１９７０年代の事件
◎お天道様が見ている！
お天道様が見ている。
このお天道様とは
太陽のこともあれば神様のこともある。
つまり…
誰も見ていないと思って悪いことをやっても
太陽や神様は見ているぞ！
だって上から見ているのだから、
絶対に見えるぞ！
そして悪事を働けば
天罰が喰らわされるぞ！
そう言っているのだ。
確かにお天道様が
太陽でも神様でも…
空高くから我々を見ている。
それなら見えない訳が無い。
その神様だか太陽だかは
その悪事を把握すれば
間違いなく天罰を喰らわす！
間違いなくだ！
つまり我々は誰も見ていないと思って
悪事を働いてはならないのだ。
悪事を働けば、必ず…絶対…間違いなく…
その報いがある！
ところで…お天道様が見ているとは…
「見ている」ことが前提になる。
たとえ見える場所であっても
別のところを見ているかもしれない。
お天道様だって
余所見をすることもある。
その場合は見ることができても
見ていないことだって考えられるのではないか？
そして…それを疑わせる事件があった。
悪いことをした奴が、
悪事のお陰で儲かったという事件が…！
1978年9月9日の新聞夕刊に
以下の記事が載った。
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盗んだ800万円を返す
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記事によるとこういうことだ。
福岡中央郵便局に勤めるＮ（37）は
1973年から5年間に郵便物で送られる現金を
カッターを使って抜き取っていた。
被害額は総額1000万円ほど！
しかし不着届が相次いだことから監察局が調査
Ｎの犯行と断定されて逮捕、懲戒免職となった。
同局は事件の後処理として
被害届を出した人たちには現金を返していた。
しかしその数は多くなかった。
ほとんどの人は被害そのものに気が付かず、
それ故に被害届も出なかった。
そして最終的に返済したのは196万円。
その他は宙に浮いていたのだ。
そして約800万円は検察当局と相談したが、
犯行を裏付ける証拠がなく、
結局、Ｎに返すことになった。
なんだ、「返す」って、
盗んだ犯人に返すのか？
1000万円盗んで、200万円は返したが、
800万円は結局犯人のモノ！
ヲイヲイお天道様…
どうなってんだ？
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天道 知らんよ
天道 わしゃ、知らん！
天道 確かにおかしいことだけど
天道 知らんものは知らん
天道 何でも1000万円盗んだけど
天道 被害届が出たのは196万円分
天道 残りの800万円は…
天道 犯人にあげた！
天道 こういう事件のようだけど
天道 何度も言うけど…
天道 ワシは知らんから！
天道 確かに言うな。
天道 お天道様が見てる…と。
天道 そのお天道様…って
天道 ワシのことじゃ！
天道 確かに天から見ていると
天道 障害物が無いからよく見える
天道 見えることは見えるよ
天道 でも…ね！
天道 見ていればだけどね
天道 俺も忙しいし、
天道 一つのことだけ見ている訳じゃないから
天道 例えば他で事件があれば
天道 そっちを優先しなければならないし、
天道 アッチコッチ見れないよ
天道 大体俺らはシフト制だから
天道 俺が出番じゃない時に起きたことは
天道 基本スルーだから。
天道 大体、この事件は一つ一つがショボい
天道 1件当たり2万円ほど
天道 確かに合計は1000万円になるけど
天道 その全部は見れないから
天道 休憩中もあるし、
天道 非番の時もある
天道 世の中週休2日制なのに
天道 俺らだけ休み無しって…
天道 どんなブラック企業だ？
天道 つまりお天道様は見てると言っても
天道 見てない時もある
天道 そして見てない時に行われた悪事に
天道 天罰は下せない！
天道 つまり…そういうことだ！
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と…言うことは言っていないが、
お天道様にも言い分はあるだろう。
もし実際にお天道様が見ていれば、
激しい天罰を下したのだろうが、
