★★★★★★★★★★

1986年 88min.

ネタバレ しないとレビューも書けません

敬称略

 

 

 監督 フレッド・デッカー

 製作総指揮 ウィリアム・フィネガン

 製作 チャールズ・ゴードン

 脚本 フレッド・デッカー

 音楽 バリー・デ・ヴォーソン

 

 クリストファー:ジェイソン・ライヴリー

 JC:スティーヴ・マーシャル

 レイ:トム・アトキンス

 シンシア:ジル・ホイットロー

 ランディス:ウォーリー・テイラー

 ライミ:ブルース・ソロモン

 コロナー:ヴィク・ポリゾス

 

 

 えと、本作ザンネンながらDVDもブルーレイも出てません。その昔はビデオテープでは発売、レンタルされていて、わたし今回なんとソニーのβ版で観たのですけれども、おかげで画像は悪いわ、トラッキングは合わないわで鑑賞するのにそうとう疲れましたです。キャプチャー写真もヒドイもんですが、ご了承ください。

 

 で。

 

 監督はフレッド・デッカーです。馴染みの薄い名前かもですけれども、この人の監督作品は本作のほかに「ドラキュリアン」と「ロボコップ3」しかありませんで、それでも原案として「ガバリン」なんてのもラインナップされますから、けっこう通な映画ファンからは評判の高い監督さんですね。その方のデビュー作、というわけです。

 

 だからこれDVD出てないのがザンネンでならないわけですが、そうなるとスカパー!とかでもやらないし、じゃあそんな映画レビューするなよって言われそうですけど、します。なにしろの数でもわかりますように、これがまたおもろいのなんのって。

 

 ああいや、おもろいって言ったってものはホラー映画ですからね、抱腹絶倒というわけではないのですけれども、まあ文字通り「笑い」も盛り込みながらちゃんとしたホラー映画に仕上げてくるあたりは、これがほんとにデビューなのかと疑ってしまうほど秀逸ではありました。先に挙げた「ドラキュリアン」「ガバリン」にも同じような傾向が見られますが、なにしろフレッド・デッカー、現在に至るまでの情報がなさ過ぎて、まったく謎のベールに包まれてますね。ご存命なのかどうかすらわかりません。新しい作品は2018年の「ザ・プレデター」の脚本なんてのもありますけど、それも含めて監督作は3本(すべて脚本兼)、脚本は全部で6本(監督兼の3本含む)、原案2本、という情報しかありません。もし詳しい方おられましたら、ぜひお教え願いたいところであります。

 

 さて、内容ですが。

 

 まあなにしろのっけから、

 

↑こんなヘンな宇宙人が出てきます。

 

 B級感満載じゃないですか。いえね、わたしこの映画を知ってますからこんなブっサイクな宇宙人見てもワクワク感しかないのですけれども、そうでなかったらここで観るのを辞めてしまうかもしれませんね。本作を映画館で観たときに観るの辞めなくてよかったと、ほんとに今思いました。

 

↑で、このブサイクなのが乗ってるのがこの宇宙船。

 

 あまりの不釣り合いにわたしズッコケましたよ。

 

 そしてなにやらわからないまま、時は1959年の映像となり、

 

↑殺人事件が起こります。

 

 すみません、ほんと写真わかりにくいんですけど、殺人鬼がオノ振りかざしてるんです。

 

 よく映画では、カップルで森とかに行って、なんか不穏な空気を察して森の中に入っていく、なんてシーンありますけど、そういう時は必ず男が女に向って「ここで待ってろ」とか言って別行動になるんですよね。でもね、別々になったらアカンでしょうよ。そんなするからこうやって一人ずつ殺されるわけです。まあそうしないと映画にはならんですけどね、でもわたし、いつもそう思うんですよ。ザンネンでなりませんね。

 

 そしたら現代に物語は移ります。1986年ですね。

 

↑ヒロイン、シンシア役のジル・ホイットロー。

 

 めちゃめちゃカワイイです。このあと一瞬セミヌードになりますから、こうご期待なわけです。

 

↑こちら主人公クリス役のジェイソン・ライヴリー。

 

