友人3人と久々に天満の正宗屋へ飲みに行く。

色んな話しをする中で、7才の子持ち友人が
「子どもって自分が育てているんじゃあなくて、勝手に育っていってると思わへん?」と私に言ったので
私はとんでもないと反論した。
生まれてから8ヶ月、毎日3時間以上まとまった睡眠も取らずに一日中ミトモの為に生きている。
確かに私が居なくても誰かの手があれば今の世の中生きていけるのだろうし、時間が立てば自然に大きくはなっていくのだろう。だけどそれなら卵から孵されて大きくされていくブロイラーと同じだ。
大きくなっていくのと育っていくのとは違う。
ミトモは私に抱かれた胸や、話しかけられた声や、オムツを変えている手の中で育っていっているはずだ。

だから辛くてもミトモを育てることをやめたりしない。
まだ嬉しいと思う時は、辛い時ほど多くはないけれど、大切に育てていこうと思う。

だから、勝手に育っていると言われるととてつもなく悲しくなった。自分の存在が意味のないことのように思えて。


店を出る時に、久々に来た私に店のおっちゃんが「どうしてたん?」と言うので
「子どもできて産んで育ててた」と応えると
「オレの子かぁ?」と。
こういう馬鹿な会話が久々で楽しくて仕方がない。
「多分違うと思うわ」と応えておいた。
昨日は帰宅後はずっとぐずりまくり、私の姿が少しでも見えなくなると号泣し出す始末。
もう何もできない。夕食づくりも洗濯もできずに仕方なくずっと側に付いていた。

今までは泣きだしても抱くと止んだりしたのだけれど、全然泣きやまず。
仕事よりもこっちが一番大変かもしれない。
今日から仕事をすることになった。
そして今日からミトモは保育所に行くことに。

11時過ぎに登園し、先生にミトモを引き渡す。
大泣きしているミトモを後にそこから徒歩2分の職場へ向かう。

1年半ぶりの仕事、そして初めての仕事に、緊張と後悔で泣きそうになりなる。
自分の勉強不足に激しくさいなみながら、他の人の邪魔をしないようにこそこそしていた。

ようやく夕方になり、何もしていないにもかかわらずぐったりとしながら保育所へと向かう。
これから私はこの仕事ができるようになっていくのだろうか、まだ早すぎたんじゃないだろうかと、もう仕事への意欲よりも不安の恐怖で押しつぶされそうになっていた。

疲れた顔で保育所をのぞくと、部屋の真ん中でミトモだけがぽつんと座っていた。積み木を持って一心に遊んでいる。なんだ結構平気やん、と扉を開けて部屋に入る。

扉の音に顔を上げて私を見つけた瞬間、ミトモは「きゃー」と悲鳴に近い声を上げて泣き出した。
その声に慌てて先生がやってきてミトモを抱き上げて、私の方へ連れてきた。
そして私が抱いても、全身を震わせて泣き叫んでいた。

それを見て、ああミトモは私の今日一日感じていた恐怖の何倍も何百倍もの不安の中で過ごしていたんだと知った。
ミトモにとっては初めてのの見知らぬ場所で、見知らぬ生き物の中で、言葉も通じずおっぱいを飲むこともできず、そして私の居ない時間を、ただ1人で過ごしていたのかと思うと、自分の不安は至極小さなことに気づく。

少なくとも言葉は通じるし、初対面の私に色々と気遣ってくれるし、そしてみんな同じ志を持って働いている。何よりも私はもう大人だ。彼女とは比べ物にならないほどの好条件だ。

これから仕事を続けていく意欲と自信が一気に沸いてきた。
暑さのせいか、最近ミトモは毎夜2時間毎に「ぎゃー」と泣き出し起きてしまう。
お腹は空いていないと思って、おしゃぶりを口に入れてもすぐに取って放り投げて泣き続ける。
抱き上げておっぱいを吸わせると一瞬は泣きやむのだけれど、ついさっき飲んだところだからそんなに母乳も出てこないらしく、それに腹を立ててまた泣き出す。

朝方5時過ぎにもまた同じように泣きやまず、もうこっちもイライラが限界になって
「うるさい!」と怒鳴り散らしてミトモをベッドに放った。
どんなに泣いていてもぐっすりと寝ている彼も、さすがに私の声に起きてきて、大泣きしているミトモをあやし始めたので、私は彼もミトモも無視をして布団に入る。

