１９７０年代の事件
◎足を洗う！
「足を洗う」という言葉がある。
この言葉は仏教の言葉で、
俗世間を裸足で歩いてきた僧侶が、
戻った時に足を洗うことからついた。
俗世間に触れ、煩悩に染まった足を
再度、寺に着いた僧が洗い流す。
つまり俗世間に出るという悪い行いを止め、
僧侶という善い行いに戻ってくる。
そういう意味で使われている。
しかし現在では良い悪い関係なく、
それまでの職業をやめる意味でも使われている。
つまり…
ある仕事をやめることが
足を洗うということだ。
まあ世間では足を洗うというと、
仁義なき世界を思うかもしれないが、
現実は全く違う！
どの世界でも仕事をやめると
足を洗うというのだ。
だけどやっぱりヤクザな世界を意味する。
ところでそういう世界から身を引くのはイイが、
その後の対応には困ってしまう。
これまでヤクザとして過ごしてきたが、
いきなり他の仕事はできない。
明治維新以後、武士階級は無くなり、
薩長土肥の一部を除き、武士ではなくなった。
そのため商売をやる人も多かった。
しかし元々頭を下げたことも無かったので、
失敗することも多かった。
これを武士の商売という。
そう…やめたのは良いが、
その後の生活が出来なければ元に戻る。
つまり単に足を洗うだけではなく、
その後の生活の見通しが無ければ、
足を洗うことはできない。
そう…その後の生活が…
ところでヤクザがセカンドライフで行う仕事と言えば、
ドライバー！
タクシーの運転手などがそうだ。
これは（２種）免許を持っていれば、
ある程度の人はできる。
もっと言うと昔は２種免許などもっていなくても、
勝手にやっていた。
そういう意味ではヤクザが前職を止めた後、
運転手というのは絶好の仕事だ。
ところで昔はヤクザをやめなくても
運転手の仕事をやっている奴がいた。
と…いうより…
ヤクザが運転手をやっていたのだ。
それは…運転代行業だ！
運転代行業とは
本人に成り代わって、自動車を運転すること。
この運転代行業に
広域暴力団が進出していたのだ。
1978年9月12日の新聞夕刊に
以下の記事が載った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
運転代行業 広域暴力団が進出
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
記事によるとこういうことだ。
1975年頃から目立ち始めた運転代行業。
これに広域暴力団が進出し始めた。
元々、運転代行業は飲食店が、
自店の売り上げ増のために始めた。
自動車通勤をしている人は
酒の提供ができない。
しかし運転代行業なら
酒をたらふく飲んでも、代行を頼めば帰宅できる。
運転代行業の仕組みはこうだ。
代行を頼む客に対して
2人一組で対応する。
1人が客の車を運転し、
1人が別の車を運転する。
そして客を車ごと送り届けたら、
帰りは相棒の車に便乗して帰る。
料金はタクシー料金の6～7割で
それでも結構実入りが良いという。
それは店からもお金がもらえるからだ。
店としてはたくさん飲んでくれれば
その分儲かる。
しかし自動車で来る人は
そうたくさん飲むことはできない。
でも…代行業者がいれば、
その心配はなく、翌日も自動車で通勤できる。
そのため大いに商売がヒットしたが、
その分、暴力団関係者も参入するようになった。
なぜなら飲食店は暴力団関係者が
関与しているケースが多く、
そのため目をつけやすかった。
自らの飲食店で多く飲んで、
そして運転代行業としても儲かる。
これは足を洗わなくても、
十分稼ぐことができる。
これは盲点だった！
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
警察 盲点だ。
警察 これは盲点だった。
警察 ヤクザが足を洗おうとすると、
警察 別の商売をやらないといけない。
警察 そうしないと食えない元ヤクザが、
警察 結局、元の鞘に戻る
警察 そりゃそうだ。
警察 ヤクザをやめたのに
警察 むしろ貧乏になったのなら、
警察 やっぱりヤクザがいい
警察 そうなってしまうだろ！
警察 そのため資金源を断ってきたのだが、
警察 これは盲点だった。
警察 運転代行業に目をつけるとは…！