 決してイケメンではないですけどね。まあB級ホラーの主役ならこんなもんでしょうか。本作のほかには見なかったですね。俳優一家みたいで、お父さんと二人の姉、弟、妹みんな俳優だそうですが、わたしは誰一人知りませんです。一番有名なのは妹に当たるブレイク・ライヴリーでしょうか。お姉さんのロビン・ライヴリーもかな。ブレイクさんはライアン・レイノルズの奥さんだそうで、それはそれで「へえ」ではあります。

 

↑こちらの二人にジル・ホイットローの計三人が主役ですね。

 

 左はJC役のスティーヴ・マーシャルです。

 

 で、ここまで20分があっという間に過ぎました。ようやく話が分かりかけてきます。

 

 要するにこういうことですね。

 

 えと、冒頭のブサイク宇宙人が実験に使っていた何かを宇宙船外に放出してしまい、1959年の地球に飛来。カップルの男の方がこの「何か」に接触してしまう。カップルの女の方は脱走した殺人鬼(宇宙人とはカンケーないです)に殺されてしまう、と。で、話は現代の1986年に移っていよいよ、という感じですかね。

 

 「何か」はつまりは「CREEP(忍び寄る)」で、まあ要するに「宇宙ヒル」とでも言いましょうか。こいつらが人間に寄生して脳を乗っ取ってしまうというわけです。なにやらいろいろ聞いたことがあるような話ですが、王道っちゃ王道ですしね。パロディととらえても問題ないわけですよ、なにせ監督がフレッド・デッカーですからね。数少ない彼の作品群を見ると、それもアリかと思います。ただ言えるのは、どう解釈したっておもろいもんはおもろい、というわけです。

 

 全体の流れもスムーズというか盛りだくさんというか。まあこの時代の映画の既視感満載ではありますが、だから安心して観ていられる、ということにもなります。

 

 現代に移ってからは大学の寮の話で進んでいきます。ので、ちょっと気を許すと、あれ、なんの映画やったっけ、ということにもなりかねませんが、嫌悪感はまったくありません。脚本がいいのか、よく知ってる展開だからなのかはわかりませんけど、でもやっぱり、次どうなるんか、っていう興味の方が大きいですね。フレッド・デッカーらしいパンチの利いたシャレもすごくいいですし。

 

 そう、これ、役名がもうホラー映画好きにはたまらんのですよ。パロディなのかオマージュなのかはご本人(フレッド・デッカー)に聞いてみないとわかりませんけど、垂涎ものです。

 

 JCはジェイムズ・カーペンター・フーパー、ジル・ホイットロウは役名シンシア・クローネンバーグ、ランディスもいればライミまでいるという。もう好感度爆上げじゃないですか。たまんないですね。

 

↑ホルマリン漬け、ではなさそうですが。

 

 そう、1959年に殺られたカップルの男の方がなんらかの形で保存されていた、と。そうなると俄然おもしろくなります。

 

 えと、大学の新入生の二人のうち、主人公のクリス(ジェイソン・ライヴリー)が、歓迎会で見たジル・ホイットローに一目ぼれ。その彼女に近づくには寮のβ会なる学生の同好会に入らなくてはならなくって、その入る条件てのが「寮の前に死体を置いておく」ということで、死体を盗みに入ってこの約30年前の死体に遭遇した、とまあそういうわけです。

 

 なんかね、いくらなんでもそんな条件はないやろとか思ったりもするんですけど、マイケル・ジャクソンの「スリラー」とか「狼男アメリカン」の監督であるジョン・ランディスの「アニマルハウス」を観ていれば、それもアリかなとも思いますしね、違和感は払しょくされてしまうのですよ。

 

 流れは悪くなく、B級というならもう極上の部類ですね。

 

↑トム・アトキンスが出てるってのもホラー好きからしてみればうれしい限りですよ。

 

 で、この登場ですからね。コメディ・ホラーとなれば、やっぱりジョン・ランディスへのオマージュなのでしょうかね。

 

↑「クリープショー」も出てきますし。

 

そしたら今度は、

 

↑ゾンビも出てきて、

 

 パニックホラー的にもなってきました。長いとも思わないし、展開速すぎるとも思いませんし、ほんと良質なB級ホラーなわけです。

 

 そしたら39分あたりで、主人公のクリスは本名をクリストファー・ロメロということが判明し、わたし思わず笑ってしまいました。しかもその判明のさせ方が、満を持した感にあふれてまして、もうこれあっぱれと、拍手すらしてしまいましたよ。