すぐに寝付けないのが寝不足の原因のひとつなのだけど、彼にあやされてご機嫌に話しをしだしたミトモの声を聞きながら、30分ほどで眠りにつけた。
昨日一日外出だったのと、相変わらず夜は愚図ったり大泣きしたりで眠ってくれないミトモのせいで全然からだが動かない。
敷きっぱなしの布団の上で、ミトモが座って遊んでいる横で、ずっとぐだぐだとしていて、ようやく体を起こして動く気になったのが夕方の4時過ぎ。

夕食の買い出しに行くことにし、今日はがんばらないぞと出来合いのお総菜で住ますことにした。
それなのにスーパーに行くと美味しそうには思えず、結局1品だけ買い残りは作ることになってしまった。

作っている間、台所の床の上に座らされたミトモが、ずっと機嫌良くテレビを観ていたのが唯一の救い。
今日から1ヶ月、京都のギャラリーで東京の友人が人形展を開く。初日だけ友人が来場することになっていたので、それに合わせて私も行くことにした。
ミトモは置いていきたかったのだけれど、相変わらずミルクを飲めないので仕方が無く連れて行くことにした。彼も一緒だと余計に面倒なので、久しぶりに1人でゆっくりしておいてと言ったのだけれど、1人じゃ大変だから付いていくと言われて渋々3人で行くことにした。

電車を乗り継ぎ1時間ほど掛けて、目的地の昔人形青山/K1ドヲルに着く。
小さなお店で、中にはいるとお店の人と一緒に友人のまいむちゃんがちょこんと座っていたのが可愛らしかった。
薄暗い店内にはアンティーク人形が所狭しと座っていて、その奧に真っ白な明るい部屋に色んな作家の人形とともにまいむちゃんの人形が飾られていて、5年ぶりに目の前で観た彼女の人形は、以前よりもむちむち感が薄くなり少し柔らかくなっていた。そして顔がやっぱり可愛らしい。他の作家さんと見比べたけれど、やっぱり一番好きだった。

元々彼女とは、友人になる前に人形を観て好きになっていたので、友人歴よりもファン歴の方が長いのだ。そんなことを1人でこっそり思いながら、人形達と一緒に座っていた。

ミトモは大人しくしていてくれたので、つい調子に乗って人形達の中に座らせて写真を撮ったりした。ミトモは人形に触りたくて仕方がないようだったがそれはダメだと必死に阻止する。ミトモは自力では少しも動けないのでまだ楽だったが、もう少し動けたらきっと大変だっただろう。動けなくてよかった。
ただまいむちゃんの人形たちには何故か「きゃー」と話しかけていた。自分と同じ子どもだと思ったのだろうか。サイズはミトモよりもかなり小さかったのだけれど。不思議だ。

人形に堪能した後は、ジャズの流れる店内でビールやワインをご馳走になってのんびりと過ごす。お店に居た猫がとても綺麗で、昼寝をしているのに邪魔をして背中を撫でたら噛まれてしまったけれど、それも嬉しかった。
とても毛の長い猫で、丸まって寝ていると猫だとは気が付かないのではないかと思うくらいだったのだが、ミトモはそれが猫だと分かったのか我が家の猫を呼ぶように「あーきゃー」と呼び出して驚いた。

まいむちゃんとは久々にゆっくりと話ができ、その間ミトモは彼と遊んでいてくれて、3人で行って良かったと思い直す。
最近すっかり夏模様になってきて夜も寝苦しい。
一応寝入りばなには冷房を掛けておくが、タイマーが切れるとすぐに蒸し暑くなってくる。

私でさえそうなので赤ん坊のミトモはもっと暑苦しいみたいで、冷房が切れて暫くすると愚図って泣き出すようになった。
最初はお腹が空いたのかと思っていたのだが様子がおかしい。じっと見ていると泣きながら体を横向きにしようと頑張っている。未だ寝返りどころか体をずらすこともできないミトモは、どうも背中が暑くて仕方がないようで、浮かして暑さをしのごうとしているらしい。そしてそれが上手くいかなくてさらに泣いているようだ。

