2022年ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールにて、

史上最年少の18歳で、

ゴールド・メダル、

聴衆賞、

最優秀新曲演奏賞の

3つの賞を受賞したイム・ユンチャンさん。

 

東京オペラシティでのピアノリサイタル、

今日はプログラム後半とアンコールの感想です。

 

 後半(1番・2番)

第二部は、

ショパンの12のエチュード Op.25。

第1番から第12番

 

 

このエチュード・プログラムの中で

楽しみにしていた1つが

後半の1曲目、

エオリアン・ハープ

 

コルトーのエチュードがベストで

影響を受けたと

インタビューで答えてらしたので

 

終わりのアルペジオのペダリングを

どうされるか興味津々でした。

 

コルトーのその箇所のペダリングが大好きなんです。

 

響きながらもポロポロと弦をつま弾くような音色の

絶妙なペダリング。

 

イムさんの最後のアルペジオは

コルトー風ではなく、

メジャーな、響きが続く踏み方でした。

 

でもそれが本来の音色なんですよね。

Youtubeで

本物のエオリアン・ハープの音色を聞くと、

風が柔らかく撫でるように響く音。

はじくような音はしない。

 

コルトーがイメージを広げて創り出した音色なのかもしれません。

それはそれで素敵なんですよね。

 

この繊細に美しい曲は、

ホールの響きもあって

とても心地よくショパンに浸れました。

 

次の2番話はリサイタルから脱線です。

シューマン、ショパン話に興味のある方だけお読みくださいませ。

 

第2番は、ピティナの解説によると、

1835年に

ショパンがシューマン宅に立ち寄った際、弾いた曲で

ロベルトが絶賛した模様。

 

(ショパンが生前最後に両親宅を訪ねた帰りで、

16歳のクララ宅に寄ったのと同じタイミング。

ショパンはクララに会いたくて1時間も帰宅を待ち、

彼のエチュード2曲とシューマンの1曲を演奏した彼女を褒めちぎる。)

 

改めて聴くと、

クライスレリアーナみたいで、

確かにロベルトが好きそうな曲だわ、と思いました。

(私には、旋律はグルグルと目がまわるようだし、

リズムは船酔いみたいになるので苦手タイプ)

 

あっ、そうか!

 

エチュードの第2番をロベルトは気に入って、

似た感じのクライスレリアーナを作曲した時に

ショパンに献呈したんですね。

 

ショパンは曲を気に入らなかったらしいですが、

いやいや、

聴き比べたら最初はそっくりさんですよ。

(それが気に入らない?)

 

 演奏スタイル

 

閑話休題

 

日が経ち、

個々の印象を忘れてしまったので(情けない)

まとめた印象を書きますと、

 

どの曲もルバートの加減が粋。

 

コルトーも独特のタメなどで、

聴衆を魅了しましたが、

コルトーやラフマニノフなど

戦前のピアニズムに近いものを

ふとしたところで感じました。

 

クラシックだけどモダンさもある。

 

でも、奇をてらわず崩れ過ぎないで、

品の良さもキープ。

 

以前ブログでもアップした

モンポウの「庭の少女たち」でも、それを感じました。

 

 

彼の解釈と表現全てが

自分の好みかというと

そういうわけでもないのですが、

 

おお〜そうくるか

 

みたいな新鮮さと面白さを感じます。

 

そうそう、

クライバーンコンクールのファイナル、

ラフマニノフの第3番で見せた(魅せた)

フッと力の抜けるところも、

何箇所か有り、

 

フォルテで来た

 

思ったら、

次の瞬間ふわっと脱力

 

繊細な音作りだけでなく、

音と音の間合いが絶妙。

 

この切り替えで心をつかまれる。

 

今、クライバーンのラフ3の

その箇所を改めてYoutubeで視聴したら、

やはり間の取り方が見事

(ここでもアップしたラフ3の動画14、5分あたり)

 

 アンコール

 

演奏後の観客席は熱かったです。

 

日本式の“ブラボー“より、

韓国式(?)の

“ヒューヒュー““ホウホウ“的な声が圧倒的だったのは、

人数が多いからか、

声援が大きいからなのか、わかりません。

 

めちゃくちゃ熱い客席と、

礼儀正しいお辞儀を繰り返す、

冷静、淡々とした(表情は遠くて見えない)演奏者。

 

ギャップが面白かった。

アンコールが3曲あったのは、

熱い観客席

(アンコールごとに大きくなる拍手喝采)

そして

大雪の悪天候サービスwでしょうか。

 

ベッリーニ:歌劇「ノルマ」より「清らかな女神」
ショパン:ノクターン第2番 変ホ長調 op.9-2
ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調(遺作)

 

この中で、

一番印象に残ったのは、個人的な理由で

ノクターン第2番。

 

やり直しピアノを始めてから、

ずっと練習し続けている曲。

 

サー・スティーヴン・ハフも

ツィメルマンさんもリサイタルで弾かれたので

これでライブ3回目。

 

3人の素晴らしいピアニストの演奏で

同曲を聴けてラッキーこの上ない。

 

イムさんの9−2。

 

装飾音やルバート、即興性、

強弱の付け方や速度などで

イムさんらしさを感じました。

 

速めであっさり淡いけれど繊細。

 

 まとめ

 

悪天候で欠席も頭をよぎりましたが、

行って良かったです。

 

演奏で創り出す世界に浸れる若手ピアニストは、

私の中では

 

西のアレクサンドル・カントロフ

東のイム・ユンチャン

 

この思いをさらに強くしました。

 

ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールについて

ウィキペディアで改めて読むと、

 

優勝者の「賞品」としてのコンサートは

他のコンクールと比較すると

飛び抜けて多い数をこなさねばならず、

消耗し、

メジャーデビューにたどり着く前に、

燃え尽き症候群のようになるリスクが書かれていました。

(かつて参加された中村紘子さんの著書からも抜粋有)

 

イムさんは既に、

昨年秋イギリスのデッカ・レコードと専属契約。

その心配はないものの、

コンサート続きで疲弊されませんように。

 

 

このところ、

ショパンのピアノ曲をあまり聴いていなかったので、

久しぶりにたっぷり浸れました。

 

ホールから出ると、

美容液たっぷりの豊潤マスク

などというお土産をいただきました。

 

そういえば、

ベルリンフィル公演でも、

のど飴のお土産が。

 

こういう協賛企業からのお土産って時々あるんですね。

 

 

お読みくださりありがとうございました。

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