 

 まだまだ続きます。

 

↑むっくりと死体が起き上がり、

 

↑廊下ですれ違っても気付かれない。

 

 これはすっかり「バタリアン」と「死霊のしたたり」じゃないですか。ふたつとも本作の前年に公開されてますよ。

 

 まあなにしろいっぱいいろんなものが詰まってまして、それだけで楽しいですよね。福袋とかおもちゃの缶詰め的なワクワク感が止まらないわけです。

 

↑アメリカの大学生はみんなこれしますね、トイレの壁にらくがき。

 

 余談ですけど、わたしカリフォルニアのUCRに留学してたとき寮に住んでたんですけどね、やっぱりそこのトイレの壁にもいたるところにらくがきがしてあるわけですよ。それである時用を足しながら(あ、わたし大でも小でも個室に入って座ってするのです)ふと横の壁を見たら「F.O.B.」って書いてあったんですね。「Friendship Oriental Boys」て注釈があったんですけど、その下に「Fried Ostrich Balls」って書いてあって、もう爆笑でした。おいしいかどうかはわかりませんけど、精力剤的なものなんでしょうかね。外で小用を足していた同じフロアのやつに“Hey, are you all right ?”って言われましたので、“Yeah, I’m fine.”て笑いながら言っときました。

 

 とはいえこのシーンはけっこうキンチョーする場面でもありまして、ちょっぴりここだけわたし、感情が不安定になりました。

 

 要するに、こうしてちゃんと1959年の殺人鬼の話も絡んでくるわけですね。ほんと脚本秀逸なわけです。

 

↑トム・アトキンスがね、これがまたカッコいいんですって。

 

 なんか得も言われぬワクワク感に包まれますよ。

 

↑宇宙ヒルが逃げてゆきます。

 

 こういうアナログ感もたまりませんね。なんでもかんでもCG、じゃないんですよ。そら仮面ライダー2号の佐々木剛さんだって「不快だ」て言いますって。

 

 そうかと思うと、

 

↑クリスが親友JCの言葉をレコーダーで聞いてます。

 

 ほとんど遺言ですよ、これ。涙目で神妙になって聞いてるわけですよ。こうしたメリハリも恐ろしいくらいにハマってきます。

 

↑ゲスのブラッドも寄生獣にやられました。

 

 ここでもわたし、思わず拍手してしまいましたね。観ているもののツボをいちいち刺激してくれるわけです。

 

↑親友の死を確信してクリス泣きます。

 

 もうもらい泣きなわけですよ、こっちは。ひとよひとよに一青窈、です。

 

↑そしたらディック・ミラー。

 

 わたし思わず声をあげてしまいました。ここまでくるとファンとしてはもう感謝しかないですね。

 

↑トム・アトキンスがディック・ミラーにライフル向けます。

 

 まあこれ、こういうシチュエーション、実際にあったとしてもゼッタイに撃たないですよね。警官どうしですし友だちですしね。でも友達だから、撃たないってわかっててもライフル向けられた方は言うこと聞いちゃうじゃないですか。友達だからちゃんと気持ちを汲んで、てことですよ。でもわたしこういうシーン観るといつも、このあと関係がぎくしゃくしちゃうんじゃないか、って不安になってしまいます。映画なんですけどね。映画だってわかってても、のめりこんでますからそういう思いに駆られるわけです。逆に言えば、それほどのめりこむほどおもしろい、というわけですね。

 

↑ゾンビ化したイヌです。

 

 いよいよラストに向けての大団円というところで、「死霊のしたたり」から「ペット・セメタリー」も入ってきました。まあでも公開は「ペット・セメタリー」が3年もあとですけどね。

 

↑ゾンビと二人、的な。

 

 ちょっとムリはありますけど、爆笑案件には違いないです。

 

 で、

 

↑ジル・ホイットロー大活躍の図、です。

 

 ここからラストまでは観ているこっちは笑顔三昧となります。

 

↑そしてやっぱりトム・アトキンス。

 

この方は最後の最後までカッコよございました。おいしいところをひとりじめでしたけどね。

 

 B級ホラーの最高傑作の誕生、というわけでした。

 

 なんとか観られませんかねえ……。

 

 

今日の一言

「え~、宇宙人、全裸じゃん……」

 

 

レビュー さくいん