見ていなければ下せない！
これはお天道様を批判できないなぁ！
◎余計なことは見ていた！
お天道様は見てる…という言葉には
悪いことはできないという意味と、
良いことを見ていてくれるという意味がある。
悪いことをやった奴には天罰が…
良いことをやった奴には天恵がある。
そういう意味だ！
しかし今回の奴は悪いことをやったのに
800万円儲かった！
これはどういうことか？
実はこいつは…
良いことをしたのではないか？
そこで参考になるのが金の斧銀の斧！
正直者のきこりが得をし、
強欲なきこりが罰を受けるという話。
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正直者のきこりが沼に鉄の斧を落とした。
それを神様が拾ってくれた。
しかし神様が持っていたのは金の斧
神様 「お前の落としたのはこれか？」
きこり「そんな立派なものではありません」
神様は再度水に潜り斧を持ってきたがそれは銀の斧
神様 「お前が落としたのはこれか？」
きこり「そんな見事な斧ではありません」
神様は三度水に潜ると、今度持ってきたのは鉄の斧
神様 「ではこれか？」
きこり「そうです。それが私の斧です」
神様 「お前は正直だな」
神様 「では金と銀の斧も持って行きなさい」
その話を聞いたのが隣の強欲なきこり
同じように沼に斧を落とすと神様が姿を現す。
神様の手には金の斧が…。
神様 「お前が落としたのはこれか？」
きこり「そうです。その斧です」
神様 「お前は嘘つきだ」
神様 「お前には落とした斧もやらん」
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これが話のあらましだ！
そう…正直者は得をし、
強欲な嘘つきは罰を受ける。
それが昔話のセオリーだ。
そして先の犯人は…正直者だったのではないか？
と…いうのは、
彼は1000万円を盗んだことを告白したが、
被害届は約200万円だった。
つまり800万円分は
彼が正直に申し出たのだった。
彼は200万円分だけを告白しても良かった。
しかし正直に1000万円と言ったので、
それを見ていた神様が天恵をくれた。
つまりお天道様は見ていたのだ。
彼の善行を…！
悪行は見ていなくても善行は見ていた。
これもお天道様にはよくあることだ。
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犯人 捕まった。
犯人 とうとう捕まった
犯人 まあしょうがない
犯人 実際に盗んだのだし。
犯人 ここは腹を括って正直に話そう。
犯人 えっ？
犯人 なんだこれは？
犯人 独房の中なのに人がいる。
犯人 どういうことだ？
神様 ワシは神様じゃ
犯人 神様？
神様 そうじゃ。ところで何をしたんじゃ？
犯人 私は郵便局員だったのですが、
犯人 郵便物から現金を抜き取ってました。
犯人 5年間続けていて
犯人 この度バレて捕まったのです。
神様 それは悪いことをした。
神様 心を入れ替えて罪を償うのじゃ。
犯人 はいっ、誠心誠意償います。
神様 ところで…お前は幾ら盗んだ？
犯人 1回当たり2万円ほどです。
神様 そうじゃない。
神様 トータルで幾らじゃ？
犯人 そっ…それ…は…
神様 200万円か？
犯人 いえいえ、そんな少なくありません。
神様 500万円か？
犯人 それより遥かに多いです。
神様 800万円か？
犯人 それより更に上です。
神様 では1000万円か？
犯人 そうです。盗んだのは1000万円です
神様 お前は正直な奴じゃ！
神様 正直者には褒美をやろう。
神様 この800万円を持って行きなさい。
犯人 えっ？
神様 これからも正直に生きろよ。
犯人 はっ…はい！
犯人 今後も正直に行きます。
神様 それで良い！
民衆 ……………………！
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こういうことだろうか？
1000万円盗んだのに、800万円を得た男
お天道様は見ていると言いながら、
必要なことを見ないで余計なことを見ていた。
お天道様よ！
サボってんじゃねーよ！
今回のことでわかったことは
お天道様はアテにならん…ということ！
だから悪が栄えるのか？
