★★★★★★★☆☆☆

1986年 93min.

ネタバレ まあよくあるお話ですので。

敬称略

 

 

 監督 スティーヴ・マイナー

 製作 ショーン・S・カニンガム

 脚本 イーサン・ワイリー

 音楽 ハリー・マンフレディーニ

 

 ロジャー:ウィリアム・カット

 ハロルド:ジョージ・ウェント

 ビッグ・ベン:リチャード・モール

 サンディ:ケイ・レンツ

 ターニャ:メアリー・ステイヴィン

 チェット:マイケル・エンサイン

 エリザベスおばさん:スーザン・フレンチ

 

 

 まず始めにお断りしなくてはならないのは、実は本作は、最近こちらで更新した「クリープス」同様DVD化がされていず、ので今観るためには中古のビデオテープを探すか、気長にテレビ放映されるのを待つしかない、ということと、わたしも今回の視聴は自分の持っているβ版のビデオで視聴したためにスクリーンショットの映像がものすごく見にくくなっている、ということでございます。この状況下では本作を視聴するのはそうとう難しいのですが、「クリープス」と同じくとてもおもしろい作品ですので、気にとめておいていただきたく更新する次第です。どうかご了承ください。

 

 ということで、とはいえ聞きなれない題名だと思いますよ、「ガバリン」。要するにタイトル画像を見ていただければわかるように「ゴブリン」すなわち「醜くていたずら好きの妖精」ということですね。本編ではそんないたずら好きというのとはかけはなれたクリーチャーがでてきますが、醜いという点では合致したりもしています。

 

 製作がショーン・S・カニンガムで監督がスティーヴ・マイナーというなら、しかも音楽もハリー・マンフレディーニですし、こうなったらこれモロ「13金」となります。ならば楽しめそうかな、という気持ちにはなりますね。

 

 ショーン・S・カニンガムは「13日の金曜日」シリーズの生みの親なのですけれども、「13金」と言ったらもうイコール・ジェイソンですので、そんなすごい人なのに日本では知名度が低いように思えてザンネンでなりません。「13金」以外では本作と「ザ・デプス」という「リバイアサン」にコピーキャット(アイディアを盗むこと)された深海の映画がありますが、わたしはどちらも大好きですので、なんかもったいない気がします。

 

 ちなみに本作の原案ですが、こちらも「クリープス」と関係がある人で、つまりは監督をやられていたフレッド・デッカーです。一週間でまたこういう関連性のある映画を視聴する(厳選なるクジで引いたんですよ)というのがデフォルトになっております。わたし5年前にちょっと心の余裕ができたので、学生時代の映画狂い熱が復活しまして、それから今日に至るまで5年間で1500本近くの映画を観ておるのですが、こうした関連性がある映画を視聴した場合(関連は1か月以内ということにしてます)すべて記録してますので、またヒマがあったら整理して発表しようかなと思ってはいるのですけれども、まあ需要はなさそうですので思案段階ではあります。

 

 さて。

 

 まず出だしの音楽はハリー・マンフレディーニです。知らない人でも「13金」を観たことがあれば、ああこれはあの映画の音楽の人だ、とわかるだろうくらいハリー・マンフレディーニです。だからってそれが悪いというわけでは決してなくって、いきなりな不穏な空気は効果抜群というところでしょうか。

 

 そんな音楽に載せて、宅配業者のお兄ちゃんが食材を届けに来てノックをしたのに返事がなく、まあ見慣れた光景ではありますけれども、ノックの力で勝手にドアが開いて、お兄ちゃんが中に入る、と。

 

 観慣れてはいますが、まあ悪くはないです。定番と割り切れば、さすがスティーヴ・マイナー、とも言えます。

 

 で、その期待を裏切らず、

 

↑こうなりました。

 

 いきなりの首吊りばあちゃんは、ほほう、つかみはいいじゃないの、となりましたね。

 

 でもって、次の瞬間

 

↑宅配兄ちゃん、逃げます。

 

 いや、逃げたらアカンやろ、という突っ込みは必須です。ここで、あれこの映画、バリバリのホラーじゃないんちゃう、となりました。ワクワクが増しますよね。

 

↑主役はこの方、ウィリアム・カット。

 

 当初わたしこの方をよく知らなかったので、ロバート・レッドフォードがくるくるパーマかけてるやん、て思ったものでした。男前ではあります。

 

↑不動産屋とふたりで家を売る話、してます。

 

 実家を売る話、みたいですね。なるほど、この家がいわくつきなのか、と思わせるには十分で、よっしゃ、次はどうなるんや、と期待が膨らみますよ。わたしもじつは今、実家を売る話をいろいろな不動産屋としている最中でして、そんな中で聞いた、日本では新築を買う人が多いですけど、海外だと中古物件を購入する人がほとんどだ、という話を思い出しました。よく考えたら確かに映画で観るのは、新築ではなくこうして中古の一軒家を探している光景ですよね。なるほど~、てなりましたけど、映画とはカンケーない話ではあります。ていう話をたしか「悪魔の棲む家」でもしたような気がしますよ。