見ていると可哀想になってきて、また冷房を入れてしまう。そしてまた切れるとミトモは愚図りだ始める。一晩中その繰り返しだ。

暑さでそのうち寝返りをするようになるかもと思うのだが、それより先に私も段々と暑さに我慢ができなくなってくるかもしれない。
お風呂上がりに授乳していたら、げぽっとお乳を吐き出した。その後も止まることなくげぽげぽっと夕食に食べた紫芋とおかゆの離乳食も全部出してしまった。バスタオル1枚と着ていた服全部がぐっしょりとなるほどの量。
それでもミトモは泣かずにいるので全部脱がしてお風呂場に行き、掛け湯をしてきれいに洗い流す。
そして新しい服に着替えさせたところ、またげぽっと吐き出した。もうお乳と離乳食は残っていないらしく透明な胃液になっていたがかなりの量だ。少し泣いてはいたが大泣きはしなかった。そのまま抱いてゆすっていると眠そうにうつらうつらし始めた。

もう大丈夫だろうかと半分眠っているミトモの服を着替えさせる。
暫く抱いていると咳き込んだかと思うと少し吐いた様子で、だったらしっかりと吐いてしまうようにとバスタオルにもたれかけさせると、また大量に吐いた。
今度は服は濡れなかった。

心配だからと今日はベビーベッドには寝かせず、布団で添い寝をする。本人はしんどくはないようでぐっすりと眠っている。時々咳をしようとするので、その度にビクビクしてじっと見ていたが、それからは一度だけ少し吐いただけだった。

胃は空っぽなのでお腹は空いていると思うのだが、よく眠っていた。

夜中の3時にいつもと変わらずオッパイと愚図りだし、飲むとまたいつものように眠りだした。吐く様子はなかったので私もいつも通りすぐに横になる。

3時間置きの授乳はいつもと変わらなかったが、やはり疲れていたのか今朝は11時過ぎまで目を覚まさなかった。

ようやく目をぱちっと開けたミトモはにやっと笑い、早速枕元にあったティッシュケースからティッシュを引き出して遊びだした。何ともないようだ。
家の近所でずっと探していた保育所が見あたらなくて、勤める予定の事務所の隣に有った保育所を見に行くことにした。

先生2人に園児10人足らずの小さな保育所で、行った時にはちょうどお昼寝中でとても静かだった。

園の説明を聞いた後はこちらの条件等を伝える。
毎日ではないこと。週に2,3日で何曜になるかは定まらないこと。ほ乳瓶が使えなくて今ストローの練習をしていること。皮膚疾患があること。

何とか了承を得て、いつからでも預かれると言われた。

最近人見知りの激しいミトモは、最初先生に抱かれた時には泣いていたが、その後起きてきた1歳過ぎくらいの女の子と一緒に積み木遊びを始めると、楽しそうに大声をあげて遊んでいた。何の問題も無さそうだった。

その後隣の事務所に行きこれからのことを話し合う。無理しないでいつからでもいいよと言ってくれたが、またずるずると延ばしてしまいそうだったので来月から働きますと返事をする。

これで何とか働く準備は整ったが、後は保育料を支払えるぐらいの働きになるにはどのくらいかかるかだ。せめて半年後には何とかなるようにがんばろう。
道行く人に「かわいい」と声を掛けられるのはどんな赤ん坊でも同じだと思うので、親バカ全開で「そうか、うちの子はかわいいのね」なんて勘違いなことは思わずに、適当に「ありがとうございます」などとお礼を言って流すことができるのだが、ミトモの場合圧倒的に「かわいい」と言われるよりも「しっかりした顔やねえ」と言われることが多い。

それは私から見ても「確かにしっかりした顔だな」と思うので本当なのだろう。問題なのはそれが褒め言葉かどうかが分からない。
「かわいいね」だと「ありがとう」で良いのだろうけれど、「しっかりしてるね」にはどう応えればいいのだろう。褒めてくれているのだとしたら、お礼を言えばいいとは思うのだけれど。
「そうですか?」は私もそう思うのでおかしいと思うし、「そんなことないですよ」と謙遜するのは変だろう。

外に出ると何度も言われるので、少しウンザリとしながらも最近では
「よく男の子と間違われるんですよ」と返すことにしている。

そうすると半数の人は
「そんなことないよ、可愛らしい顔してるよ」と言ってくれ、残りの半数は
「え?女の子なの?」と驚かれる。ピンクの服を着せていても。