ブラームスは生涯結婚をしなかったけれど、
一度だけ婚約し解消したと知りました。
その背景について情報を得たのは、
Johannes Brahms: Life and Letters
という
ブラームスの書簡と解説が書かれた本です。
結構お高い本。
著作権上問題ない箇所のみオンラインで閲覧可なので、
それを読みました。
これを、
クララ・シューマンの娘、
オイゲーニエの回想録と照らし合わせると、
なるほど、その時期だったか、、、
という出来事が少し載っていて
興味深かったです。
今日は、
ブラームスが恋に落ち、婚約、
その時のクララの心情、
そして婚約解消となった
1858、9年ごろについて書きたいと思います。
1858年の夏
ブラームスは25歳の時、
大学教授の娘、アガーテ・フォン・ジーボルト(23歳)と出会い、
恋に落ちます。
クララへの熱い想いは封印、
あるいは冷めたかあきらめて、
気持ちを切り替えたのかもしれません。
翌年の1月に内密で婚約、指輪の交換までしましたが、
すぐに(書簡集によるとおそらくその月の終わり)婚約解消となります。
解消の理由
解消はブラームス側からのようです。
理由は経済的理由、
結婚するには養う自信がない、
というようなことを友人宛の手紙に書いています。
ピアノ協奏曲第1番
ちょうどこの時期、
ピアノ協奏曲第1番を完成させ
ライプツィヒのゲヴァントハウスで演奏。
この作品、
ロベルトの自殺未遂やクララへの愛など
苦悩に満ちた時期が表現されていると言われてますよね。
これを完成させて、
クララへの気持ちにも終止符を打ち、
アガーテと結婚して新しい人生へ向かう一歩になり得たはず。
ところが不評で大失敗に終わり、
安定した音楽家としての仕事も思うようには見つからず、
ブラームスは自信をなくします。
これが婚約解消の経済的理由といえます。
ところが、
この本の解説によると、
協奏曲の失敗は事実だけれど、
職がないわけではなかったそうです。
生活するには十分な仕事のオファーはあったのに、
ブラームスはそれを受けなかったらしい。
本当に結婚するつもりがあれば、
できたはずだと言います。
ここでもう1つ引っかかるとすれば、
この時の
クララ・シューマンはどうだったか。
クララは後年、友人への手紙に、
ブラームスはアガーテと結婚していればよかったのに
というようなことを書いているのですが、
当時のクララは、
そんな余裕の言葉を書けるような様子ではなかったと想像できる行動の記載が本にあり、
その時期に落ち込んでいた内容(原因は不明)の手紙が残っています。
クララのブラームスへの想い
クララのブラームスへの想いは複雑です。
娘のオイゲーニエも回想録で書いていたのですが、
クララ自身、
自分の気持ちを理解できていなかったのではないか、と。
クララの日記や手紙には、
ブラームスに恋愛感情を持っていたとは一切書いていないようです。
ところが、
ブラームスの存在がどれほど大事か、
かけがいのない人か
というような表現はあります。
また、
夫ロベルトが入院してからというもの、
ブラームスがクララや家族を支え、
家計の管理などを引き受け、
クララと音楽の興味を分かち合う
プラトニックラブ、
あるいは
メンタル的には夫状態。
この時期のたった1つの喜びは
ブラームスからの手紙と書いており、
ロベルトに今まで話せたことが話せないので、
ブラームスと語り合ったり、
コンサートの演奏時はブラームスの励ましが心の支えだったそうです。
ただ、
ブラームスとの出会い方や
(夫と共に賞賛・歓迎)
14歳も年下という年齢差から、
恋愛という枠に入れることなく
大事な人の位置づけになっていたような気がします。
だから、
再婚して再び子供を持ちたいという
恋愛感情はなかったとしても、
1858年の夏、
ブラームスがアガーテと恋に落ちるのを
傍観者の立場で居たのはかなり滅入ったのではないでしょうか。
三角関係
本によると、
ブラームスがアガーテに腕を回しているのを見た後に、
クララは子供たちと滞在していたゲッティンゲンを去ります。
その後、友人に、
最悪の夏休みで手紙を書ける状態ではなかった
と書いています。
原因が何かは書いていないので、
ブラームス以外のことかもしれませんが、
理由を書けなかったということが、
逆にブラームスとアガーテへの複雑な想いを想像させます。
(追記2025・1・28:この年の6月末にブラームスからクララに
ブラームスの作品を無理に売り込むようなことはやめてほしい的な手紙を書き
7月にひどく傷ついたと書いたクララの手紙が残っているので
それも関係していると思われます)
もしかしたら、
クララは10代の頃、
好きだった将来の夫ロベルトが
自分の友人エルネスティーネと仲良くなっていくのを
眺めるしかなかった辛い時代を
重ね合わせたかもしれません。
恋愛ではなくても、
ブラームスのために喜んであげるほどの気持ちには至らなかったかも。
オイゲーニエの回想録にアガーテが
ふと、気になって、
オイゲーニエの回想録の1858年ごろを読み直しました。
アガーテがほんの少しだけ登場していました。
この時期の忘れられない記憶として書かれています。
クララが、
オイゲーニエの姉たち、ブラームス、アガーテ、
アガーテの声楽の先生のグリム氏と一緒に
かくれんぼをしているのを
オイゲーニエは眺めていたようです。
クララが見つかって追われ、
ホームとなる木まで全速力で走っていたら、
後少しのところで
根っこに足を引っ掛けて、頭から真っ逆さまに転んでしまったそう。
オイゲーニエのショックは相当だったようです。
このアクシデント、
まるで当時のクララの気の動転を具現化したかのようです。
こんな風に、
皆で一緒に過ごしながら、
ブラームスとアガーテが愛を育み、
それをそばで見続けなければいけないクララの気持ちはいかばかりか。
そして、
ブラームスの気持ちはどうだったのでしょうか。
クララをあきらめ、
アガーテを愛し始めたら、
クララが嫉妬しているような態度になり、
夏休みを早めに切り上げて去ってしまう。
クララは自分を愛しているのか???
婚約や指輪の交換までしながらも、
全部公にせず、内緒でしていたのは、
クララに歓迎されないと感じていたからでしょうか。
ブラームスはクララへの気持ちが
まだ捨てきれなかったのでしょうか。
何だか、こんなことを考えていたら、
こちらまで訳がわからなくなってきました。
本当にこの人たちの関係はよくわかりません。
複雑すぎて謎。
アガーテの回想録
婚約解消となったアガーテ。
後年自分の子供達に残した回想録に、
ブラームスとのことを書いています。
私の人生で黄金に輝いた時期があり、
そのことは、
年老いた今でも忘れられない輝きを放ち続けています。
私はブラームスをとても愛していました。
そして短い間でしたが、
ブラームスも私を愛してくれていたのです。
ああぁ、、、切ないなぁ。
どうしてダメになってしまったのでしょう。
ブラームスとクララの絆が強すぎたのでしょうか。
プラトニックラブでもクララに愛があるから
2番目に好きな相手アガーテとは
結婚に踏み切れなかったのでしょうか。
あるいはクララとは全く別の理由かもしれません。
手紙や回想録などが残っているがゆえに、
当時の状況がリアルにわかる部分もあり、
興味深い時期でした。
続きです⬇️
当時の婚約解消について書きました⬇️
追加した関連記事です⬇️
新たに調べて書いた記事です⬇️
長文お付き合いくださりありがとうございました。