 

↑ウィリアム・カットの息子、ジミーくんです。

 

 どうもこの子が、この家のプールで溺れて、いなくなってしまった、ということのようですよ。父親のウィリアム・カットが、息子が溺れているところを見てあわててプールに飛び込んだのにどこにもいなくなってしまった、と。だからウィリアム・カットは息子がまだ生きていると信じていて、FBIにも捜索を依頼している状況のようで。

 

 ここまでわずか10分強、展開が速くていいですね。心地よくのめりこみます。そして、

 

↑さきほどの首吊りばあちゃんです。

 

 ウィリアム・カットのおばさん役だそうですが、息子が行方不明になった当時に捜査に来た警察に、「家のせいだ」と言い張ります。なるほど、そういうことか、となるわけです。

 

↑ご実家です。立派すぎますが。

 

 けっきょく息子がまだこの家のどこかにいると考えたウィリアム・カット。売るのは辞めて住むことにしましたが、こんなでっかい家は一人で住む家ではないですね。掃除がタイヘンだと、他人事ながらウンザリしてしまいました。

 

↑隣人のハロルド氏、ジョージ・ウェントです。

 

 この方、コメディアンというわけではないのですけれども、本作ではお笑い担当のようですね。いい味出してて、人選も抜群ですよ。

 

 ただこの時点で、若干スピード感が薄れまして、なんか長いかな、くらいに思ったりもしていたんですけどね、でもそれを見透かしたかのように、

 

↑ウィリアム・カットが言うわけですよ。

 

 これでまたスピードアップ、というわけで、さすがの演出力、ムダはないな、というところです。

 

 そして深夜0時。

 

↑バケモノ登場、となるわけです。(見にくくてすみません。バケモノと思ってください)

 

 いいじゃんいいじゃん、です。ま、わたしにしてみれば0時なんて深夜でもなんでもなく、フツーに活動してる時間ですけどね。

 

↑で、ウィリアム・カット、バケモノを撮影しようとカメラを何台も設置してます。

 

 いくつもの家系ホラー映画ありましたが、「悪魔の棲む家」にしろ「ポルターガイスト」にしろ「死霊館」にしろ、こうした異常現象が家で起こると住んでる人たちは恐れおののいて霊媒師とか呼んだりしてたわけですけど、こうやって自分で写真に収めて対峙してやろうとか思う人もいるかもしれないわけで、そういうところのアイディアは斬新だと思いますよ、当時としては。

 

 で、本作にはちゃんとお笑い担当がいて、いざという時にその存在感を示したりして、いろんな意味で退屈させないのですね。

 

 さらに、ウィリアム・カットは小説家の役なのですけれども、ベトナム戦争の体験的小説を書いているそうでしてね、

 

↑こうしてベトナムのシーンもでてくるわけですよ。

 

 「トワイライトゾーン 超次元の体験」の要素も入っていて、だからというわけでもないですが、このベトナムのシーンがイチバンドキドキしたりするのです。

 

↑カジキ、動いてます。

 

 家の中に飾ってあるカジキが動き出しました。半分過ぎていよいよ、の様相です。ただわたしここでひとつ思ったのは、ベトナムで頭がおかしくなってその妄想だったってオチだけはやめてくれよ、ということではありました。まあ結果的にそんなことはなかったので、さすがショーン・S・カニンガム、はずさんなあ、ということではありましたが。

 

↑またバケモノ出てきました。

 

 ウィリアム・カットの奥さんが変貌した姿、とのことですよ。こういうのも時代が出てていいですね。今のようなCG全盛の時代では、逆にこういうのは表現できないんじゃないかと思います。

 

 で、ウィリアム・カット、こやつを銃で撃つわけですが、

 

↑奥さんだったという……。

 

 ありがちではありますけど、間違いなくさっきはバケモノだったじゃないかと、こちらの不安も煽られるわけですね。ありがちだからこそまんまと乗せられるわけです。

 

↑隣人が銃を発砲してる、とジョージ・ウェントが通報したそうで。

 

 若干ここらへんからお笑い担当がウザくなってきますが、それも織り込み済みなのでしょう。不快感はありません。

 

 ちなみにここでふるまっているコーヒー、ウィリアム・カットが「インスタントだけど」って言ってたような字幕がついてましたが、向こうってインスタントコーヒーってあるんですかね。わたし留学してましたけど、大学時代でしたので、今みたいに一日5~6杯はコーヒーを飲むなんてことはまったくなく、それどころかコーヒー自体を飲んですらいなかった時代なので、インスタントがあるかないかなんて知らないのですよ。どなたか教えていただけたら幸いですが。まあセリフではインスタント云々とは言ってないですけどね。

 