警察 何といってもヤクザが足を洗って
警察 次の職場と言えばドライバー。
警察 トラックやタクシーなどの
警察 運転手だ！
警察 なにより組織に入らずできるし、
警察 ある程度自由が利く。
警察 会社に入って仕事をすると、
警察 堅気の連中とうまくやらなきゃならない。
警察 でも元ヤクザは…
警察 それが大変なんだ
警察 どうしても摩擦が起きて、
警察 結局、馴染めなくて元の鞘に収まる。
警察 つまりヤクザに戻ってしまう。
警察 そうなるよね。
警察 だから運転手だ。
警察 運転手ならそれなりに長く続く。
警察 でもね…！
警察 運転代行業に暴力団が進出すると、
警察 ヤクザから足を洗わなくてもいい。
警察 もしくは足を洗ったと見せかけて
警察 そのまま仕事をすることができる。
警察 大体、仕事には親和性がある。
警察 暴力団は飲食店と関係が深く、
警察 自らやっているケースもある。
警察 そこでたらふく飲んでもらって、
警察 その上、運転代行業の料金ももらう
警察 2重取りだ！
警察 しかもこれは合法だ。
警察 ボッタクリしていれば別だが、
警察 適正料金なら取り締まれない。
警察 しかも悪いことに…
警察 運転代行業を取り締まる
警察 法律が無い。
警察 つまり…
警察 全く手が出せない。
警察 これなら足を洗う奴が減って、
警察 むしろ肥え太るだろう。
警察 暴力団が！
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
と…いうことのようだ。
完全に合法で、暴力団の資金源が増え、
なおかつ足抜けもしにくくなる。
これは大変だ！
◎合法！
先に書いたように、
これは完全に合法なのだ。
まあ合法というか…、
取り締まる法律が無い。
まあ最近できた業界だしな！
元々は普通に…つまり暴力団などではなく、
飲食店に売り込みをした民間会社がやっていたが、
そこに暴力団関係者が入っていった。
これが白タクなら、
つまり無許可のタクシーなら取り締まれるが、
運転代行業にはその取り締まる法律が無い。
そういう意味では考えた奴は頭がいい。
そして警察は頭を抱えた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
警察 無理です。
警察 取り締まれません。
警察 だって取り締まるための
警察 法律が無いから
警察 運転代行業ができたのが、
警察 大体1975年頃！
警察 つまり今から3年ほど前
警察 元々は堅気の連中が、
警察 飲食店の売り上げを上げようと考えた。
警察 ほら…自動車通勤をしている奴って、
警察 あんまり飲めないだろ！
警察 えっ？
警察 まあ…そうだよ！
警察 実際は絶対に飲んではいけないんだが、
警察 1970年代って
警察 その辺ルーズだから、
警察 少しくらいなら
警察 飲んで運転してたんだ。
警察 それでもたくさん飲むと
警察 さすがに運転しなかった。
警察 だから飲食店ではもっと飲んでもらおうと
警察 運転代行業を考えた。
警察 実際にタクシーで帰ることを考えれば、
警察 料金は6～7割ほど。
警察 どうして安い？
警察 それは客の車を運転するから。
警察 その分ガソリン代がいらない。
警察 まあ自分たちの自動車も動かすけど
警察 タクシーと違って流してないから、
警察 その分時間とガソリン代が節約できる。
警察 だから安くできる。
警察 それだけじゃなく
警察 店からもマージンがもらえる。
警察 だって店としても
警察 店で金を使ってくれるので
警察 ありがたい存在だよ。
警察 だから流行っているし、
警察 だから暴力団も進出する。
警察 これが白タクなら、
警察 無許可のタクシーなら取り締まれる
警察 しかし運転代行業は法律が無いので
警察 無理！
警察 全くの野放しだ！
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
と…言うことのようだ。
系列の飲食店と結託し、
運転代行業で儲ける暴力団。
それを手を拱ている警察。
そういう構造だった。
しかし最近ではそうでもない。
それは…法律ができたから。
今なら取り締まれるぞ！
でも43年前は無理だけどな！