最高裁  確かに原告は問題です。
 

最高裁  たった2週間で2度寝坊
 

最高裁  自覚に欠けるとしか言いようがない。
 

最高裁  だから処分することはイイよ。
 

最高裁  でもクビは無いでしょ。
 

最高裁  だって寝坊だよ。
 

最高裁  寝坊するのは悪意ではない。
 

最高裁  故意でもない
 

最高裁  それに第二事故の時は
 

最高裁  必死に走って5分間放送された。
 

最高裁  まあ第一事故では10分間
 

最高裁  フルで音楽しか流れなかったが、
 

最高裁  いずれにせよ短時間でしょ。
 

最高裁  じゃあ…イインジャネ
 

最高裁  まあ第一事故ではすぐに謝って、
 

最高裁  始末書と報告書を提出したが、
 

最高裁  第二事故では事故を報告せず、
 

最高裁  つまり隠蔽
 

最高裁  そう思えなくもないが、
 

最高裁  結局、始末書も報告書も出して、
 

最高裁  報告書も間違っていたが、
 

最高裁  まあ…イインジャネ?
 

最高裁  大体一緒に寝起きしていた同僚もおり
 

最高裁  彼も寝坊している。
 

最高裁  彼が原告を起こせば
 

最高裁  問題は起きなかった。
 

最高裁  つまり原告は被害者とさえいえる。
 

最高裁  こういうことの諸々考えると、
 

最高裁  クビはやりすぎでしょ。
 

最高裁  まだ24歳の若い美空なんだから
 

最高裁  大目に見るべきでしょ。
 

最高裁  わかった?
 

高知放送 ……おっ…おう!
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と…いうことでクビは撤回になった。


因みに上記は多少デフォルメして書いているが、
判決文に同じようなことが書いている


・事故の時間は長くない  とか
・一緒に寝ていた人が起こさなかった とか


本当に判決文に書いている。


????????


なんか随分甘い判決だな。


当時は今と違って、左翼の全盛期だから。

労働者側の権利を
最大限擁護しようとしていたようだが、

それにしてもやりすぎだと思うのは
俺だけか?



因みにこの判決後、原告は職場に復帰し、
2004年まで勤めたのか?

この事件が起きたのは1967年2月
原告が入社したのが1964年4月
そして退職したのが2004年。


40年も…つまり定年まで勤めたのか?



寝坊でクビはやりすぎだが、
当時の労働者は甘やかされてもいたのだな。


左翼万々歳だな!