 さて、ここで半分過ぎ。ここから先、おせっかいジョージ・ウェントがどうからんでくるか、ということなのでょうか。先ほどもいいましたけど、そろそろウザいです。でもそういう持って行き方もいいんですよ。時間的にも絶妙ですね。半分過ぎて、警察も来て、一通り家の中を見て、さあ、て。

 

↑で、期待通りバケモノでてきて首ちょんば、です。

 

 おもろいですねー。期待を外さないのがいいじゃないですか。地味ではありますけどね、全体的に。でもマイナス要素はいっさいないわけですよ。まあだからマイナス要素と言えば「地味すぎる」ということなのでしょうけれども、それでも大幅減点とはなりませんね。ここで8つ、というところです。

 

 そしてウィリアム・カット、バケモノを倒して、

 

↑バラバラにして埋めました。でも、

 

↑すぐさまワンコが掘り出しますよ。

 

 こういうところも小気味よく笑えます。

 

↑手はトイレに流されました。

 

 まあ、ゼッタイに流れませんけどね。

 

 そしたらもう一人隣人が出てきました。女性の。最初は一人で来てなんか言い寄る感じを見せていて、ウィリアム・カットがほだされたのを見て息子のベイビーシッターを頼むという。古典的サギではありますね。

 

↑シン隣人、ターニャさんとその息子くんであります。

 

 まあ、なんでこう隣人にはウザいやつしかいないのか、とは思いますけど。ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドの珍作「ネイバーズ」を思い出しましたね。

 

↑でもウィリアム・カットは気がまぎれたようです。

 

 楽しかったようで何よりでした。

 

 そうこうしているとウィリアム・カットがバケモノたちに連れていかれてしまいます。

 

↑頼みの綱がこいつかよ、と不安になりながらもワクワクするわけですね。

 

 笑うしかないわけです。

 

↑こうしてベトナムがまた出てきます。

 

 やっぱり「トワイライト・ゾーン 超次元の体験」や、てなりますね。笑える「トワイライト・ゾーン 超次元の体験」。

 

 もうだからおもろいんですよ、この映画。なんでこれDVD出ないのか、もったいなくてしかたないです。

 

 ウィリアム・カットは戻ってきますが、

 

↑洗面台の鏡の向こうからたくさん手が出てくるわけです。

 

 なんとか難を逃れましたが、その手が出てきた方から息子の声が聞こえますよ。わたし、いよいよ会えるんか、ってちょっと感動すらしてしまいました。

 

 で、鏡の向こうをのぞいてみたら……、

 

↑わかりにくいですよねえ……。

 

 明るいところが洗面台の鏡の部分ということで、向こうから鏡の中をのぞいたら真っ暗闇の空間が広がっていた、というシーンです。これこの映画の象徴的なシーンでもあります。神秘的で、子どものころに読んだ大海赫先生のブラック童話「クロイヌ家具店」を思い出しました。

 

 わたしこの「クロイヌ家具店」は愛読書でして、千葉に住んでいた時に先生のご自宅におしかけてサインをもらい、以来親しくお付き合いさせていただいておりました。最近はお会いしてませんが、先生も奥様もご高齢で、若干人が変わってしまったので、今どうされているのかはまったく見当もつきません。お元気でおられることをお祈りしておりますが。(筆者注:この記事を書いた直後、奥様が亡くなられていることがわかりました。ご冥福をお祈りいたします)

 

↑とうとう父子再会です。

 

 息子はベトナムで捕らわれの身となっておりますよ。要するにですね、ベトナムの悪夢がウィリアム・カットの頭の中からずっと離れずにいた、ということなのでしょうね。ただ安易なベトナムオチにはなっていないので、単純に息子との再会をこちらも喜べる、という構図になってます。

 

 なんかこの作品、シリーズ化するって言ってたそうで、そういえばわたし、2作目も3作目も観た気がしますが、まったく覚えてません。やはり一作目を超えるというのは難しいことなのでしょうね。

 

↑で、こやつ(ビッグ・ベン)が元凶でした。

 

 ベトナムでの同志だったのですが、仲良かったベンが撃たれて息絶え絶えになって、苦しいから殺してくれと頼まれたウィリアム・カットは、でもさすがに友だちは殺せなかった。そしたらベン、そのおかげで苦しい目にあったとの逆恨みです。

 

 なんかちょっとそれは弱いかなあ、て感じでした。

 

 けっきょくウィリアム・カット、悪夢とそれに伴う恐怖を克服するということでちゃんちゃん、ということなのですけれども、もうちょっと最後も、せっかくだからハデにすればよかったのに、と思うのは素人考えなのでしょうか。

 

 7つで落ち着きましたが、でもおもしろい映画に変わりはありません。どうかこの先どこかでこの映画のタイトルをみかけたら、ぜひご覧になってみてください。もちろん「お前が言ったから観たけどぜんぜんおもろないわ、どうしてくれるんや」と言われても意見には個人差があるということでご了承いただければ幸いです。

 

 

今日の一言

「あのカジキはいったいなんや?はく製なのか?魚のはく製??」

 

 

 

レビューさくいん

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